【 残り三分 】
◆kCS9SYmUOU




345 名前:残り三分 1/1  ◆kCS9SYmUOU 投稿日:2007/01/07(日) 22:26:45.20 ID:u7kJCW5Z0
――爆発、マデ、残リ、三分、デス。乗員ハ、速ヤカニ、退避、シテ、クダサイ――
びーっ! びーっ!
 けたたましいサイレンの音とともに、感情のカケラもない合成音が宇宙船内に響き渡る。
 その喧騒のなかで、若い男三人があたふたと狼狽していた。

「……くそっ! まずったな……」
 眼鏡をかけたリーダー風の男が、呻くように言った。
 いつもは冷静沈着な彼も、さすがに冷や汗をかいている。
「ああ……しかしこれは誰のせいでもない……」
 そんな彼に、髪の長い、切れ長の目をした優男――ようするにイケメンが、
ちょっと俯きながらかっこよく言った。
「そうだな……」
 そのイケメンの言葉に同調しながら、残りの一人……特に特徴のない男が頷く。
そして、重々しく口を開いた。
「そうだな……その通りだ。これは誰の責任でもない。これは不幸な事故だったんだ……
思い返せば十分前、俺がカップ麺を作ろうとここを離れようとした時、ケンジとユウジが
『俺のも頼む』と言ってきたことが始まりだった……。俺はこの狭苦しいコクピットを離れ、
居住ブロックへ行ってカップ麺を三つ取り出し、湯を注いだ……。ここまではよかったんだ……
いや……このこと自体がもはや運命に定められた事象だったのかもな……。そして俺はそこで
二分待った……。二人に出してすぐ食べてもらいたかったからな……。それから俺は、お盆に
三つのカップ麺を載せて、コクピットに戻った……。しかしその時、恐ろしいことが起こったんだ……
俺は、足にコードを引っ掛けてしまった……! 俺はお盆に三つもカップ麺を載せていたから、うまく
バランスを取ることができず、転倒してしまった……。それだけなら……それだけならよかったのに!
……そんな俺にユウジは笑いながら手を貸してくれた。そして俺がユウジの手を握り、ユウジが
俺を引っ張った瞬間、ユウジもバランスを崩してしまった……。そしてユウジの体を支えようとした
ケンジが、うっかり船の自爆ボタンを押してしまったん――

その瞬間船は爆散した。そして彼らは、宇宙のチリになった。

END



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