【 ギリンガー 】
◆qM/Uyf7mxE




694 名前:ギリンガー1/3  ◆qM/Uyf7mxE 投稿日:2007/01/28(日) 14:54:35.41 ID:OrdQvNs40
帰宅すると。
「おかえり、お兄ちゃん」
「ただいま、夏樹」
昨日から急にしおらしくなった妹のお出迎え。二日前までは兄貴、兄貴と呼んでいたはず。
二日前といえば、俺に生涯初の彼女が出来た日だ。偶然だろうけど。
「あとで、お話があるから私の部屋に来てくれる?」
もじもじと俯き加減で、そんなこと。一秒で了承。
妹ばんざーい。初々しくなりやがって。
ちょっと前まで男みたいだっただけにギャップに頬が緩む。

ノックして、扉を開けると胸に軽い衝撃。
抱きつかれた。酷く華奢な肩。
「何を……。んんっ!!?」
奪われる唇。つかず離れず、擦り付けるようにキスをして、やっと落ち着いたのか夏樹は手を離した。
「…………」
動揺しながらも問い詰めようとして、夏樹が泣いていることに気付いた。
「夏樹……?」
状況が飲み込めず、ただ呼びかけることしかできない。
「……ごめんなさい」
そう言って泣き続ける夏樹をただ抱きしめる事しか出来なかった。


695 名前:ギリンガー2/3  ◆qM/Uyf7mxE 投稿日:2007/01/28(日) 14:55:14.14 ID:OrdQvNs40
話をした。長い時間、永遠にも感じたそれは終わってみるとたったの二時間だった。
要訳すれば。夏樹は俺のことが好き。彼女が出来たのを知って我慢できなくなった。
との事。
「でも……俺達は兄妹だぞ?」
「実はね……わたしはお母さんとお父さんの子供じゃないの」
個人的に一番驚いたのがこれだった。終えて。
とにかく、結論は出さなければいけない。
正直そんな目で夏樹を見たことはない。口では散々セクハラ紛いの事を言っていたけれど。
義理、それだから許されるということでもない。それに俺には彼女もいる。
でも、眼の前で目を晴らしている夏樹がたまらなく愛しかったのも確かだ。
だから、俺は。

キスをした。今度はこちらから、強く。
「ん、んんっ……」
ついばむように、つつくように。しっとりと湿って柔らかい唇。
驚くほど小さく繊細なそれを貪る。
「んっ……ぁ……んんっ……」
猛る情動、愛しい気持ちは際限なく高まり、理性は追いやられた。
衣服をはだけさせる。
本能のまま手を伸ばそうとしたと同時。
感じた事のない衝撃を受け、眼の前が真っ暗になった。


696 名前:ギリンガー3/3  ◆qM/Uyf7mxE 投稿日:2007/01/28(日) 14:55:51.91 ID:OrdQvNs40
「おはよ〜っ、兄貴」
目覚めるとそんな声。いつも通りの夏樹。夢か……考えてみれば当然。
んっと。
起き上がろうとして違和感。腕をには。
「ん……あれ? 俺手錠してる?」
腕にひんやりとした感触。頭の中に状況をリストアップ、取捨選択。そうかこれは。
「拘束プレイとは、やるな妹よ」
げしげし。
「踏むんじゃない。それに、そんな見下すような目で見るな。……いや、見ないで下さい」
一部に血が集まっちゃうじゃないか。
と。
夏樹さんは指で後方を示していらっしゃる。何があるかといえば。
……後ろのテレビ、先ほどから妙に煩いなと思っていたら。映っているのは夢であったはずの情事。
口を吊り上げて微笑みを返す邪悪な妹君が眼の前に一匹。
「このビデオさっ、彼女さんに渡したらどうなるかなー?」
う……ぁ……もしかして騙されてた?ぐすん。
「悲しむよね、彼女さん。付き合って次の日に浮気だもんね?」
「許してください夏樹様」
床に頭を摩り付けた。
「うんうんー、もちろん寛大なあたしは許してあげないこともないよーっ。でさ、ちょっと欲しい物があるんだけど――」
「…………」
もう、どうにでもしてください。
「一応言っとくけど、義理ってのは嘘だからね〜っ。正真正銘兄妹だよ。それにしても兄貴」
サイテーだねっ。しれっと言うと夏樹はそのまま部屋を出て行った。
いや、手錠外してくれると嬉しいんだけど……。間違いなく。
サイテーハオマエダ。



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