【 親友 】
◆lPiTw6gEh2




468 名前:【品評会】 親友 0/4 ◆lPiTw6gEh2 投稿日:2006/12/29(金) 18:58:25.08 ID:g44oupwe0
「三ヶ月だって。今おなかの中に子供がいるってお医者さんが――」
少し夢見がちな親友の顔と共にその声が、徐々に遠ざかっていくような気がする。
「――そしたら彼が喜んでくれて、結婚しようって!」
「ふ、ふーん、おめでとう!」
嬉しそうな彼女の顔を見て、胸がざわめいでいる。

彼女は私の親友である。
幼いころからいつも一緒で、私は本当の姉妹のように思っている。
私に好きな人ができた時、一緒に喜んでくれた。そして、その人には彼女がいたと
知った時、一緒に泣いてくれた。
その彼女が、私以外の誰かと一緒になる。

469 名前:【品評会】 親友 2/4 ◆lPiTw6gEh2 投稿日:2006/12/29(金) 18:58:51.44 ID:g44oupwe0
次の日、家にいると一階から母が私を呼んでいる。
彼女が遊びに来た、と。彼氏と一緒に。
扉をノックされたので、部屋の扉を開けると、彼女と彼女の恋人が私の部屋へと
入ってきた。

彼女は頬を軽く染め、自分のおなかをなでながら、
「名前どうしようか迷ってて、貴美子ちゃんにも一緒に考えてもらおうと思って」
そういう彼女はとてもうれしそうだ。
胸のざわめきが彼女にばれないかと心配になりながら答える。
「んー。そうだ、私の名前「貴美子」にしちゃえば?」
冗談めかしながら答えると、彼女は笑ってくれた。

「不思議だよね。このおなかの中に新しい命があるんだよ」
彼女はそういいながら、彼と一緒に子供のこと、そしてこれからのことについて話している。

470 名前:【品評会】 親友 3/4 ◆lPiTw6gEh2 投稿日:2006/12/29(金) 18:59:11.87 ID:g44oupwe0
――疎外感。

それはそういえばいいのだろうか。
彼女とその彼氏がとても遠くに見える。
彼女が私以外の誰かと一緒に……。
裏切られた。そんな事は許さない。そんなことハ、絶タイに許さナイ。

気がつくと私は、彼女の子供の名前を書いていたボールペンを握り締め、
ロウテーブルを乗り越えると、彼女とその彼に渾身の力を混めて突き刺した。
「絶対に許さない! 彼女は私といつも一緒にいるの!」
そう叫びながら私は何回も突き刺した。何回も。何回も何回も何回も何回も何回も。

471 名前:【品評会】 親友 4/4 ◆lPiTw6gEh2 投稿日:2006/12/29(金) 18:59:36.78 ID:g44oupwe0
      *

『私』の声を聞いて、両親が部屋に駆け込んできた。
二人は『私』を後ろから羽交い絞めにすると、手からボールペンを取り上げた。

二人の目はもうボロボロになった二体の人形を眺めている。



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