【 浸食 】
◆cLt9pTSr9k




94 名前:No.33 浸食(1/2)◇cLt9pTSr9k[] 投稿日:07/02/18(日) 19:49:35 ID:h9YV0QBh
「やっぱ牛乳がうまかーーーー!!」
今日も100回は聞いたこの台詞。
世界牛乳侵略会が水道水に溶け込ましたスキムミルクを飲むと、
「やっぱ牛乳がうまかーーーー!!」としか喋られなくなり、牛乳しか喉を通らなくなるのだ。
奴らがTVをジャックし、「たーんとのみなはれ牛乳を!ドリンクオアダイ!」
と後に牛乳革命宣言と呼ばれる声明を発表したとき、政府も学校も母ちゃんも友達も、誰も相手にしなかった。
しかし、次々に「やっぱ牛乳がうまかーーーー!!」が伝染していくうちに事態の深刻さにみんな震え上がった。
気づいたときには既に普段道理に水道水を使った後で、
この原因不明の奇病に冒されてしまった、そういう人が後を耐えなかった。
侵略会の言い分はこうだ。
「パンティと同じで白は純粋を表している。色のヒエラルキーで一番素晴らしい色だ。
純白の飲料牛乳。これは最も崇高な液体だ。牛乳でまず水道を、次に川を、最後に海を染め上げるのだ!
そして、これまで牛乳の素晴らしさを声高に述べてこなかった人間は、モーモー神様の祟りにあわねばならないのだ!
喉が潰れるまで牛乳賛歌を唱え続けなければいけないのだ!それが宿命(さだめ)なのだ」
政治関係者、企業のお偉いさん、農家のプロレタリアート、小中高大の学生達、頼みの綱の自衛隊。
殆どの人が例の一言しか口に出せなくなっていた。
日本は既に壊滅状態にあった。アメリカや中国に助けを求めようとしたが、
世界各国はとっくに侵略会の手に落ちていて、残る最後の国が日本だったのだ。
情報操作で平和ボケした日本人は敵にとって見過ごしやすかったのであろう。
とにかく、もう、地球が白の星、牛乳の星となるのも時間の問題だった。


95 名前:No.33 浸食(2/2)◇cLt9pTSr9k[] 投稿日:07/02/18(日) 19:50:50 ID:h9YV0QBh
絶望的な状況の中、山で清き水を使いながら修行をし続けていた1人の仙人がふうらふうらと街へ降りてきた。
「よいではないか、よいではないか」
呪文のようにそう唱えていた。ガムランのようなスピリチュアルなメロディで聞いているとのどかな気持ちになるものだった。
そして、「やっぱ牛乳がうまかーーーー!!」と叫び続けていた者も「よいではないか」とだけは口述することが出来た。
呟いてみないとなかなか理解しにくいものだが、これを唱和すると、ますます心地よく、ハッピーになるのだった。
仙人の元に自然と人が集まり、大名行列のようになるまで、そう時間はかからなかった。
行進はあらゆる人を丸め込み船を使い世界中を回った。
そうして世界中の全ての人が、世界牛乳侵略会の魔の手から逃れることが出来た。
仙人は65億人に対して開口した。
「よくこれだけ集まってきてくれた。もう牛乳などに頼らなくてもよい、
このチョコレートを食べるのじゃ。アメやクッキーもあるぞ」

時はしばらく過ぎ、地球に近づいた宇宙人の子供が言った。「パパの言うとおりだ!お菓子の星があったよ!」




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