【 アツアツのなにかウマウマ 】
◆VXDElOORQI




98 名前:アツアツのなにかウマウマ(1/2) ◆VXDElOORQI 投稿日:2007/01/14(日) 23:30:37.97 ID:LICY2L8m0
「きゃー!」
 一階、おそらく台所からだろう。聞きなれた悲鳴に俺はただをため息を吐く。
 念のために台所に行くことにする。
 重い足取りで階段を下りながら考える。
 今度、どの料理器具を買い換えることになるのかな。

「どうしたー?」
 台所を覗き込むと黒い煙が鍋から立ち昇り、その煙は徐々に家中に広がろうとしていた。
 俺はとりあえず換気扇のスイッチを入れ、コンロのそばでへたり込んでいる妹を見た。
「今日はなにを作ろうとしたんだ?」
「今日ね。寒いでしょ。だからシチュー作ろうと思ったの……」
 それきりうつむいたままなにも言わなくなってしまった。
「だからもう料理はするなって言っただろ?」
「だってお兄ちゃんに食べて欲しかったから……」
 そんなことを言われるとこれ以上強く言えなくなってしまう。
「じゃああれだ。刺身とか火を使わない料理にするってのはどうだ?」
 我ながらナイスアイデア。自画自賛。俺に惚れそう。
 これならもう台所が煙に包まれることもないだろう。
「ヤダ」
 あれ? 俺のナイスアイデア、お気に召さないの?
「私はお兄ちゃんに温かい手料理を食べて欲しいんだもん……」
 嬉しいような悲しいようなお言葉ありがとうございます。
「でも簡単な料理じゃないとお前できないだろ?」
「そ、それは、そう、だけど……」
 妹はまたうつむいて黙ってしまう。
 どうしたもんか。妹を満足をさせる良策はないものか。
「お前はどうしたいんだ?」
 なんにも思いつかないからは本人の意思を尊重と言うなの逃げに走る。
 我ながら情けない。が本人の意思が一番大事なのもまた事実なので、ここは良しとして
おこう。

99 名前:アツアツのなにかウマウマ(2/2) ◆VXDElOORQI 投稿日:2007/01/14(日) 23:31:03.47 ID:LICY2L8m0
「お兄ちゃんに、私の作った温かい料理を食べてもらいたい」
 妹はうつむいた顔をあげ、俺の目を見てさっきも言ったことを今度ははっきりと言った。
 目を見て言われると正直、照れる。なんとか妹の願いを叶えてあげたい。俄然やる気が
出てきた。

 やる気が出てもすぐに名案が思いつくはずもない。
 もう手詰まり。完全に思考停止だ。
 そう思っていたとき、外からあるメロディが聞こえてきた。
 そのメロディを聞いた俺はついに思いついた。妹の豪快な火力を使うのに最適の物を。
「こんなのはどう?」
 そのアイデアを妹に伝えるとアイデアに満足したのか「うん!」と元気一杯に頷いて、
早速準備に取り掛かった。

「うまい!」
「ほんと?」
「本当だって。お前も食ってみ」
 妹は俺に勧められてやっと作ったものに口をつけた。
「あつ。はふはふ。おいひぃ」
 妹は嬉しそうに一口、もう一口と頬張っていく。
 正直、これが料理と言えるのか相当怪しいと思う。だが作るのは至極簡単。そして温か
いを通り越して熱々だ。そして大抵の女の子は甘くておいしいこれのことが好きらしい。
「お兄ちゃんももっと食べなよー」
「おう」
 なにはともあれ、妹も満足、俺も満足。万事解決だ。
 そんなことを考えながら妹とそれを頬張っていると、俺のアイデアの発端となったメロ
ディがまた聞こえてきた。
『いしやーきいもー、おいも。あつくてホクホクのやきいもー』

おしまい



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