【 輪廻 】
◆2uBkry0EE6




367 名前:輪廻 1/2 ◆2uBkry0EE6 投稿日:2006/12/29(金) 03:45:05.27 ID:hcIQ2NEO0
今から遥か未来の世界。
人類は全ての技術を手にし、新たな知識を得る事はなくなりました。
そして、今までになかった事がもう起こらないほど長い年月を過ごした人類はある考えにたどりつきます。
『新しい事が起こらないならいっそ毎日を同じにしてしまおう』
こうして、手にした技術で動物の成長と植物の成長は止まり、川の流れも風の強さも一定のものになりました。
動物もみんな操り毎日同じ動きをします。
そして、同じ事をして過ごせばいい楽な毎日を人類は甘んじて受け入れ、また長い年月が経ちました。

368 名前:輪廻 2/2 ◆2uBkry0EE6 投稿日:2006/12/29(金) 03:45:42.99 ID:hcIQ2NEO0
ある時、同じ毎日を過ごしていた少年が、その流れを破ってみんなに言いました。
「そろそろこんな事やめよう。何か新しい事をしようじゃないか」
そばにいた老人が応えます。
「いまさらなんじゃ。それにもう新しい事なんてありゃせんよ」
少年は少し考えてまたみんなに呼びかけました。
「みんなで歌を歌おう。山の向こうにいる人も、海の向こうにいる人も一緒に」
やれやれとため息をつきながら老人が応えます。
「とうの昔にやっとるという記録がのこっておるよ」
じゃあ、と少年は続けます。
「みんなでお食事会を開こう。いろんな料理を並べていろんな人とおしゃべりするんだ」
先ほどより深いため息をつきながら老人は応えました。
「それもとうの昔にやっとるという記録がのこっておるよ」
それを聞いてしばらくう〜ん、と唸っていた少年が突然声をあげて喋りはじめました。
「そうだ! 昔の記録が残っているなら今まで記録を消した事はないはずだ! だったら記録を消すことは新しい事じゃないか!」
これには老人も言い返すことができません。
周りで聞いていた人達も面白そうだと騒ぎはじめ、全ての記録を消すことになりました。
「これで、僕達は今まで誰もしなかった事をした事になるね!」
新しい事をした少年達は満足し、技術がなくなったために止めていた成長も一定にしていた自然の流れも元に戻りました。
しかし、技術がなくなった今の人類に自然の中で生きていくほどの強さはなく次々と人が死んでいきます。
仕方なく人類はどんどん世代を変えて放棄した技術を再び発明する事になりました。
そうして長い年月が流れ、再び全ての技術を得た人類は再び同じ毎日を過ごすという考えにたどり着きました。

そしてまた、どこかで誰かが叫びます。
「今までの記録を消そうじゃないか。それが新しい事だ」



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