78 名前:No.27 モンスターズ (1/3) ◇nzzYI8KT2w[] 投稿日:07/02/18(日) 17:05:26 ID:+whaIOjc
「えらいこっちゃ〜!」
窓から誰か飛び込んできた。黒いマントをなびかせ、ほりの深い顔をしている。吸血鬼である。名前をダラゴンという。
「どうした、ダラゴン」
「えらい事になってもうてん!」
「だから、どうしたんだって」
こいつはいつもこうだ。パニックになると肝心な事を言わない。というか、主語を使わ
なくなる。そしてこいつは人の事を考えない。俺は農作業をしながら生活していて、今日
だって疲れて戻って来た。それなのに、こいつはそんな事お構い無しだ。
「わ、わしの牛乳が切れてしもうてん!」
思わず、溜息をつきたくなる。この男、吸血鬼のなのだが、血を吸わない。代わりに牛乳を吸う、というより飲む。
「それを言われて俺にどうしろってんだよ」
「お前、牛乳持ってないか?」
「ああ、ちょっと待ってろ」
俺は冷蔵庫をさぐると牛乳を一杯出してやった。
「おお、ありがとう。」
79 名前:No.27 モンスターズ (2/3) ◇nzzYI8KT2w[] 投稿日:07/02/18(日) 17:05:54 ID:+whaIOjc
ダラゴンはコップを掴むと、一気に飲んでいる。うん、とてもじゃないが、吸血鬼には見えないな。
「プハ〜、上手いな〜」
「完全におっさんだな、ダラゴン。」
どうやら、この言葉が気に入らなかったようで、俺を睨みつけてくる。
「お前、誰に言うとんねん!わしは高貴な吸血鬼様やぞ!」
「……高貴な吸血鬼様なら血を飲めよ」
「う、うるさいわ!」
「てか、お前はなんで吸血鬼なのに、牛乳飲んでるだ?」
「べ、別にええやろうが。それにな、牛乳は元々血液やねん。まったく問題は無い。」
なぜか、自慢気味に言っている。こいつの自信はいったいどこから沸いて来るんだ?
「でも、人間の血じゃないだろ?」
「あ、そ、それはしょうがないやろ!人間の血吸ってみろ。そいつ等を家来にせなあかん。そんな事したら、わしゃ破産や」
「貴族が破産すんなよ」
「五月蝿い!それにな、お前だって狼男やのに野菜育て取るやんけ!」
「う」
痛い所を突かれた。俺は狼男。しかし、生まれてこの方肉を食った事は無い。
親とかは勧めてくれるのだが、どうも食えない。なんだか自分を食ってる気分になってくる。
「そ、それは言わなくてもいいだろ!」
「何やねん、お前から言ってきたんやろが!」
「なんだと!」
「何やねん!」
睨みあう俺達。にらみ合いに挟まれてる牛乳。
80 名前:No.27 モンスターズ (3/3) ◇nzzYI8KT2w[] 投稿日:07/02/18(日) 17:06:22 ID:+whaIOjc
「はぁ。」
ダラゴンが間抜けな声を出すとその場あるイスに座り込んだ。
「やめや、やめ。こんな事しても疲れるだけや。」
「それもそうだな」
自分で口がニヤリと笑うのが解った。そして、台所から、コップと牛乳を持ってくるとダラゴンのコップと俺のコップの注いだ。
「ま、変人の化け物同士、仲良くしていこうぜ」
「そやな」
二人一緒に牛乳を飲み始める。
俺達は変人の化け物。化け物だから人間から怖がられる。変人だから化け物から馬鹿にされる。だが、俺には仲間がいる。
「何、人の顔見て笑ってんねん。」
「別に」
牛乳好きな変な吸血鬼。牛乳が家にある限り、俺は楽しく生きて行けそうだ。