【 夏太郎一代記 】
◆pZKLgkblQY




28 :No.9 夏太郎一代記1/3 ◇pZKLgkblQY:06/12/17 00:54:19 ID:Sw9CU6yx
ところは北国、今去る昔、夏のこぬ国ありました。
犬は喜び庭駆け回り、蝉は地中で丸くなる。
王様姫様大臣将軍、頭抱えて夏を呼ぶ。
雪は降れども雨降らぬ、ツララは垂れども稲垂れぬ
木枯らし吹けども新芽は吹かず、霜は立てども下立たぬ。
並の国では民が飢え、上の者のみ飯を食う。
されどこの国夏こぬ国は、上下仲良く飯食えぬ。
まるくすれいにん泣いて喜べ、真の平等ここにあり。

王様えいやと覚悟を決めて、国中まきたる紙チラシ。
だれか夏呼び実りを呼べば、愛しい娘をくれてやる。
誘いに乗ってあらわれし、熱き血潮の快男児。
その名もまさしく夏太郎。
立てばTM 座ればTUBE 歩く姿は松崎しげる。
民百姓の期待を受けて、夏を探しに夏太郎。
有為の奥山 今日越えて 西へ東へ珍道中。
春はまだしも夏はない。秋はまだしも夏がない。
これは妙ぞと頭を捻り、考え抜きたる夏太郎。
南の国には夏が来る。北の国にも夏は来る。わが国だけが夏が来ぬ。
夏は概ね南に始まり、北に至りて失せるもの。
もしやと思い、至りて辿り、着きたる先は国境。
するとそこにはこれまで誰も、見たことないよな大洞穴。

29 :No.9 夏太郎一代記2/3 ◇pZKLgkblQY :06/12/17 00:55:19 ID:Sw9CU6yx
穴に潜りて、除いてみると、そこには夏がぽっかぽか。
お前はどうして地下を通ると、問い尋ねたる夏太郎。
私は特には拘り無いが、隣の大臣頭を下げて
ここを通れば御礼弾むと、頼まれたのだと夏答え。
ええい全く俗な奴め、お前はそれでも季節かと
上の国での飢え伝え、夏を説き伏す夏太郎。
それは全く知らなだよ、申し訳ない上の国
私が行かぬばかりによ、飢えて苦しみおったとは。
わかれば良いさと夏太郎、夏連れ洞穴上り出る。
それにつけても許せぬ奴は、隣の国の大臣め。
わざわざ地下に穴まで掘って、わが国苦しめ狙うとは。

そこにあらわる兵武者大臣、狙いは一人、夏太郎。
あいや許せぬ不埒者共、堪忍袋の尾が切れた。
手を振り足振り剣を振り、ばっさばっさと敵を切る。
一振りすれば腕が飛び
二振りすれば足が飛び
三振りすれば首が飛ぶ。
これにはさしもの兵衆も、おそれをなして風と散る。
一人残され隣の大臣、命だけはと泣いて請う。
ならばにやりと、夏太郎。隣の夏とひそひそ話し、一つの罰を思いつく。

30 :No.9 夏太郎一代記3/3 ◇pZKLgkblQY:06/12/17 00:56:12 ID:Sw9CU6yx
こうして夏は再び戻り、芽は吹き稲伸び蝉は鳴く。
いやそれ喝采夏太郎、国を挙げての大賑わい。
姫も負けじとその胸飛び込み、目出度く開く濡れアワビ。
とうとう王様夏太郎、子々孫々に至るまで、国も栄えて一件落着。
さてさて戻った春夏秋冬、この国その国どの国も。
戻らないのは一つだけ。隣の大臣屋敷だけ。
夏春秋もそっぽを向いて。寄ってくるのは冬将軍。
大臣死んだ後までも、いつまでたっても冬のまま。
何だとバチが、過ぎるぞと?
いやなにどうしてそれがまた、
夏でも雪が見られると、結構繁盛したそうさ。

おしまい。



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