26 No.7 窓の外から (1/1) ◇SenpaiXN.E 06/12/09 02:32:52 ID:HJJwReDJ
「人を雇う費用が、この方法でどれだけ削減できるか分かったろ」
大通りに面した喫茶店の窓際に、ケンと俺は向かい合って座っている。
「今度の商売は間違いない。この方法で必ず当たるはずだ」
ケンはコーヒーカップを置いてそう言った。
いや、お前はこの間もそう言っていたんだけど。
「頼むよ兄貴、この通りだ。もう二百……いや、百でいいから貸してくれよ」
俺はコーヒーカップを持って、窓の外を見やった。ため息が出たかもしれない。
俺にその気の無いのをその仕草から感じ取ったらしく、ケンは慌てて身を乗り出してきた。
「こないだ借りた金を返せないのは確かに俺が悪い。すまん、この通りだ」
ケンは両の手のひらを合わせて、テーブルに額をこすりつけんばかりになっている。
大通りを歩く人がケンを指差してクスクスと笑っているのが横目で見える。
確かに、今日は以前貸した五十万円を返してもらうはずの日だ。
もちろんあてにしていたわけではないけれど。
「でも、この商売が軌道に乗ったらすぐに返す。しめて百五十万のところを百七十万で返す」
この野郎はよくもいけしゃあしゃあと。
まったく、我が弟ながら一緒に座ってるのが恥ずかしく思えてくる。
「なぁ、頼むよ、これだけ雇用を削減して望むんだ、成功するのは分かるだろ」
頭を下げるケンから目線を再び大通りに戻す。
窓の外に立ち止まっているカップルの会話が聞こえてくるようだ。
「なぁ、オッサンがバニーガールの格好して頭下げてるぞ」
「何あれ、ホントキモイ」
おわり