【 紙の箱庭 】
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775 名前:お題『懲戒』『青い空』 紙の箱庭 投稿日:2006/11/26(日) 01:45:04.07 ID:Omj+wv150
 ある日、青い空の下にヒトがやってきました。ヒトはヒトが住める所を探していました。

あるところにヒトが住んでいました。
雲一つ無い青い空が見える森の中で、森に住む沢山の動物たちと毎日を楽しく過ごしていました。

 ある日、ヒトは森の中で大きな箱を見つけました。
箱の中には紙切れが一枚と、ヒトには分からない不思議そうなモノが沢山入っていました。
面白そうだな、そう思ったヒトは試しに箱の中のモノを一つだけ持ち帰りました。

これは何だろう?持ち帰ってはみたが何か分からないモノを、ヒトは毎日調べ続けました。
そして、ヒトはそれが光るものだと知りました。
ヒトがモノに願った時、それは太陽のように光ります。
これがあれば真っ暗な時、わざわざ火をおこす手間がいらずに便利だな、そう思いました。

 ある日、ヒトは森の中の大きな箱を見に行きました。
箱の中にはヒトには分からないモノがまだ沢山入っていました。
これはなんだろう?そう思ったヒトは箱の中のモノを一つ持ち帰ってみました。
しばらくして、それは火をおこすモノだと知りました。
ヒトがモノに願った時、それは願った通り火が出てきます。
これがあれば料理の時、わざわざ火をおこす手間がいらずに便利だな、そう思いました。

 それからヒトは、よく箱の所へ足を運ぶようになりました。
ある時は願えばその通り水の出るモノを見つけました。
ある時は願えばその通り音の出るモノを見つけました。ヒトはとてもとても幸せでした。

776 名前:お題『懲戒』『青い空』 紙の箱庭 投稿日:2006/11/26(日) 01:45:27.33 ID:Omj+wv150
 ある日、ヒトは音の出るモノで音を楽しみながら草原に寝転がっていました。
近くでボトッと何かが落ちる音がしました。ヒトは何だろう?と思い、音の聞こえた方に行ってみました。
そこには何か青い欠片と手紙がありました。
手紙にはこう書かれていました。『これ以上箱の中のモノを使わないで。』
そういえばどこから落ちてきたのだろう?ふと見上げた空は何故かヒビがあり、小さな黒い穴が1つあいていました。
視線をおろした草の上にはもう欠片は無くなっていました。

 ヒトは火のおこし方をすでに忘れていました。
火をおこすモノ無しにはもう火はおこせませんでした。
一晩過ぎて、ヒトは手紙のことは忘れてしまいました。

 ある日、ヒトは音の出るモノの音で目が覚めた時気付きました。
いつも私を綺麗な声で起こしてくれたあの小鳥はどこへ行ったのだろう?そういえばいつの日からか見かけていないな。
ヒトは森に小鳥を探しに行きました。しかし小鳥は見つかりません。
それどころか他の動物たちも姿が見えない事に気がつきました。
やがてヒトは諦めて探すことをやめました。
悲しいな、ヒトはそう思いました。どこかでボトッと音がしました。
空に小さな黒い穴が三つあいていました。

777 名前:お題『懲戒』『青い空』 紙の箱庭 投稿日:2006/11/26(日) 01:45:44.52 ID:Omj+wv150

 ある日、ヒトが外に出ると、森の草木が枯れていました。
一本だけではなく沢山枯れていました。
ヒトは水の出るモノで水をあげましたが、元気になることはありませんでした。
とても悲しいな、ヒトはそう思い泣きました。
どこかでボトッと音がしました。空には小さな黒い穴が沢山あいていました。

 ある日、ヒトは思いました。きっとあの箱の中に何とかしてくれるモノがあるのではないか?
ヒトは箱の中を探しました。ふと、一枚の紙切れが目に入りました。
それにはこう書いてありました。『この箱の中のモノはとても便利だけれども、使うごとに何かを失うでしょう。』
ヒトは驚き、泣き出しました。
「そんなこと、私は知らない!こんなことになるなんて知らなかったのだ!」
しかし、ヒトが泣いても叫んでも、誰も答えてくれませんでした。
ボトッと大きな音がしました。空には大きな黒い穴が沢山空いていました。

778 名前:お題『懲戒』『青い空』 紙の箱庭 投稿日:2006/11/26(日) 01:46:02.06 ID:Omj+wv150
 ある日、ヒトの形をした何かが、ヒトの所を訪れました。
ソレは落ち込むヒトに札を渡してこう言いました。
「もしもあなたに今願いがあるのなら、この札に願いを書いて強く願いなさい。」

 ソレはそう言うと去っていきました。ヒトは早速願いを書き強く願いました。
空や木や動物たちを元通りにして欲しい、と。
すると札は太陽のような炎を出して全てを焼き払い、洪水のような水を出して全てを流しました。
ヒトもどこかに消えてしまっていました。
ただ、何故か一枚の札がポツンとありました。

 ある日、ヒトの形をした何かが、ヒトのいた所を訪れました。
ソレは落ちていた札を拾いそれを読むと、目をつぶり空を仰ぎました。
すると、何もない土の上に草花が生え、木が生えていきました。
どこからともなく動物たちが顔を出しました。
ソレは満足したように微笑み、森の中に歩いていくと、どこからともなく出した大きな箱を置きました。
そしてソレは森の奥へ歩いていきました。
青い空にはまだ少しヒビが入っていましたが、黒い穴はもうありませんでした。






ある日、青い空の下にヒトがやってきました―――。



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