【 祈りはとどく 】
◆f1sFSoiXQw




63 :No.15 祈りはとどく (1/5) ◇f1sFSoiXQw:07/02/04 22:54:20 ID:YvSIN2jt
夢を見た。
あれはまだ、世界が思い通りにいかないと知る以前。
台所で母親の胸に抱かれながら訴えた遠い記憶。
「母さん、俺……義妹が欲しい!」
目に大粒の涙を浮かべながら訴えた俺、中学生。
悲しみと哀れみが入り混じった表情で見つめる母、四十二歳。
あれはまだ、想いを隠すという事を知らなかった頃の記憶。

夢が弾ける。
無意識に顎を手で押さえる。
「フッ、懐かしいな……」
我ながら青い頃があったものだ。
あれから十年。
月日が流れるのは早いもので、心も体も大人になった俺は一人暮らしを始めたのを機に宗教を立ち上げた。
義妹教。信者一名、俺のみ。
日課、聖地(某美少女ゲームブランドの本社)に向かい毎朝、夜欠かさず祈る。
今日も日課は欠かさない。
「義妹神様お願いがあります」
「なんじゃ」
「私に義妹を……ってうわぁ! 誰だキサマ!」
咄嗟に義妹拳の構えを取る。
右手をやや前方に、重心を後方に置いた姿勢。
後の先を取る事を主軸に置いた武術である義妹拳の基本姿勢だ。

右手の先には盗人、及び不法侵入者。いや……幼女?
マスクをつけた怪しいおっさんじゃなかったことで俺の警戒レベルは一つ下がった。
しかも幼女だし。
それに此処は……。
どうみても俺の部屋ではなかった。


64 :No.15 祈りはとどく (2/5) ◇f1sFSoiXQw:07/02/04 22:54:40 ID:YvSIN2jt
呆ける俺に向かい幼女は言葉を紡ぐ。
心地よいソプラノボイス。
「汝が驚くのも無理はない。儂も混乱しておるでな」
俺は……幼女の太ももを見ていた。幼女が動く度覗かせる滑らかな肌。
「儂は義妹神、察しの通り汝が毎日祈って折る対象だ」
幼女のスカートが揺れる。その揺れに会わせ俺の体は上下し始める。
「汝祈る故に我あり、とでも言うべきか。信仰の対象というものは得てして祈りに比例した力を得る」
上下、上下。スカートと俺の体の揺れが少しずつズレ始める。
「たった一人から具現化出来るほどの力を授かる話など聞いた事もないのじゃがな。汝はどうやらそういう才に恵まれているらしい」
対極を目指す、完全にスカートの動きをトレースし、対極の動作を行えたならば、絶対領域すら俺の敵ではない。
「儂の力は願いを叶える事。金、権力、才能。儂の力の及ぶ範囲でなら何でも願いを叶えてやろう」
今、奥義は成った!
スカートが僅か捲れるのと同時、抉りこむように、覗く。
パンツ見えた。
パンツ、パンツ、パンツッ!!
脳が沸騰する。
眼の前にはパンツ、否、幼女!
「わーい、ようじょだー」


65 :No.15 祈りはとどく (3/5) ◇f1sFSoiXQw:07/02/04 22:54:59 ID:YvSIN2jt
思わず抱きしめる。
ふにふに。
「これ、抱きつくなっ。どさくさに紛れて胸を揉むな!」
びんたっ。
頬に衝撃を受け、ようやく正気を取り戻す。
「ごめん、ちょっと気が動転して……」
「ええい、汝は人を見ると気が動転するのか!」
いくら俺でも、そんなことはない。
「だって幼女じゃん……」
「なっ!」
「だって幼女じゃん……」
「繰り返すでないっ!」
びんたっ。
「勝気幼女……萌える……」
「汝の病気は不治らしいな……」
幼女は目を細めると憐憫の眼差しでこちらを見つめる。
「無視して話を進めるぞ。先程までの言葉聞いておったか?」
「なんでも願いを聞いてくれるんだったっけ?」
「制限はあるがな。ある程度までの願いなら叶えてやれるということじゃ」
「――なら話は早い」
幼い頃からの夢を叶える。切望して、ついに叶わなかった夢。
それは。
「義妹を下さいっ!」



66 :No.15 祈りはとどく (4/5) ◇f1sFSoiXQw:07/02/04 22:55:19 ID:YvSIN2jt
「義妹が欲しいのか? 金でも権力でも才能でもなく」
「ああ、愚問だ」
「世界一とは言わんが、この国有数の資産家にする事くらいならば可能なのじゃぞ」
「そんなもの、義妹に比べれば塵に等しい」
「そ……そうか……そこまで言うなら、それでよかろう」
「うむ」
問題ない。
「では……」
幼女が俺を包む。いいかほり。おっきしちゃった。
「願いを叶えよう」
視界が光に包まれた。

「お兄ちゃん、おきてっ!」
体が揺さぶられる。
「お兄ちゃんっ、おきてってば!」
揺れが強くなる。ぐらぐら。
「起きんか、このっ!」
「グハァ……」
揺れとエルボをくらい、俺の体から液体が飛び出す。
「えへへ、吐いちゃった」
「人の頭に嘔吐物を吹きかけるとは、どうやら死にたいようだのう……」
「ごめんなさい」
平謝り。
「まあいい、許してやろう」
意外と寛大な幼女だった。
「少し、シャワーを借りるぞ」
「どうぞ」
てこてこと歩いていく幼女。
えーと。
「なんだあの不法侵入幼女」



67 :No.15 祈りはとどく (5/5) ◇f1sFSoiXQw:07/02/04 22:55:47 ID:YvSIN2jt
シャワーを浴びて、不法侵入者が帰って来た。
スク水だった。
「汝の部屋に儂に合うものはこれしかなかったのでな」
「抱きしめていいですか?」
「断るっ!」
言い切られた。

「で、幼女さんは何の人?」
「その呼び方はどうにかならんのか……。儂は汝の義妹じゃ」
「えーと、記憶じゃ俺に義妹はいなかったはずだけど」
必死で探したから、十数年。
「汝が願ったのじゃろうが、儂が欲しいと」
顔を赤らめる幼女。
何かのスイッチが入りそうなのを必死で堪えて考える。
そうか。
「罪な男、俺。無意識にこんな幼女を口説いて一夜を共にするなんて」
びんたっ。
「人間は夢を直ぐ忘れるというがこれ程とは……。先が思いやられる」
とにかく、と居住まいを正す幼女。
「これからは、儂が汝の義妹となる。宜しく頼む」
「ふむ、細かい事情は飲み込めんが……」
拒否するわけもなく。
「俺は幼女さんの義兄ということか。よしっ。じゃあ早速」
ベッドを指差す。
「禁忌と洒落込もうか」
びんたっ。

【了】



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