【 ある冬の山小屋で 】
◆K0pP32gnP6




550 名前:【品評会】ある冬の山小屋で (1/2) ◆K0pP32gnP6 :2007/01/13(土) 21:26:50.15 ID:W3hnrVtR0
 どおしよぅ。責任重大だよぉ。
 わたしが頑張らないと、この二人死んじゃう、って言われてもぉ。

 え? わたし? ロウソクですよぉ。

 ひっさしぶりに火を点けてもらえたと思ったら、遭難したスキー客のカップルってぇ。
 そういえば、ここ、ずっと使われてない山小屋だったっけぇ。
 こんなボロい木の建物で、寒さをしのげるのかなぁ……。
 って、わたしが頑張って暖めないといけないんだよね!

 でも、ロウソク一本如きが頑張ってどうこうできる問題じゃないよぉ。
 オンボロストーブさんは、灯油がない、って言って手伝ってくれないし……。
 ほかに萌え……燃えるものないかなぁ?
 あ、古い雑誌がある! ちょっと、男の人。それ取ってください!
 って人間に話しかけても通じないんだよね。
 あれ、なんでわたし言葉も通じない人を助けようとしてるんだろぉ……。
 ああぁぁ。ダメだよぉ、わたし。そんな事考えちゃ。
 この二人を助けないと。仲の良さそうなカップルじゃない!

 おーい、こっち向いてくださいよぉ!
 ダメだ。やっぱり聞こえてない……ってあれ?
 なんで二人ともこっちをじっと見てるの? もしかして、わたしの声、届きましたぁ?
 いや、違うみたい。なんかボーっとしちゃってるよぉ。
 気を確かに! 二人とも! 寝たら死んじゃう!
 って、言ってるそばからウトウトしてんじゃねえ!

 ああ、もう五センチくらいしか残ってないよぉ。最初は今の倍くらいあったのに……。
 そこの雑誌さえ取ってもらえれば……役立たず! 甲斐性なし!

551 名前:【品評会】ある冬の山小屋で (2/2) ◆K0pP32gnP6 :2007/01/13(土) 21:27:12.28 ID:W3hnrVtR0
「……おい、この建物の中に人がいるぞ!」 
 声、聞こえましたかっ! ってお前ら寝てんじゃねーよ!
 もしかして、二人とも死んじゃいました?
 ああ、わたしの努力が足りないばかりに……。あと2センチしか残ってないしぃ。
「ん……あ、タカシ! 起きて!」
 女の人の方が起きましたぁ! 男の人の肩揺すってます!
 外にいる人たちは、雪でドアが開かずに入ってこれないみたいです。 
「うわっ、ヒロコ。今何時?」
 何寝ぼけてるんですかぁ? まぁ、いいですよ! 生きてたんだから!
「ちょっと、寝ぼけてんじゃないわよ。起きろ!」

 中からなら意外とドアは簡単に開く状態だったみたいです。
 タカシさんがちょっと体当たりしたらすんなり開きました。

 ああ、これでわたしも一緒に連れてって貰える!
 それで、テレビの上にでも飾ってもらって、二人が結婚して幸せに暮らすところを見守るんだぁ!
 そして、二十年後くらいに、
「このロウソクが無ければ今の俺達はいなかったんだよな」
 とか言うのを聞けるんだぁ!

 って、お前ら、何嬉しそうに救助隊のスノーモービルに向かって駆けてくんだ。
 アタシを連れてけ、この野郎!

  ≪おわり≫



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