【 下町戦隊ギリニンジャー 】
◆aDTWOZfD3M




58 :No.14 下町戦隊ギリニンジャー (1/5) ◇aDTWOZfD3M:07/02/04 22:52:12 ID:YvSIN2jt
 ここまでのあらすじ
 時は20××年
 義理と人情があふれる町、東京下町。人々はこの町で伝統と人同士のつなが
りを大事にしながら生きてきた。だが、ある日この町を再開発しようとする悪
の土建屋連合「秘密結社地上げ会」が現れ、人々の生活をおびやかし始めたの
である。下町から人々を追い出そうと様々な破壊工作を行う地上げ会。下町の
人々は、それに対抗するため自警団を組織した。自警団の中で特に戦闘力のあ
る五人は、下町を代表する科学者である東福寺博士の発明した「義理人情エネ
ルギー転換炉」を装備。それによって正義の味方「下町戦隊ギリニンジャー」
に変身することができるようになった。彼らは下町の平和を守るため、日夜地
上げ会の送り込む改造人間や戦闘員と闘っているのである。頑張れギリニンジ
ャー、負けるなギリニンジャー!
 
 第三話 花粉怪人スギゲロン出現!!
 うららかな春の日、今日も下町にある蕎麦屋「日の出蕎麦」では五人の若者
が元気に働いていた。
 「はい! 出前ですね、お宅はどちらでしょうか」
 「天ザルいっちょうー!」
 「おーい! お冷やくれー!」
 「はいザルおまちー!」
 ところが突然そこに、
 「て、て、てーへんだーアニキ!」
 近所の若者が駆け込んできたのである。
 「どーしたんでぇハチ公!」
 「へえ、雷門前でまた地上げ会の連中があばれてるんで!」
 「なんだって! おい、みんな出動だ!」
 「おう!」
 店の奥へ走り去る五人。店の客は置いてけぼりだ。
 「おーい! 俺の天ザルは?」

59 :No.14 下町戦隊ギリニンジャー (2/5) ◇aDTWOZfD3M:07/02/04 22:52:32 ID:YvSIN2jt
 五人は店の奥から秘密の通路を通ると、地下の司令室へ入った。この日の出
蕎麦の地下に、正義の組織「下町自警団」の秘密基地になっているのである。
 「博士! 怪人はどんな様子なんですか?」
 五人の中で一際元気のある男が尋ねる。
 すると博士と呼ばれたひょろっとした男が振り返って、
 「今、雷門の前で手当たり次第に人々を襲っている。すぐに出動してくれ」
 と言った。彼こそが日本有数の科学者にして下町自警団司令官を務める東福
寺智宏博士である。彼は五人にベルトのようなものを一本ずつわたした。
 五人は命令を受けてすぐに行動に移した。腰にベルトを巻くと、ベルトの前
に突いているボタンを押す。するとまばゆい光と共に、五人は正義の戦隊ギリ
ニンジャーに変身したのだ!
 博士が渡したベルトには、人々の義理人情を集めて不思議なエネルギーに変
換する事ができる「義理人情エネルギー転換炉」が仕込まれているのである。
 「変身完了! 直ちに現場へ向かう!」
 五人はそれぞれ色とりどりの戦闘用スーツ姿に変身した。
 リーダーの熱血野郎はレッドに。
 ちょっとデブの男はイエローに。
 ややクールな男はブルーに。
 紅一点の女はピンクに。
 そしてバイトとか戦闘とか法律的にどうなのよ? なかんじの少年はグリー
ンに変身した。
 赤い戦闘用スーツ姿に変身した男のかけ声とともに、五人はかけ出して行く
と、外に出た五人は出前用のバイクに乗って現場へと法定速度を守りながら急
行した。なんでもいいがグリーンよ、お前は無免許ではないのか?
 雷門では、観光客は逃げまどい、逃げ遅れた者が地上げ会の戦闘員に暴行さ
れていた。その地上げ団の中でも、愛○万博のマスコットキャラクターを凶悪
にしたような姿の怪人が繰り出す毒ガスのようなものに巻き込まれた人々は、
目や鼻からあらゆる体液を垂れ流して咳き込み苦しみもがいている。まさしく
阿鼻叫喚の地獄絵図と言えるであろう。

60 :No.14 下町戦隊ギリニンジャー (3/5) ◇aDTWOZfD3M:07/02/04 22:52:54 ID:YvSIN2jt
 「ぎゃぎゃぎゃ、最初からおとなしく町を出て行っていればこんな目に遭わ
ずにすんだものを。さあ貴様らさっさと立ち退かないとさらに恐ろしい目に遭
うことになるぞ! ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ」
 「まてまてぇい!!」
 「むっ、何者だ!」
 そこに現れたのは例の五人である。
 「罪もない人々にこんなむごい仕打ちをするたぁ、たといお天道様が許して
もこのおいらたちが許さねえぜ! 人呼んで正義の味方ギリニンジャー!!
俺はリーダーのお祭りのレッド!」
 変身するとべらんめえ調になってしまうリーダーのレッドが言った。
 「お主らのような奴らを放っておいては親方に申し訳が立たないッス! こ
の関取のイエローの正義の張り手を受けてみるッス!!」
 デブで元は相撲取りのイエローが言った。戦闘服がミチミチと張り詰めてい
る。
 「フッ、これもお役目。悪く思うな。洗練された粋を追求する男、役者のブ
ルー」
 「悪い奴らは許さないんだからね! ちゃきちゃき元気娘のピンク見参!」
 「この町の平和は僕らが守る! 下町の子どもの力をなめるなよ! 腕白小僧
のグリーン登場!」
 「ほう、貴様らが我々の野望をいつも邪魔するギリニンジャーとやらか?
俺の名は怪人スギゲロン。地上げ団によって作られた建材系怪人のひとりだ。
俺は今までの怪人のようなぼんくらどもとはひと味違うぞ。貴様らまとめてセ
メント樽に詰めて人柱にしてくれるわ!! 行け! 日雇い戦闘員ども、あいつ
らをコテンパンにしてやれ!」 
 「「ういぃーす!」」
 鉄骨やツルハシやユンボを武器に日雇い戦闘員たちが殺到してくる!
 しかしその時、五人のベルトがまばゆい光を発すると、その光の中から大量
の小銭や札束が吹き出してきた。
 それを見て必死に金を掴もうとする戦闘員たち。

61 :No.14 下町戦隊ギリニンジャー (4/5) ◇aDTWOZfD3M:07/02/04 22:53:14 ID:YvSIN2jt
 「さあ、その金をやるから今日はもう帰れ!」
 「「ういぃーす! ありあとあんした!!」」
 そう言って戦闘服を脱ぐと汗を拭きながら帰って行く戦闘員たちだった。
 「見たか! これぞ必殺『江戸っ子は宵越しの金は持たねえぜ、取っときな
フラッシュ』だ!! 金で雇われた奴らは金で簡単に釣れるんだぜ」
 「ぐぬぬ、卑怯な!」
 「フッ、貴様らに言われたくはないな」
 「あんたたちみたいに義理もなにもないような奴らに、義理と人情で結ばれ
た私たちが負ける訳がないでしょ!」
 「ところで僕にもお小遣いくれない?」
 しかし怪人はそれにへこたれることなく五人をにらみつけると、
 「……ふん、今のうちにいきがっているが良い。すぐに地獄へ送ってやる」
 と言って力を溜始める。
 そして「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ」と一通り笑うと、
 「食らえ! 花粉タイフーン!!」
 その声と共に大量の杉花粉がびょおうっと強い風に乗ってばらまかれる。ギ
リニンジャーの五人はそれを食らってとてつもない花粉症の症状に襲われた。
 「げほっ、ぶほっ、ひいぃ! 目がかゆい〜」
 「はにゃみじゅがとまりゃない〜」
 「ぎゃぎゃぎゃ、どうだ俺の必殺技花粉タイフーンの味は? まだ普通の土
建屋だったころからつきあいのある材木屋に頼んでかき集めてもらった杉花粉
だ。まだまだたくさんあるからな。俺が本気でばらまけばこの町も一瞬で花粉
まみれにできるぞ」
 五人は今まで経験したことのない激しい花粉症によりノックダウン寸前だっ
た。そしてまさに彼らの命も風前の灯火かと思われたその時、
 「ギリニンジャーそんな奴に負けるんじゃないよ!」
 「ああっ! あにゃたはおとにゃりの団子屋にょおひゃるばあひゃん!」
 そう、そこにいたのは日の出蕎麦のお隣で団子屋をやっているお春ばあさん
(64)だったのである。
 「ど、どぼしてここに?」

62 :No.14 下町戦隊ギリニンジャー (5/5) ◇aDTWOZfD3M:07/02/04 22:53:37 ID:YvSIN2jt
 「そべび、にゃんでばあひゃんは平気にゃんですかぁ?」
 「あんたらみたいな若いもんとは鍛え方が違うんだよ! 東福寺博士が『ギ
リニンジャーがピンチだっ!』なんて騒ぐから助けにきてやったのさ。さあ、
このあたしが作った草餅をお食べ」
 そう言って草餅とポット入りのお茶を差し出した。
 五人がお春ばあさんの作った草餅を食べた途端、またもや五人のベルトがま
ばゆい光を発する。しかも今度はまるで黄金のような輝きだ。そして光が収ま
ると、そこにはすっかり回復したギリニンジャーの姿があった!
 「ぎゃ? な、なんで貴様らいきなり回復してるんだ?」
 「貴様のような悪人にはわかるまい。義理人情と言えば、ご近所づきあいが
基本中の基本。そして我々のお隣さんであるお春ばあさんがつくった草餅には
義理人情が溢れんばかりに詰まっていたのさ!」 
 「しかもこんな危険な所にわざわざ届けにきてくれたことにより、義理人情
パワーは二倍、いや三倍に跳ね上がったのだ」
 「おまけに私たちが急いで食べることも見越して、お茶まで付けてくれたこ
の細やかな心遣いによってさらにパワーは倍増よ!」
 「いやだねえみんな、そんな大層なもんじゃないよ。みんなはこの下町のた
めに体を張って頑張ってくれてるんじゃないか。これぐらいの事をしてあげな
きゃバチが当たるよ」
 「くうぅー! このセリフにこの態度! まさしく義理と人情の塊だよっ」
 「さあ覚悟しやがれ! 必殺! お裾分けインパクトッ!!」
 その声と共に草餅が光速に近い速さで打ち出されると、スギゲロンの体を撃
ち貫いていた。
 「ぐはあっ」
 スギゲロンはどうっと倒れると、変身が解けて普通の土建屋の親父になる。
 「やった! 勝ったぞ!」
 喜ぶ五人。だがお春ばあさんは他人の子どもでもきっちり叱る人だった。
 「あんたら、食べ物を粗末にするんじゃない!!」
 「うわあ、ばあちゃんごめん!」       《次週へつづく!(嘘)》



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