【 団欒 】
◆kCS9SYmUOU




272 名前:団欒 1 ◆kCS9SYmUOU 投稿日:2006/11/26(日) 22:50:09.08 ID:hxxINW+y0
 一家の団欒、夕飯時。
 我が筒井家では家族四人でテーブルを囲み、テレビを見ながらご飯を食べるのが慣例となっている。
 今日のご飯は子供が大好きカレーライス。俺も大好きですよ。十七歳だけど。
 二杯目をおかわりしてから、ふとテレビを見る。バラエティ番組が終わった後で、五分間のニュースをやっていた。
 ニュースキャスターが、淡々と喋っている。滑舌いいなぁ。などと思いながらカレーの到着を待つ。
 なにやら大変な事件があったようで、最近のニュース番組は大抵この事件を報道していた。
 そのニュース内で頻繁に連呼される言葉。語感からなんとなくわかるのだが、詳しくは知らないので家族に訊く。
「ねぇ。『懲戒』ってなんなのさ」
 俺からの急な質問に驚きもせずに、一歳違いの姉から返事がくる。
「ん〜? なんなのよいきなり」
「いや、ちーと気になってさ」
「勉強熱心だねぇ。感心感心。で、懲戒ってのはねー?」
「ふんふん」
 それから姉からのレクチャーがしばらく続いた。途中カレーをほおばりながら、簡単に、丁寧に教えてくれた。
途中でかーちゃんも加わり、懲戒についての講義はだんだん白熱していった。
「――つまり、そーいうわけなの。わかったかな〜?」
 さながら子供番組の司会のおねーさんのように、笑顔で訊いてくる姉。
 実際、分かりやすい解説だった。途中かーちゃんが入ってきたからちょっとこんがらがったけど、
その辺の辞書とかなんかよりは、ずっと面白かった。さすが秀才。学年トップ。
「え〜と、簡単に言うとー、『行政上の刑罰』ってことでいいのかな?」
 あいまいな感じで答える。理解したとは言っても自信はない。すると姉が満面の笑みを浮かべて抱きついてきた。
「そーよー。理解したみたいね〜。嬉しいわ〜」
 姉はいつもこうだ。俺を男として認識していない。この間も「一緒におふろ入ろう〜」とかなんとかあれやこれや。
 まったく。いい加減俺ばなれしろってんだ。かーちゃんも笑ってんぞ。

273 名前:団欒 2 ◆kCS9SYmUOU 投稿日:2006/11/26(日) 22:51:04.08 ID:hxxINW+y0
 閑話休題。

 で、夕飯も終わり、まったりムードでコタツに入る。
 テレビは面白いバラエティがないので、ニュース番組を垂れ流す。
 そこでもまた、あのニュースをやっていた。
 今度は懲戒の意味も分かっているので、多少は内容も分かる範囲が増えた。
 そこで俺は改めてニュースを見る。
 もう聞き慣れた台詞。見慣れたテロップ。そこに書いてある親父の名前。
「なー。ねーちゃん」
 一緒にコタツに入っていた姉に訊く。
「なぁに?」
「親父ってさー、けっこうやばいんじゃね?」
「そーお? 別にたいしたことじゃないわよー。ねー? 母さん」
 洗い物をしていたかーちゃんが、振り返らずに言う。
「そーねー。別に人を殺したわけでもあるまいし。じきに帰ってくるでしょ」
 そう言ったかーちゃんの声色は、どこまでも穏やかだった。

「そういうもんかね」

END



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