30 No.09 ぼくはわるくない (1/1) ◇DWDMFPPpRw 06/12/09 04:16:14 ID:2hU/fa3Q
どうしよう。壊れてしまった。
どうしたらいい。壊してしまった。
こんなに簡単に壊れるとは思ってなかった。
確かに、壊すために落としたんだけど。
でも、こんなに簡単に壊れるなんて思ってなかったんだ。
お父さんは怒るかな。きっと怒るだろうな。
いつもいつも、とても大切そうにしてたから。
だから、壊したんだから。
これがウチに来てから、お父さんは僕に構ってくれなくなった。
いつもいつも、こればかりに笑顔を向けていた。
だから、壊したんだ。僕のことだけ見て欲しくて。
お父さんは、僕にもこれを大切にしろと言ったけど。
僕の居場所を奪ったこれを大切になんかできるわけない。
そうだ、僕は何も悪くない。悪いのはお父さんだ。
いや、悪いのはこれだ。これがあるからいけなかったんだ。
だから、壊したんだ。僕は何も悪くない。
素直に話せばきっとお父さんは分かってくれる。許してくれる。
僕が落として壊れたそれは、中身をこぼして床を汚している。
床を汚すと怒られるんだ。だから怒られるのはこれで、僕じゃない。
そうさ、正直に言えば許してもらえるんだ。
「お父さん」
お父さんの部屋に行って、呼びかける。お父さんは椅子に座って背中を向けていた。
「アルか。……何だ? リズはもう眠ったか?」
「うん、そのことなんだけど──」