【 孤独な友達 】
◆BZIf0DAMS6




447 名前:孤独な友達 投稿日:2006/12/24(日) 08:53:18.31 ID:4H2n8+3t0
 僕はいつも一人ぼっちだった。いつも孤独が僕を覆いつくす。
友達はたくさんいたけれど、それでもその孤独は消えなかった。
友達としゃべっていると、決して楽しくないわけではない。心がとても落ち着く。
しかしその友達たちと僕は本質的に何か違う。
彼らは根が明るく、僕は根が暗い。
だから、その後に訪れる孤独がとても大きく。僕を怖がらせる。
孤独は一生ついて離れない呪いのようなものだ。僕はそう思っていた。
 クラスでいつも一人机でうつむいているようなやつらがいる。
友達もいず、彼らは休み時間を耐えるようにすごし、授業のときもどこかうつろな目をしている。
そのような人たちはもしかしたら僕以上に孤独を感じているのかもしれない。
そう思うと背筋がぞっとした。そんなことになったら発狂してしまいそうだ。
僕は彼らのことを少し尊敬のようなものを感じていた。
だって、ずっと一人でいるなんて僕にはとても無理だったからだ。

449 名前:孤独な友達 投稿日:2006/12/24(日) 08:53:58.27 ID:4H2n8+3t0
 ――そんなとき転校生がやってきた。彼はとても憂鬱な顔をしていてどこかおどおどしていた。
彼もまた、そういうグループの一員に見えた。
せっかくかっこいいのにもったいないと思った。
自己紹介もろくにせずに彼はすこしおびえた表情をしながら席についた。
みんなの第一印象はおそらく最悪だろう。誰も彼に声をかけようともしない。
でも僕はなぜかそんな彼が気になった。クラスには他にも同じようなやつがいるのに、
なぜだろう?転校生だからだろうか?僕は話しかけてみることにした。
「こんにちは」
「……」
「ねえ、どこからきたの?」
「……」
彼は全く返事をよこさなかった。やっぱりか、と僕は思い僕は明るい友達たちの輪へ戻った。
「なあなあ、あの転校生暗くねー? なんかちょっと話しかけずらいんだけど」
「そうだよね、なんか誰もよってきてほしくないみたい」
ああ、やっぱりそう思われてるのか。僕はすこし悲しくなった。


450 名前:孤独な友達 投稿日:2006/12/24(日) 08:54:48.93 ID:4H2n8+3t0
 次の日。いつものようにクラスのやつらと挨拶をして、くだらない話をした。
「あのさー、昨日あたしやすんだでしょ? ライブいってたの! すっごい興奮したなぁ!」
「へえー、そうなんだっ! いいなー、うらやましいなー」
僕はライブなんかにはいったことがない。そういう激しいところには行きたくなかった。
やはり僕はこの人たちとは本質的に違うのだなと感じた。
とりとめのない会話をしていても、孤独は消えない。
そんななか、彼のことが気になった。
僕はもう一度、話かけてみることにした。
「ねえ君、暗いよね」
僕は言ってからしまったと思った。僕には深く考えずに言葉を発してしまうところがあった。
「…………」
もちろん答えは返ってこなかった。彼はすこしおびえたような表情をしているようにみえた。
僕はあわててフォローをいれようとした。
「ごめんごめん、悪い意味じゃないよ。僕だってそうだもん」
「……どこがだよ」
返事をしてくれた! 僕はとてもうれしくなった。言葉の内容なんか関係なかった。
「いや、ほんとだよ。僕は暗い、君みたいにしてたときもあったよ。でも学年が代わってちょっと変わったのさ

451 名前:孤独な友達 投稿日:2006/12/24(日) 08:57:18.82 ID:4H2n8+3t0
 僕ちょっとおかしいからさ、そのキャラが受けてみんなに話しかけられるようになったってだけだよ」
「話しかけられる時点でもう違うじゃないか」
「いや、僕が話しかけている」
「……」
すこし会話になったような気がして、とてもうれしかった。でもそれ以上は何も返事をよこさなかった。
ちなみに学年が代わってこうなったというのは嘘だ。僕は小学校のときこそそうだったが、
中学のときからいままでそんなことはなかった。いまと一緒だ。明るいキャラを演じ続けている。
 次の日も、また次の日も話しかけてみたが、無駄だった。しかしそれでも彼のことが気になった。
そして一週間が過ぎたころ――昼休み、弁当を食べながら友達としゃべってるときのことだった。
「なぁなぁ、ちょ、聞いて。この前さぁ、バイトした金奮発して1万の服買っちゃった」
「すげー!」
「俺なんか3万の買ったし」
「そんなことより見てよ俺の髪型、ちょーイケテね?すっげえ頑張ったんだぜ」
…………今日はいつにもましてそんな会話ばっかりだった。
僕はファッションにも彼らが聞く音楽にも何もかも興味があわない。
僕は耐えられなくなって教室に走り出した。
「ちょっ! よっしーどこいくんよ?」
彼らの声が聞こえたが無視した。彼らも孤独を感じながら会話をしているんだろうか?
僕には到底想像できない世界だった。
教室にもどると彼が一人で弁当を食べていた。
僕はなぜだかすごく落ち着いた。今日も話しかけてみよう。
「あのさ……」
「……」
「君って本とか読みそうだよね」
「……」
黙々と弁当を食べる彼の目がすこし肯定の意を示したような気がした。

452 名前:孤独な友達 投稿日:2006/12/24(日) 08:58:23.50 ID:4H2n8+3t0
「なんていうかその……変な本。暗い変な本」
「……うん」
少しおびえてるようにもみえた。しかし返事が返ってきた。
「僕も読むんだよあと、音楽とかも。すっごい趣味が合いそうなんだ」
「……うそ」
「ほんとだよ! 最初からなんか感じてたんだ。ほら、オーラってやつ?それが同じだと思った。
 それで僕はなんていうかその……一目ぼれしたんだ! 変な意味じゃ、なくてね」
「じゃあ……聞かせてよ、どんなの好きか」
それから僕たちは好きな音楽や本や映画の話をした。予想どおり趣味はぴったりだった。
僕たちはすこし打ち解けたような気がした。
 それから数日たって、僕たちは普通に話せるようになった。
こんな話もした。
「ねえねえねえ! だからどこからきたのさ?」
「東のほう」
「東って?」
「……東京だよ」
「うわっ、すごっ! 都会人やん!」
「東京にも色々あるんだよ……君が思ってるようなところじゃない」
「ふーん」
 しばらくたったある日のこと。僕は聞いてみた。
「君は孤独を感じる?」
「感じるよ、とてもつよく。でもどっちにしても死ぬまで結局一人なんだからそれでもいいと思ってた」
「そっか…」
「でも、君は僕の孤独を癒してくれたよ」
僕は照れながら、ずっと言いたかったことを言った。
「僕は君と友達になりたいな」
彼はすこし悲しそうなかおをした後、うれしそうにこういった
「僕はもう友達だと思ってるよ」
……孤独は結局つきまとうけど僕がこの子の孤独をすこしでも紛らわすことができているのならそれでよかった。
僕は本当の意味での友達を見つけた気がした。この子といれば、死ぬまで孤独と戦えるような気がした。



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