【 Uni 】
◆vDmN7OM/Z2




113 名前:No.40 Uni(1/3) ◇vDmN7OM/Z2[] 投稿日:07/02/18(日) 23:23:02 ID:h9YV0QBh
牛乳は美味い。俺は牛乳が大好きだ。


ある、冬のことだった。
あの日は寒かったなぁ。そうだ、雪が降ってたんだっけ。かなり積もってた。
俺はその雪の降る街の夜道を、ひとりでトボトボと歩いていたんだ。
そのとき俺はものすごく腹を空かせていて、フラフラだった。
それからしばらく歩いていると、後ろから足音が聞こえてきたんだ。
反射的に振り向こうと体をひねった瞬間、俺の手が雪でつるってすべって、転んだ。
全身とまではいかないが、体半分くらいが雪に埋もれたな。
そりゃあもう冷たかったし、寒かった。
体力も限界で正直もう動けなかったし、俺もうこのまま死ぬんじゃないかと思った。
そのときだ。

「大丈夫?」

その声が聞こえた後、俺の体は雪から引っ張り出された。
女の人が俺を助けてくれたんだ。後ろから聞こえた足跡はこの人のものだったらしい。

「お腹、空いてるの?」

俺はなにも喋れなかった。
ただ、その人の顔を見返すことしかできない。声も出せなかった。
そこで、俺は意識を失った。


114 名前:No.40 Uni(2/3) ◇vDmN7OM/Z2[] 投稿日:07/02/18(日) 23:23:52 ID:h9YV0QBh
目を覚ますと、そこは知らない部屋だった。
「あ、起きたね」
声のするほうに顔を向けると、そこにはさっきの女の人がいた。
ここは彼女の部屋のようだ。俺は毛布にくるまって寝ていた。
「飲む?」
そういって彼女が俺に差し出したのは牛乳だった。
俺は牛乳が大好きでさ、大喜び。俺はありがたく頂戴した。
素晴らしいことにその牛乳はちょうどいい熱さで、俺の好みの温度を知っていたとしか思えない。
すっげーうまかったよ。
牛乳を飲み干したあと、俺は感謝の気持ちを女の人に伝えようと声を出した。
その声を聞いて意味をわかってくれたのか、女の人はニッコリと笑った。
「男のコだよね?」
「あんなところで何してたの?」
「元気、出た?」
「牛乳、おいしかった?」
彼女は楽しそうに俺に話しかけてきた。けど、俺は喋れない。
当たり前だが、声を出しても女の人には通じなかった。
しかし女の人はそんなことはおかまいいなしに話しかけてきた。
「君、ひとりなの?」
女の人はその言葉を言ってから、急に涙目になった。
「私も一人なんだ…」


115 名前:No.40 Uni(3/3) ◇vDmN7OM/Z2[] 投稿日:07/02/18(日) 23:24:20 ID:h9YV0QBh
女の人は急に泣き出した。
誰かの名前、たぶん男の人の名前をつぶやきながら、

「どうして?」

「まだ好きだよ…」

「さよならなんて言わないでよ…」

と言っていた。
とても悲しそうで、見ているのが辛かった。
どうか泣くのをやめて欲しい。
死にかけの俺に牛乳を振舞ってくれた、こんな優しい人間を泣かせたくなかった。
俺は、女の人の肩に飛び乗って、ほっぺをなめた。
涙がしょっぱかった。
女の人はちょっと驚いて、肩に乗った俺を見た。

「もしかして、慰めてくれるてるの?」

俺は、ただ一声鳴いて、もう一度女の人のほっぺをなめた。

「ありがとう、優しいんだね」

「猫なのにね」


女の人くしゃくしゃの顔で笑って、また牛乳を俺に振舞ってくれた。






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