【 マイクの代わりにチンコを握れ 】
◆twn/e0lews




27 名前:No.09 マイクの代わりにチンコを握れ (1/5) ◇twn/e0lews[] 投稿日:07/02/11(日) 17:37:06 ID:IAaxD8zE
 流れ込んできた風は、発酵した生ゴミの臭いと表すのが適切だと思う。鼻の奥にツンとくる腐臭だ。
野良に荒らされたゴミ捨て場、流れ出る茶色がかった液体と、それに濡れた残飯のイメージがリアルに浮かぶ。
口から食道を引っ張られる様に、沸き立つのは吐き気。
「窓閉めろ。そんなに乳見せびらかしたいのかよ、露出狂」
 素っ裸のまま窓から身を乗り出しているミチに、手元にあった精子入りゴムを投げつける。
ゴムはミチに当たらず、窓の外に飛んでいった。
「ヘボ、ノーコン。下手糞」
 振り向かずに、ミチは返した。
「便器が人間の言葉喋るなよ、糞マンコ。窓閉めろ」
「寒いって訳じゃないでしょ。便器以外突っ込めない、詰まりとりのスッポンチンコ」
 外は桜が咲く季節、ミチの言う通り寒い訳じゃない。
「臭いんだよ。お前の穴と同じ臭いがするんだ、外の空気は」
「アンタのサオより上等って事ね、それに、豚小屋の空気よりも。換気になるわ」
 煎餅布団はシミだらけ、床にはポテトチップの屑やらコンビニ弁当のゴミやらが敷き詰められて、
流し台には食器の山が油まみれのまま放置され、壁紙はヤニで茶色く染め上げられて、住んでいる人間は――と、確かに豚小屋、それ以下だ。
「僕はゴキブリに優しいんだよ」
 ゴキブリ共に天国を提供しているんだ、僕は言った。
「ああ、ルイトモ」
 ミチは言って、窓を閉める気配は無い。
 煙草を咥え、体を起こしてミチを眺める。肩甲骨に掛かった茶色の髪は軽くウェーブが掛かっている。
痩せぎすでない、適度に肉の付いた女の背中。腹回りに残るくびれからその下の、緩やかに膨らむ二つの丘、
そしてその谷間に僅かに覗く薄ら黒い茂み。
全体に柔らかさを思わせる彼女の線を眺めているうちに、体中の血液にムズムズとした感情が満ち始めた。
「何してるんだ?」
 言ってから、一つ大きく息を吸い込んで、ヤニを肺に塗りたくる。
ミチは振り返ることなく、更に身を乗り出す様にして窓外の何かを指差しながら言った。
「ストリートミュージシャンって言うの? 路上ライブみたいのやってる」
「路上ライブ? 音なんて聞こえない」
 腹に当たる鉄柵が苦しいのだろうか、ミチは答えながら身をよじる。
「まだ準備中なんじゃないの……っていうか、あんな所でやって大丈夫かな」

28 名前:No.09 マイクの代わりにチンコを握れ (2/5) ◇twn/e0lews[] 投稿日:07/02/11(日) 17:37:34 ID:IAaxD8zE
 僕は返答よりも、よじる度に揺れる尻に目がいって、高ぶる下半身に正直に、立ち上がった。
床に散らかるゴミを蹴飛ばしながら窓際へ、腕を回して乳を揉む。
「ホラ、あそこ」
 ミチの指差した方向には、ストリートミュージシャンと言うよりもホームレスみたいな、小汚いシャツとジーパン姿の男が一人、しかしギターを抱えている。
しゃがみ込んでアンプらしき機材を弄っているそこは、案内所の目の前だ。
観客は、まだ、というべきか、一人も居ない。やたらとライトアップされた案内所に吸い込まれていく男達が、すれ違いざまに冷めた視線を送る程度だ。
「許可取ってんじゃないの? そうじゃなきゃ、今に怖いお兄さんが出てくる」
 可哀想だ、とか言うミチの言葉を聞き流して、指を穴に突っ込む。
「どうだろ……あっ、出てきた!」
 棒は入った。出てきたのは、怖い『お兄さん』と言うよりも怖い『お兄ちゃん』。
金髪をバリバリに逆立てたお兄ちゃんが、ギターホームレスと何やら話し始める。
「どうなんだろ」
 ミチはそんな事を言いながら、尻を擦り付ける様に動かす。僕はミチの背中に覆い被さりながら、事態の行く末をボンヤリと眺めている。
 険悪な雰囲気か、とも思ったが、ギターホームレスは大袈裟な身振りで何やら論説し、お兄ちゃんはそれに笑っている様にも見える。
街中で偶然会った友人と語りあっている様な感じで、もしかしたら二人は知り合いだったのかも知れない。
やがてお兄ちゃんがギターホームレスの肩を一つ叩いて、ギターホームレスは演奏を始めた。
 スポットライトは『無料、安心、情報ゲット』の電飾看板、どこか気の抜けたギター、呆れる程に単調なコード進行、叫ぶ様な歌声。
曲名は何だったか、と考えていたら、ミチが呟く様に詞を口ずさんでいた。
「オーカーネーノターメニックールーシーマッナーイデ」
 尻の動きがリズムに乗って、ドラムが無いから代わりのつもりだろうか。
「曲名なんだっけ?」
「ネームレーナイマチッハンザイダーラーケ」
 質問を聞き流す様に、と言うよりも本当に耳に入っていないのかも知れない。
腰の動きは一層大きくなって、奥に手前に、曲に合わせて行ったり来たり。
ミチは嬉しそうだ、僕も、無性に嬉しい。
「クビ・ツリ・ダイ・カラッ・ウタッテーアゲルー」
 ここで、解った。
「クビ・ツリ・ダイ・カラッ・ワラッテーミセルー」
 歌い出し、完全にリズムに乗って、僕も腰を振る。
案内所から客が出てきて、手拍子しながら叫びまくる、お兄ちゃんとギターホームレスは笑いながら歌っている。とても、楽しい。

29 名前:No.09 マイクの代わりにチンコを握れ (3/5) ◇twn/e0lews[] 投稿日:07/02/11(日) 17:38:00 ID:IAaxD8zE


 一曲終わって歓声が上がる。ギターホームレスは両手を突き上げ、そして一つお兄ちゃんに頭を下げた。
二曲目を求める声もあったが、しかしギターホームレスは首を振った。
一曲だけ、という約束だったのかも知れない。残念だ、なんて思い始めた時だった。ミチが、叫んだ。
「おにーさーん!」
 大きいし、女の声だったから、目立った。
視線が僕等に集まる、しっかりと結合中、見られて感じる訳じゃないけれど、何となく嬉しくなりながら、僕も続いた。
「ウチ来いよ!」
 ギターホームレスは僕等を見て、一瞬呆気に取られた様だったが、しかし直ぐに手を叩いて大笑いを始めた。
「エイズじゃねーよな?」
 僕は尋ねる。
「俺は童貞だ!」
 ミチが、筆下ろしオメデトー、と続いた。

30 名前:No.09 マイクの代わりにチンコを握れ (4/5) ◇twn/e0lews[] 投稿日:07/02/11(日) 17:38:24 ID:IAaxD8zE

 ドアをぶち破る勢いで部屋に乱入してきた彼は既にチンコ丸出しで、僕とミチは爆笑した。
背中にギター、ジャックもコードもまだ繋いだままで右手にアンプ、左手にはジーパンと赤いトランクス。
初めまして、と彼が叫んだ。僕等は立ちバックのまま二人で彼に頭を下げ、サチは犬の様に歩いて、彼のを口に咥えた。
僕は笑いながら腰を振る。
「しかし、酷い部屋だな」
 彼が言った。
「ゴキブリに優しいんだ、僕は」
「大した変人だ」
「そっちこそ」
 言い合って、軽くキスをした。バイでもないけど、面白かったから笑いが止まらなかった。こもった声が聞こえて、それはミチだ。彼のをしゃぶりながら、何か言っている。
「何か言ってるよ」
「何か言ってるね」
 フェラを止めて、ミチが顔を上げた。
「無視しないでよ」
 怒った風なミチに、僕は深く突く事で返した。ミチは、うぃ、なんて妙な声で鳴いた。
「無視してないじゃん」
 なあ、と僕は彼に言う。
「そうだ、むしろアンタが主役だ」
 彼は笑いながら言った。
「ところで、アンタらって恋人?」
「冗談、こんなヤツ。大体、そう見える?」
 ミチがそんな風に言ったので、僕はまた思い切り突いた。うぃ。
「振られ続けて二十年、彼女が出来た事もない」
 僕が言って、ミチは続く。
「出来る訳無い、アンタ気持ち悪いもの。偉そうな本読み散らかして、知った風な事ばっか言う癖にホントは何も出来ないの。
ね、お兄さんも気持ち悪いって思うでしょ?」
 彼は、そいつはクズだなと言った。
「始めから何も無いんだ、クズも糞も無いだろ。生きてるか死んでるかって、それだけさ。
いや、それすらも危ういね、死んでたって何も変わりゃしない」

31 名前:No.09 マイクの代わりにチンコを握れ (5/5) ◇twn/e0lews[] 投稿日:07/02/11(日) 17:38:48 ID:IAaxD8zE
 ひねた風に言いながら、僕はミチを突く。うぃ、お兄さん、うぃ、こんなヤツ、うぃ、気持ち悪いでしょ? うぃ。
彼は、しかし僕を笑うことなく、真っ直ぐに僕を見据えて、尋ねた。
「何も無いって、何でだよ」
 うぃ、うぃ、うぃ、うぃ、うぃ、うぃ、うぃ、うぃ、うぃ。
「粘ついたイヤらしい膜みたいのが覆ってるんだ、この世の中は。
その癖みんなヘラヘラ笑ってやがる、騙されてんだよ、その事に気付きもしない、馬鹿ばっかりだ。
易く言えば価値観崩壊、神は死んだ、貨幣も死んだ、情はとうの昔に死んだ」
 彼は、笑った。そしてギターをたぐり寄せ、アンプのスイッチを跳ね上げる。
「膜があるなら犯せば良いじゃん。少なくとも、訳が解らない事をグダグダ言うよりゃマシだ」
 そして、その為に歌うんだ、と彼は続けた。ピックを挟み、弦に叩き付ける。
「何て歌?」
「ゴキブリの遠吠え、無論即興」
 笑顔のまま答えた彼に、僕は叫び声を返す。
無秩序なコード、滅茶苦茶に揺れる声帯、意味を成さない音が渦になって、豚小屋を掻き回す。
「アタシも歌う」
 ミチが、彼のチンコを手でシゴキながら叫んだ。マイクの代わりには上等過ぎる。



                                了




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