【 無題 】
◆pzaWLWAfA6




909 名前:藤田 ◆pzaWLWAfA6 :2006/04/16(日) 22:59:25.59 ID:lk4ZJ66l0
母の法事の帰り、電車が空いていたので、私はふと思い立って一番前の席に座った。
一泊して後なので、今は昼間。社会人になってから、昼間の電車になどなかなか乗る機会がなく、
一番前からの景色は、まるで自分が運転している様でふと童心にかえる。

まっすぐの線路、ちょうどその先に虹の根元が見えた。
このまままっすぐ行くと虹に追いつけそうな錯覚を感じる。

胸がくっと引き締められたように感じた。

子供の頃、父の実家に引っ越した頃のことを思い出す。

私は、そのころ田舎暮らしがなじめなくて、近所を歩いても、まるでゴーストタウンの様な、
いや、そんな洒落た表現じゃなく、まさに寒々とした寒村の雰囲気になじめなくて、最初いつも泣いていたような気がする。

しかし、子供は順応性が高い。
私は近所の老人に可愛がられながら、そのうち一人で遊ぶ術を覚えた。
虹の根元をみてみたいと考えたのもその頃の事だ。
山に囲まれた田舎の空は狭いが、その狭い空を、山をまたぐように虹は大きく見えた。
あの虹にもっと近づきたい



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