【 ただいま懲戒処分中 】
◆hqr855lGDg
383 名前：ただいま懲戒処分中(1/3) ◆hqr855lGDg 投稿日：2006/11/27(月) 00:07:35.91 ID:BmL7T58hO
大天使ルシウルが悪魔におち堕ちた。天界はその話題で一色である。
神は新たに天使ミレエリを大天使に据えたが、
後任の天使を誰にするかは未定であった。
――大天使ルシウルが堕ちて間もないある日のこと見習い天使のラフィエロは
大聖堂に呼び出された。大聖堂にはラフィエロの他にカブリエリ、セルピーなど十人の見習い天使がいた。
熾天使は全員が揃ったことを確かめると話し出した。
長いので要約させてもらうと
「お前らの中でより多くの地球人を幸せにした奴が次の天使だ」
とのことである。
「お言葉ですが熾天使様、我々の任務は人を幸せにする
ことではなく神意を人に伝えることです」
優等生のカブリエリが反論する。
「そう言うなカブリエリ、時代は確実に変わっているのだ」
熾天使はそう言うとおもむろにあみだクジをポケットから取り出す。
「お前らの担当地区を決めるぞ」
あみだクジの結果、ラフィエロは『Japan』地区の担当になったようだ。
何でもjapanはユーラシア大陸の東端の小島で自国のことを日本と呼ぶらしい。
最後に人の世界でのルールが述べられるが、これも長いので箇条書きにさせてもらう
・担当地域の法律に従うこと
・天使の能力を使わない
384 名前：ただいま懲戒処分中(2/3) ◆hqr855lGDg 投稿日：2006/11/27(月) 00:10:08.17 ID:BmL7T58hO
・人間に恋をしない
・上の三つを破ったら懲戒処分
――ラフィエロは早速地上に降りていく。
降りた先は老人の街スガモ、ラフィエロはめざとく大きな荷物を抱えた老婆を見つけ助ける。
「早くも一ポイントよ」
そんなのがポイントになるのか疑問は残るが、ラフィエロは楽しそうである。
「二ポイント目〜」
「よっしゃ〜、三ポイント目」
――略――
走り回ってさすがに疲れたのかラフィエロはしばらく居城となる場所へ向かう。
天界はこういうところにセコいようで用意されているのはビジネスホテルだ。
次の日もラフィエロは張り切っている。何でもシブヤとやらに向かうそうである。
シブヤには人がたくさんいるらしい。
しかし、実際来て見るとまるで掃き溜めのゃうなところである。
ラフィエロも心なしか不快のようで、下を見ながら早足で歩いている。
すると突然ラフィエロが男とぶつかった、長身のスラッとした体躯に
銀縁メガネをかけているいかにも秀才タイプな男だ。
ラフィエロは男を見上げると途端に耳まで真っ赤になり
「ごめんなさい、ごめんなさい」
と平謝りし始める。きっとタイプなのだろう。
「気にしないでいいよ。ただ、前には気をつけて」
男はミントのような爽やかさを残し去っていく。
ラフィエロが小走りで追う。
「あ、あのお名前は？」
「丸橋正弥」
どうやらこの男、個人情報の重要性を知らないらしい。
「よ、よかったらお茶でもしませんか」
と誘いほぼ無理矢理、男を近くの喫茶店さにてん連れ込むラフィエロ。
385 名前：ただいま懲戒処分中(3/4) ◆hqr855lGDg 投稿日：2006/11/27(月) 00:11:47.91 ID:BmL7T58hO
男はミントのような爽やかさを残し去っていく。
ラフィエロが小走りで追う。
「あ、あのお名前は？」
「丸橋正弥」
どうやらこの男、個人情報の重要性を知らないらしい。
「よ、よかったらお茶でもしませんか」
と誘いほぼ無理矢理、男を近くの喫茶店さにてん連れ込むラフィエロ。
二人はぎこちないながらも次第に打ち解けていく。
――数日後、ラフィエロと正弥は腕を組みながらたのしそうに歩いている。
だが、そうは問屋が卸さないらしい。
熾天使の強い思念がラフィエロの身体に襲いかかる。
「スグカエレ」
どうやら帰投命令らしい。ラフィエロは名残惜しそうに正弥と別れ天界に向かう。
「コラーッ、任務もせずに何しとる」
ガランとした大聖堂に熾天使の声が響く。
「す、すいませぇん」
情けない声で謝るラフィエロ。
「人の恋、これは懲戒処分だっ」
「えっ……」
386 名前：ただいま懲戒処分中(4/4) ◆hqr855lGDg 投稿日：2006/11/27(月) 00:12:27.02 ID:BmL7T58hO
「お前に二つの選択肢を与えよう、男と別れるか天使を辞めるかだ」
珍しく熾天使の話が要約されているのは怒っている証拠だ。
「私は……」
ラフィエロは天使のように笑っている、正弥の隣りで。
天使法第九条
人に恋をした天使は懲戒処分として天使を辞め、恋した人を一生幸せにしなくてはならない。
ラフィエロは今、懲戒処分の最中である