【 ビックリパーティ 】
◆nzzYI8KT2w




790 名前:ビックリパーティ1/4 ◆nzzYI8KT2w 投稿日:2007/01/28(日) 20:33:09.49 ID:ylnX+qCm0
 今日は私の誕生日。と言っても、祝ってもらっても嬉しい年齢なんかじゃない。
四捨五入したら、年齢は三十代に突入だ。それに今は私には仕事がある。誕生日だからって無くなる事は無く、今日も残業をしなくちゃいけない。ここ数日、大きな仕事があり、
残業ばかりしている。周りには誰もいない。皆、さっさと帰ってしまった。
嬉しい年齢じゃないけど、おめでとうの一言ぐらいはあってもいいんじゃないかなと思
う。今の所、あめでとうと言ってくれたのは、恋人がメールで送ってきたぐらいしか思い
つかない。その恋人も今日は忙しくて会えないと言う。最近、真剣に別れる事を考えてい
る。最初の頃は愛してたはずなのに、最近は憎しみの方が強い時が多い。
 「はぁ〜」
 なんで、溜息なんかつくのよ、私。
 時計を見る。何とか頑張れば、日付が変わる前には家に帰れそうだ。
 「よし」
 気合いを入れると私は目の前にあるパソコンに集中した。


791 名前:ビックリパーティ2/4 ◆nzzYI8KT2w 投稿日:2007/01/28(日) 20:33:53.89 ID:ylnX+qCm0
 今、私は家の前で鍵を探している。仕事が終わった後、コンビニによって小さなケーキ
を買う。時刻は携帯電話が十一時ちょうどを教えてくれた。何とか、誕生日が終わる前に
ケーキを食べれそうだ。寂しい女だな、私って。何だか、色々疲れた。
 鞄の中から鍵を取り出し、戸を開ける。
 その瞬間、頭の中が真っ白になった。
 玄関に誰か居た。頭から黒い頭巾を被り、私より背は高い。多分男だと思う。
 彼は私を抱きかかえると、一気に玄関の戸を閉め中に入れる。そのまま、部屋の中に連
れて行かれてしまった。恐怖で声が出な最悪だ、最悪の誕生日だ。そんな風に考える
と私の中の恐怖が怒りに変わった。私を掴んでいる黒頭巾の腕に歯を立てた。
 「ぎゃっ!」
 黒頭巾は痛みというより、驚きで私を放した。急いで台所まで、走るとそこにある包丁
を取った。黒頭巾は包丁を見ると後ずさりを始める。形成逆転だ。私は包丁を持って黒頭
巾に近付いていった。


792 名前:ビックリパーティ3/4 ◆nzzYI8KT2w 投稿日:2007/01/28(日) 20:34:37.67 ID:ylnX+qCm0
 「ま、待って! 俺だよ!」
 黒頭巾は急に叫んだ。その声に聞き覚えがある。黒頭巾は急いで頭巾を取ると、その顔
は私の恋人だった。
 「もう危ないな、包丁なんて持ち出すなよ。」
 「危ないじゃないわよ、あんた何してんのよ!」
 「そう、怒るなよ。それより見てくれ。」
 恋人はそう言うと、照明用のスイッチを押した。暗かった部屋が明るくなると、居間が
飾りつけされているのが見えた。テーブルにはケーキや料理が並べられている。
 「誕生日だし、驚かしてやろうと思ってさ。結構苦労したんだぜ。」
 恋人は私に背を向けて準備の苦労話をし始めた。
 それを聞きながら私の目から涙が零れた。


793 名前:ビックリパーティ4/4 ◆nzzYI8KT2w 投稿日:2007/01/28(日) 20:35:05.04 ID:ylnX+qCm0
 何でこんなくだらない事をするんだろうって。こんなくだらない事のために私はあんな
恐い目にあったの?もう、仕事で疲れてるのに今からこいつの相手をしなくちゃいけない
の?コンビニで買ったケーキは潰れてるかもしれない。さっき以上の怒りが込み上げてきた。
ふと、右手を見ると、まだ包丁が握られていた。恋人は苦労話に夢中で背中を向けたま
まだ。包丁を両手で持ち直すと、恋人の背中に向かって突き刺した。
 「へ?」
 恋人は何が怒ったのか、解らないまま、前に倒れた。その背中に向けて何度も包丁を刺した。
 どれくらい刺したんだろう。手を止める。一息ついた後、買って来たケーキを見ると、
形は崩れていたが、まだ食べれる状態だった。台所から、フォークを持って来てケーキを
食べ始めた。家にある時計を見ると、十二時は過ぎていた。
 人生と誕生日が終わった。




BACK−いい国つくろう ◆BsiDcPBmpY  |  INDEXへ  |  NEXT−斜め読み ◆qVkH7XR8gk