【 春の終わりと、】
◆667SqoiTR2




47 :No.15 春の終わりと、(1/1) ◇667SqoiTR2 :06/12/17 20:59:07 ID:wGsW+Rmx
 おまえの春は終わった。だから、うちでは働けない。
 この言葉にこてんぱんに懲らしめられた私は、話の途中で元締めの部屋から逃げ出した。
 金を稼ぐ要をかっ飛ばされ、ただ一つの助けを食べられた。
 ふらふらとフラダンスのような浮遊感を吹っ切る事は不可能だ。
 裏家業で恨まれたうすノロどもが唸る裏道。私はそこを歩く。
 強力で強欲な強盗どもに強姦されるかもしれない。
 刺突と詩とシンプソンズに死ぬほど親しんでいる仕官に死体にされるかもしれない。
 別にそれでもいい。
 頭の中で、元締めの口がゆっくりと動く。お前の春は終わった。
 元締めにとって、儲けにならなければ、もういらない。
 奴は無駄に無口で無表情で無感動で無欲で無類の無駄嫌い。
 私はたわしや死腸の価値も無い。
 そして、悪魔が愛する暗黒から現れる阿呆。
 ヒック・シック・ディック・ミック・ニック・……、CK。ご要望に合格したゴミみたいなゴロツキ。
「一発、やらせろよ。暇なんだろ」CKがファックとサックの所望。
 私は中指を立てて、挑発する。刺される事を期待して。
「残念ながら、もう春は終わったんだ。もう故郷へ帰る」
「そうか? おれの聴いた話だと――」体が吹っ飛ぶCK。踵を振り抜く元締め。
 倒れたCK。なぜか元締め。頭脳がズルズルなズッキーニでずっこける。
「お前の春は終わった」
 元締めの言葉。部屋での再現。私は逃げる。
 奴は無駄に無口で無表情で無感動で無欲で無性に私の好きな人。
 この街に来たばかりの私を助けてくれた。
「だが、燃え上がるような夏が、やってくる。その時を、一緒にすごそう」
 私は止まる。元締めの表情を見る。期待に胸を膨らませ。
 私は頷く。「はい」
 夏の始まり。

 <了>



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