487 名前:誠の想ひ、雲隠れ 1/8 ◆BEIrg0g0o. 投稿日:2006/11/19(日) 23:18:24.51 ID:mWoZ4jPz0
眠れぬのですか?
夜明けまで、まだまだ間はたっぷりとあるのでございます。
どうか、わたくしめのお話で秋の夜長を過ごしていただければ、これはまた幸いでございます。
一つの物に様々な見解が飛び交い、挙句の果てには取っ組み合いの大騒動とは、今も昔も同じようにあるのでございます。
茶々を入れられると、必死になって自らの正当性を認めさせようとは、男の性、男の意地と申しましょうか。
それが、自分より身分が上の者の意見となると、刃向かえず、認めざるを得ないというのも、男の悲しい性でございましょう。
今の時代、自らの信念を持ち、正面からそれをぶつけることは可能であります。しかし、身分封建が全ての理だった時代ならば、
それは決して叶うことはないのでございます。お上の命令は絶対、そんな時代があったのでございます。
我を貫き通す力。それはいつの時代も大切であることには変わりないのでございます。
さて――
時は平安。
度重なる鬼など物の怪の出現により、都は恐怖の渦中にありました。
公は、その怪異を打ち滅ぼすべく名高い陰陽師や呪術者を呼び寄せ、化け物退治を命じたのでございます。
程なくすると、ほとんどの怪異は収まり都は平穏な世を取り戻したようにみえました。
しかし、成敗されずに残っていた物の怪たちは、どれも強大な力の持ち主。都の陰陽師どもには鎮めることなど到底出来ない物でございました。
そこに立ちあがったは、源頼光(みなもとのよりみつ。ライコウとの俗名もございます)と、その部下、頼光四天王でありました。
源頼光、頼光四天王と申しますと、かの有名な大江山の鬼・酒呑童子(しゅてんどうじ)討伐など数多くの逸話も残されてございます。
まさに化け物退治の先駆者でございました。
あるとき朝廷より、西の山奥に潜む『土蜘蛛』の征伐を命ぜられます。
頼光たちはその命を承り、西の方角を目指し、旅をしておりました。
立ち寄った村宿からは、一晩中威勢のいい若者の言い争いが聞こえ来てございます。
「おれの方が遥かに腕がたつ。おれの弓はケツの穴さえ射抜けるんだ。金時。つまり、おまえはおれの足元にも及ばんのだ」
「んなにをっ! オラは熊と力比べをして勝ったことがある。それにこの前、斬られかかったおまえを救ったのは、誰と思うておるのか?」
ぐぅ、と怯んだは四天王の一人卜部季武(うらべのすえたけ)、一方、角刈り頭の赤ら顔は坂田金時(さかたのきんとき)でございます。
この二人、仲が良いのか悪いのか、このような不毛な争いはここで始まったことではございません。
「これこれ。朝は早いのです。ゆっくりお休みなさい。明日の昼には西の山に着くのだから」と申しますは渡辺綱(わたなべのつな)四天王の頭でございます。
物の柔らかい口調は、烈火の如く燃え上がる二人の魂を鎮める雨の役割を果てしてございました。
わっはっは、これは愉快と笑っておられますのは、主人の頼光。彼は二人の掛け合いに見事拍車をかける名人でもあります。
その傍ら、布団を深くかぶり睡眠に更けるは碓井貞光(うすいのさだみつ)彼もまた、四天王の一人でございます。
489 名前:誠の想ひ、雲隠れ 2/8 ◆BEIrg0g0o. 投稿日:2006/11/19(日) 23:19:35.45 ID:mWoZ4jPz0
――早朝。起こし方が気に食わん、と季武と金時は争いを繰り広げておりました。
どうやら、金時の余りある力で熟睡中の季武を蹴飛ばしたことに端を発したことのようで。
「阿呆共。無駄な力をここで使うな、我々に任せられた命は重大なのだ。油断は死。心しておけ。貴様らが死のうが何ら変わりはなさそうだが……」
一喝するは頼光、ではなく、貞光でございます。鷹のように鋭い眼光が与える印象は知的、冷徹といった風でございます。
「綱殿。かような主人と阿呆な輩に任せてもよろしいのでしょうか? 我はこの先には何も見えぬ予感がしておるのですが」
布団の中で安らかにお眠りになる頼光をあごで指して申し上げます。
「ふむ。これはこれでよいのではなかろうか。確かに呆れる事も多々あるが、辛気くさい旅もまた耐え難いものがある」と綱。
貞光は大きく息をつくと、腰まで伸びた髪を丁寧になでつけ、筆を取り出し漢詩を書き連ねはじめました。
綱はやれやれといった様子で季武と金時を鎮め、頼光をそっと揺すり、お起こしになります。
かくして頼光一行は各々の得物をこしらえ、馬を出し、宿をあとにしたのでございます。
道中、頼光の後方からは、騒がしい声が続いてまいります。
「――そこまで言うのなら、金時。勝負をしよう。おれとお前どちらが多く土蜘蛛を討伐できるかやろうではないか」
「おぉう。受けて立とうではないか。自ら非力を露呈するとはいい度胸だ。いいか? 空言は無しだ。正直に報告するんだぞ」
「面白そうだな。俺も加わってもよいか」と頼光。どうやら、昨晩の言い争い、とりあえずの決着はもち越されたようでありました。
「頼光様! よもや、あなたまで……。私も、加わりましょう!」と綱が申したところ、
「阿呆ばかりか……」という貞光の小声をお聞きになり、綱は自らの発言でひどく落ち込みになってございました。
さて、山中。「腹の虫が鳴きやまねぇ」と嘆くのは頼光でありました。陽は高く位置し、そろそろ飯が恋しい刻でございます。
仔犬のうなりにも似た音をたずさえ、頼光一行は山を駆けてございます。
うにゃあ、と鳴き声に気づくは金時でございました。傍らには鈴をつけた子猫がおり、一同は馬を止めます。
「山中、子猫が一匹。迷ったか? そうだ綱、猫は美味いのか?」と頼光。冗談じゃないと制すは綱と金時でございました。
「頼光様。どうやら飼い猫のようですぞ。となると――」と途中、綱は貞光により発言を奪われます。
「近くに村がある、かと」
「おう。そうか、ならば早く進めようではないか。ほれ、お前達さっさといくぞ」
そいやと颯爽に走り去っていく頼光。金時は子猫を腰の巾着袋に入れ、後に続きます。
案の定、しばらく進めると拓けた村がございました。
村人は頼光一行の姿を見つけ、近寄ってまいります。
「やや、客人とは珍しい。ここは何もない村です故、ごゆっくりとしか出来ませぬが、どうぞ旅路の疲れを癒してくだされ」
「これはありがたい。出来れば――」
「村の長に会わせてもらいたい」と、またしても綱の発言は貞光により遮られます。綱、少し頬を膨らませてございました。
492 名前:誠の想ひ、雲隠れ 3/8 ◆BEIrg0g0o. 投稿日:2006/11/19(日) 23:20:24.66 ID:mWoZ4jPz0
案内された先は、辺りの家屋よりも幾分大きな屋敷でございました。
屋敷の手前、金時のさげた巾着袋から、子猫が顔を出し、村の中へと逃げて行きました。
「あぁ……」と残念そうな金時を見て、これは囃子の種になると不敵に笑む者がございました。季武でございます。
屋敷の中は広く、村人全員が入れそうな程でありました。村の集会はこの屋敷で行うのだと、村の長は説明いたします。
その後、酒や馳走が用意され、長による村自慢と共に村人総出で大層な宴が開かれました。
自分は下戸なので、と貞光は席を外し、途中、村へと消えていきました。
数時間にも及ぶ宴は終幕をむかえ、酒が回った頼光、季武はその場に寝転がってございました。
酔いつぶれた二人を置いて、綱たちが外に出た頃には、陽はとろりと眠たそうに頭をたれ、柔らかな光が向こうの山の空までも茜に染めてあげておりました。
綱は酔いさめの水を汲みに、金時は先刻逃げ出した子猫を探しに村を周ってございました。
うにゃあ、と声が聞こえた頃には茜空は仄暗くなり、屋敷では、再度酒をあおる頼光と季武がありました。
と、ここで金時は軒裏で子猫とうら若き乙女を見つけます。これが金時。運命の出会いでございました。
「あなたの猫だったのか」と金時が申しますと、
「いいえ。村にいついた猫でございます。村人全員の猫なのです」
とても澄んだ声に、金時は思わず聞き惚れてしまいます。
「旅の方ですよね。私、この村から出たことがないのです。どうか、外でのご活躍、お聞かせてください」
そう聞くや否や金時、張りきり、幼少の頃熊との相撲で勝ったことなど、これまでの手に汗握る死闘を面白可笑しく語ります。
そのうち、子猫は乙女の腕の中ですやすやと眠ってございました。そして、辺りに鈴虫がなく頃になっても、金時と乙女の笑い声が絶えることはありませんでした。
「金時。ここにいましたか。長殿からねぐらを与えていただいたので、夜が深まらぬうちに外れの小屋に戻りなさい」と綱であります。
綱は一度乙女に会釈をし、そう申します。
「さすが綱さん。交渉上手だ」
その夜、猫を連れてきていたことを季武に茶化されても、金時はにやにやと笑い、「おりん」と呟くばかりでありました。
つまらん、と季武はふて腐れて眠りにつきます。
493 名前:誠の想ひ、雲隠れ 4/8 ◆BEIrg0g0o. 投稿日:2006/11/19(日) 23:21:08.30 ID:mWoZ4jPz0
――草木も寝静まる刻、ひそひそと声が聞こえてまいります。
「頼光様。ご決断はお待ちくだされ。もうすこし、もうすこしだけ、様子を見たいのです」
申し上げるは綱でございます。
「綱殿。何を臆しておるか? 我はいつでも成敗する覚悟はあるのですぞ」と貞光。
頼光は真剣な面持ちで申し上げます。
「そうか……、ではもうしばらく様子を伺おう。お前のことだ。なにか別の手が思いついたのだろう」
「何を呑気な。我々の本来の命をお忘れになったか! 呆れましたぞ。前々からあなた方の考えには賛同できずにいた。
ここぞというときに限って詰めが甘い。酒呑童子討伐も、我がいたからっ……」と貞光は鬼の如く険しい顔つきで申し上げます。
「貞光。綱にも、なにか妙案があるのだ。ここはもう少し様子を伺ってみようではないか。それ以降はお前の好きにいたせ」
頼光は、普段は見せぬ逞しい一面もお持ちでございました。
――さて、翌朝も相も変わらず宴騒ぎでございます。
その次の日も、そのまた次の日も、飲み、笑い、眠りました。
飲みつぶれる頼光と季武を介抱するは綱の役割事でございました。
貞光はというと、どこぞに姿をくらまし、夜となるとひょいと顔を出す程度であります。
日が経つにつれ、村人との交流もようよう深まり、金時とうら若き乙女「おりん」の仲も、なかなかに火照ってまいりました。
寝床では、金時ののろけ話を延々と聞かされ、気が病んでしまうと悲鳴をあげる季武がおりました。
ある夜のこと。
貞光は小屋に戻らなくなり、夜な夜な得物である大鎌を研ぐ音を響かせるばかりでありました。びゃー、という奇妙な悲鳴が聞こえます。
「頼光様。この勅命はどうにか、ごまかし、なかったことにはできないのでしょうか?」
懇願の調子で申したのは綱でございます。
「情が移ったか、たわけものめっ! と、言いたいところだが、お前の心はよーくわかる。そこでいろいろと考えていたんだ」
二人は様々な考えを出し合いますが、妙案が浮かぶことはございませんでした。
しかし、次の晩には全て、何もかも解決することとなるのであります。
燃えさかる炎。逃げ惑い、或いは抵抗する蜘蛛。村を包む阿鼻叫喚。
すべては、斬り殺された、一匹の子猫が原因でありました。
494 名前:誠の想ひ、雲隠れ 5/8 ◆BEIrg0g0o. 投稿日:2006/11/19(日) 23:22:00.38 ID:mWoZ4jPz0
――翌朝のことでございます。
連日続く宴の疲れか、頼光と季武は夕方まで目を覚ましませんでした。
小屋の中、綱は一人考えごとのようであります。
金時はというと、仲を深めあうため、おりんの住まう家屋へと足しげく通うのでございました。
「おりん。今来たぞ! 今日はどんな話をしようか」
「金時様……」
「どうした、おりん。元気がないぞ?」と、うずくまるおりんを覗き込んだところ、おりんの前には、小さな猫の亡骸が横たわってございます。
「こ、これは、どうしたものか!」と金時。
「早朝、村の者が見つけました。骸は星のたくさん見える処に埋めるつもりです……。村の者が、言ってました。旅の者の仕業だと……。
もちろん、私はそんなこと信じません。みなさん、良い人です……」
金時は込み上げる怒りと共に、仲間を疑うことの出来ない自分に気づくのであります。
さて――
村の広場はなかなかに面倒なことになっておりました。
村の子猫を斬り捨てた旅の者を許しておけるかと、村人が貞光に言い寄ってきたのであります。
外道者、犬畜生、様々な罵声を浴びせ、石を投げつける者も現れました。
結局のところ、子猫を斬り捨てたのは貞光であります。
何か、村人たちに因縁をつけさせ、争いを起こそうと企んでのことだったのかは、定かではございません。
「外道者か……。ふふふ、朝廷に従わぬ害虫共が言えたことか。覚悟したまえ。土蜘蛛ども」
それを機に、肩にかけた大鎌をとり、囲んでいた村人をばっさばっさと斬り捨てていったのは確かであります。
さて、ここからは少し本腰をいれて語らせていただきましょう。これからが本当の宴であるのでございます。
496 名前:誠の想ひ、雲隠れ 6/8 ◆BEIrg0g0o. 投稿日:2006/11/19(日) 23:22:57.89 ID:mWoZ4jPz0
この騒ぎを初めに知るのは金時でございました。家屋を出て、広場を見れば、なんと貞光が蜘蛛を舞うように斬り捨てていくではありませんか。
金時は、おりんに家屋の中へ隠れていろと命じます。そして、外に出、頼光たちへことの知らせをいたします。
小屋の中は驚き、混乱し、前後不覚に陥るところでしたが、ここで主人頼光。「致し方ない」と呟き、やつらを成敗いたせと号令をかけたのであります。
各々が得物を持ち外へ躍り出ますと、無数の村人、否、八本足の大蜘蛛共が襲い掛かってまいります。
まずは、季武。金色の矢を一本放つと、直線を描き、遥か前方からせまり来る蜘蛛を三匹ほど射抜きます。
そして、金時。大きなまさかりで大地を叩けば、大きな割れ目が出来、五匹程度、底へ落ちていきました。
綱の風のごとき疾さは、蜘蛛共にすら姿は見えず、前方の蜘蛛共は、銀閃の輝きと共にあれよあれよと伏していきます。
わらわらと湧き出る蜘蛛と、頼光らの戦いは壮絶なもので、夜通し続けられました。
しかし、明らかな力差でございました。人外の力を持つ頼光らにとっては、半ば一方的な征伐にあったのであります。
頼光は、えいや、えいやと逃げ惑う蜘蛛を斬り捨て、遠くへ逃げる者は季武が射抜いていき、金時は山中に逃げ込む輩を待ち伏せておりました。
ところ変わりまして貞光。
大鎌に滴る血の匂いに酔いしれながら、一つの家屋に入ります。
その中で、うずくまる小柄な蜘蛛を見つけ、大きく振りかぶります。
ざくり、と切れ味のよい音が響き、壁を鮮血が塗りつぶします。
振りかぶる刹那、虎の頭を持つ大蜘蛛が貞光の背後から襲い掛かったのでございます。
「早く逃げなさい。お前だけでも、遠くへ。遠くへ――」と大蜘蛛。
貞光は首を噛み切られたものの、背後の大蜘蛛を得物で貫いておりました。
貞光と村の長は共倒れとなったのございます。
小柄の蜘蛛が家屋から出ると、前には一人の男が佇んでおりました。その男、綱でございます。
498 名前:誠の想ひ、雲隠れ 7/8 ◆BEIrg0g0o. 投稿日:2006/11/19(日) 23:24:06.86 ID:mWoZ4jPz0
「私は今、決して許されざる行いを――。それは背徳――、私にはわかりませぬ。ただ、己が正義に従うまで――」
響き渡る悲鳴の中、途切れ途切れではありますが、綱が叫び申し上げます。
綱はゆっくりと歩みを進め、小柄な蜘蛛の元へと近づき、そうっと申し上げます。
「どうか、村からお逃げください」
綱の震える腕は細長い刀身を山中に指し示しました。
小柄な蜘蛛はその方向へと駆け出します。
「綱ァ! 貴様、何をしておる! 最後の一人ぞ! 追え! 斬り捨ていぃ!」
遠くでその様子を見ていた頼光は叫び、季武に蜘蛛を射るよう命じるのでございます。
季武は山中へ逃げる蜘蛛に狙いを定め、矢を射抜いたのでありますが、綱の目にも見えぬ斬撃により、矢は地に落ちるばかりでありました。
「えぇい! 役立たずめ。俺が行く」と頼光、蜘蛛の後を追っていきます。
「待てぇい! 逃してなるものか、待てぇい!」と静かな森が騒がしくなります。
頼光はもうすでに蜘蛛の背を捉えてございました。
徐々にその距離は縮まってゆき、捕まえるのも時間の問題でありました。
と、山中の大きな木の下に金時が待ち構えておりました。
「金時様ッ!」
「金時! そいつを斬り捨てぃ!」
金時にとって、それは最悪な状況でありました。
――金時! 斬れぃ!
この言葉には逆らえない。
――金時様。
されど、斬れない。もはや、何をすれば良いのか、わからない。
金時は目を瞑り、まさかりを高く振り掲げ、ゆっくりと振り落とし――
「金時……様?」
ことを呆然と眺めていたのは、金時だけではなかったようです。
「金……時……」
とくとくと流れ出る血は、山の斜面をこぼれて行くでもなし、ただ茶の土に染み込み、黒くしていくばかりでありました。
「おりん……。すまねぇ……」
おりんの脳天を叩き割ったまさかりは、力なく斜面を転がり、金時はひざまずき、ただうな垂れることしか出来なかったそうでございます。
499 名前:誠の想ひ、雲隠れ 8/8 ◆BEIrg0g0o. 投稿日:2006/11/19(日) 23:25:14.08 ID:mWoZ4jPz0
お話はここで幕を閉じてございます。
化け物退治とは聞こえはよいのですが、朝廷の支配下を拒む者達の隠語としてもあったそうでございます。
せめて、相手が本物の化け物だったのならば、それほどの後悔はなかったのでしょう。
お話では皆、形は違えど己の信念を貫いておりました。ただ一人、嘘をついた者がおります。
その者は一生の後悔を背負うことになったのでございます。
そこでわたくしめは思うのです。
なにごとも己の信念に従うべきだと。さもなければ、必ず後悔がまとわりつくのです。
何かお役に立てたでしょうか?
生き苦しく感じ、また悩む場面があったのなら、いつでもお越しくださいませ。
わたくしめはその悩みに応じ、お話を用意して、御待ちしております。
ささ、空は白ばみはじめております。
夜はもう明けるのでございます。
完