【 卑猥なのは嫌いです
】
◆VXDElOORQI
100 名前:No.26 卑猥なのは嫌いです (1/2) ◇VXDElOORQI [] 投稿日:07/02/11(日) 23:42:36 ID:bq2pvqJO
ベッドに腰掛け、目を閉じ、心地よく音の世界に浸る。時たま歌詞を口ずさみながら音
楽を聴く時間が、俺はとても好きだ。
今日もその時間を満喫していると、突然俺の耳から音が消えた。
目を開けるとそこには俺のヘッドホンを握った妹が立っていた。
「ヘッドホンの返還を要求する」
「却下」
「要求を聞こうか」
「音楽を聴くのはいいよ。受験生の私に配慮してヘッドホンで聴いてくれてるのはうれし
い。そのことにはとっても感謝してる。お兄ちゃんがちゃんとしたスピーカーで聴くのを
我慢してくれてるの知っているから」
そう、俺は受験生の妹に配慮して、バイト代を全力で投入して買った高級スピーカーの
使用を中止し、わざわざヘッドホンで聴いているのだ。妹の言うとおり感謝される覚えは
あっても、俺の至福の時間を奪われる覚えはまったくない。
「ただ……」
妹は頬を赤く染めて、口ごもりなかなかその先を言おうとしない。
「ただなに?」
「ひ、卑猥な歌を口ずさむのはやめてよ」
蚊の鳴くよう声でそう言うと、顔をさらに赤く染め俯いてしまった。
卑猥な歌にまったく心当たりはないが、妹の様子が俺の嗜虐心をくすぐる。
「卑猥な歌ってのがわからないんだが、卑猥な歌ってどんな歌だった?」
「それは、その」
「卑猥なのが聞こえてきたら確かに勉強に差し支えるな。これからは注意するから、どん
な卑猥な歌だったか是非教えてくれ」
わざと『卑猥』という単語を多用して、妹をからかう。
妹はまだ「あの、その」と口ごもっている。
「ん? 早く卑猥な歌ってのを教えてくれよ」
「あーもう! うるさいな! いいからもう歌わないでよね!」
キレた。そのとき妹が手に持っていたヘッドホンを思いっきり引っ張ったのか、ヘッド
ホンのコードが抜け、バイト代を全力で投入して買ったスピーカーから音楽が流れてきた。
101 名前:No.26 卑猥なのは嫌いです (2/2) ◇VXDElOORQI [] 投稿日:07/02/11(日) 23:42:56 ID:bq2pvqJO
『アンアンアン――』
某青い猫型ロボットが出てくるアニメの主題歌だ。
「お前、ひょっとして卑猥な歌って」
俺の指摘は図星だったらしく妹は顔を真っ赤にして怒鳴る。
「う、うるさい! と、とにかく、もう私の勉強の邪魔しないでよ!」
妹はそう言うとそそくさと部屋から出て行ってしまった。
俺はヘッドホンのコードを繋ぎなおし、音楽の時間を再開する。
「アンアンアン――」
俺がそのフレーズを口ずさむと隣の妹の部屋からドンと壁を叩く音が聞こえてきた。
期待通りの反応に頬が緩む。
明日から、このネタを使ってどうからかおうかな。
おしまい