【 塔は未だ完成に至らず 】
◆dx10HbTEQg




286 名前:塔は未だ完成に至らず(1/3) ◆dx10HbTEQg 投稿日:2007/01/21(日) 23:17:55.20 ID:VmwgFtCd0
『パートスレ住人ちょっとこっち来い』
 定期的に立つパートアンチスレに、ある一人の男が突撃した。
 馴れ合い死ね――馴れ合ってもいいだろ――板違いだ――VIPで板違いとな? ――そもそもVIPとは――
 いつまでたっても結論が出ないいたちごっこ。その状況に焦れたその男は立ち上がった。彼は『文才無いけど小説書く』というパートスレの住
人だった。
「VIPを一つの国とか街みたいなものと考えて、スレを箱か何かと考えてくれ」
 そのBNSKerは、そう前置きして物語を紡ぎ始めた。


 あるところに2ちゃんねるという世界がありました。これは、その中で最も無法地帯と言われる、VIPという場所が舞台です。
 その糞みたいに下らないVIPでは、やっぱり糞みたいな下らないVIPPERと呼ばれる人々がぐだぐだと駄弁っていました。
 ある日、VIPで一人の男が提案しました。
『おまいら俺と積み木遊びしようぜ』
 VIPPERたちは、単発的に立っては消えていく、いつもの糞みたいに下らないスレだと思い、スレ主を馬鹿にすべく集いました。
 スレとは、ある一つの話題に対する、小さな集まりの場の事です。その場所は箱の形をしていて、中身は誰にでも閲覧出来ますし、また中に
発言を投下するのも自由です。人が発言するたびに、その箱は大きくなっていきます。VIPはいつもスレに埋め尽くされていました。
 その日は良スレも中々現れず、おっぱいのために「ksk」と発言し続ける事にも疲れた人々が沢山いました。つまり、皆、暇だったのです。
 スレ主だけが、自分のスレが皆に期待されているのだと勘違いして、得意げに言いました。
「VIPの全スレ積み上げて点まで届く塔作ろうぜwwwwwwwwwwwww」
 VIPPERたちは、とりあえずその誤字を指摘してあげました。
「点じゃねえよ天だよ俺アホスwwwwww」
 スレ主は顔を真っ赤にしてそう訂正しましたが、その内容の意味不明さは変わりません。
 天が具体的にどこまでを指すのかも、それをやる意義も、スレ主が何でそんなに馬鹿なのかも、何も分からないのです。
 それに、VIPPERは基本的に一期一会の精神を持っています。過去のスレなど疾うに忘れ去られ、打ち捨てられているのです。過去ログと呼
ばれるそれを今更顧みるVIPPERなど、あまりいません。
 皆の無視に耐え、スレ主は一人で黙々と過去ログを漁りました。何万あるとも知れぬスレをです。
 特にその行為に意味はありません。意味のない行為を思いつきとテンションだけで行うのがVIPPERのVIPPERたる所以なのです。
 適当に積み上げた結果、その塔はすぐに崩れてしまいました。

287 名前:塔は未だ完成に至らず(2/3) ◆dx10HbTEQg 投稿日:2007/01/21(日) 23:18:12.96 ID:VmwgFtCd0
「おまい、まだやってんのかよwww」
 先ほど散々スレ主を馬鹿にした一人が、そのスレにやってきました。大量の過去ログとスレ主、そして倒れた塔を交互に見ながら、彼はそこ
に座り込みました。面倒なのは嫌いですが、なんとなく、気が向いたのです。
 その様子を見た他のVIPPERたちも、徐々に集まってきました。人がいるところは面白いことが起きる。そんな、適当な価値観を持っているのです。
「良スレは頂点だろ、常識的に考えて」
「パートスレとかいらねえしwwwwwwwww」
「じゃあ糞スレはどうするよww」
「糞スレは使うお」
 各々好き勝手な提案をしつつ、過去ログを手に取ります。彼らは糞スレを愛し、また糞スレの中から生まれ出でる良スレを愛していました。
 逆に、彼らの多くはパートスレを忌み嫌っています。一期一会の精神に反しますし、何より過疎っているのにいつまでも粘着質に寄生している
住人が同じVIPPERとは認めたくなかったのです。VIPに馴れ合いなど必要ありません。
 だから手に取るのは糞スレや良スレばかり。一人でやる時とは格段に違う速さで作業は進みました。
 しかし、ある程度積み上げたところで塔はがらがらと崩れ去りました。
 なぜ崩れたのだろうか。どうすれば完成するのだろうか。
 飽き始めたVIPPERも多くいる中で、ある一人のVIPPERが呟きました。
「パートスレ使えばよくね? あれ中途半端に落ちてるの多いし」
 塔が崩れた原因は、良スレと糞スレにある発言量の差だったのです。良スレは大抵は千の発言がなされますが、糞スレには一つや二つの
発言で命を終えるものが珍しくないのです。確かに五百ほどで終わるスレもありますが、圧倒的に足りません。
 一と千とを組み合わせるのには無理があります。繋ぎとして、パートスレを利用するのが一番の解決策なのです。
「最初は良スレでいいんだよな?」
「次にパートスレで千になったの使おうぜ」
「で、次はパートスレと糞スレの中途半端なやつか」
「最後は糞スレだなってどんだけ時間かかるんだよwww」
 いつのまにか人はものすごく増えていました。見ているだけの人は、もっと多いでしょう。
 作業は想像以上に長引き、飽きて去っていったVIPPERも多くいました。ですが、噂を聞いてやってきた人々もまた多かったのです。ブログと
呼ばれる、やはりVIPPERたちには嫌われる傾向にある場所で、紹介された結果でした。
「なあこのパートスレ、意外と面白くね?」
「あるあ……あるあるあるwwwwwwwwwwwwww」
 積み上げる作業の途中、思わず覗いてしまうスレ。大掃除中に本に熱中してしまうのと同じような現象が、辺りで巻き起こりました。
 パートスレとなって存続しているだけの魅力がそれにはあったのです。

288 名前:塔は未だ完成に至らず(3/3) ◆dx10HbTEQg 投稿日:2007/01/21(日) 23:18:31.88 ID:VmwgFtCd0
 そして、気がつくと『おまいら俺と積み木遊びしようぜ』というスレも周囲からはパート扱いされていました。ですが、彼らがそんな侮辱に気分を
害すことはありません。
 誇らしげに、彼らは言い返しました。


 その『パートスレ住人ちょっとこっち来い』スレはBNSKerに乗っ取られ、荒れはてていた。勢いは減り、いつ落ちてもおかしくない状況にまでなった。 
「日本語でおk」
「妹が塔に囚われて魔王に処女奪われた、まで読んだ」
 数々の冷たい言葉に、そのBNSKerは、
「ちょwwwwおまwwwww今いいところなのにwwwwwwww」
 と書き込みつつ、胸を張って続きを書き込んだ。本当は塔の完成と感動のフィナーレ、努力のごほうびとして幼女が裸になってくれるシーンまで
描写したかったのだが、その場の空気が許してくれそうもない。
 何しろ書きながらの投下だったのだ。時間がかかりすぎている。
「一見VIPらしくないスレがあっても、それだってVIPの一部なんだお。喧嘩イクナイ」

 結果として、その議論に決着はつかなかった。きっといつまでも、VIPが存続し続ける限り繰り返される議論であろう。
 パートスレ住人の身勝手な言い分など誰も聞かないし、またパートスレ住人も引き下がりはしない。
 だが、それこそがVIP。混沌とした、不法地帯。その時の勢いに任せ書き込みをする、隔離された住人達。誰を気遣うこともなく、ただ己の快楽
だけを追求する場所。
 VIPらしさ? そんなものは知らない。どうだっていいさ。楽しければなんでもいい。
 どんなスレであれ、誰かがどうか盛り上がってくれと望んだであろうそれは、塔に黙々と積み重なっていく。BNSKもまた、VIPが存続しつづける
限り、繰り返し。




昔こっぽり大山やまの鳶の糞ヒンロロヒンロロ



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