【 蜘蛛男 】
◆hqr855lGDg




197 名前:蜘蛛男(1/2) ◆hqr855lGDg 投稿日:2006/11/19(日) 09:54:10.91 ID:/HErLoQmO
昔々あるところに蜘蛛男という者がおった。
何でも手が四本、足が四本あるそうで村人はたいそうこの男を恐れた。
ある日この蜘蛛男が村役場の三役の身柄を要求する札を立てた。
もし身柄を引き渡さなければ、手下の毒蜘蛛に村を襲わせるとの脅し付きで。
この要求を見た村人達は騒ぎ始めた。
よりによって村を牛耳る三役の身柄である。
蜘蛛も怖いが三役も怖い。
しかし、誰よりも困ったのは三役である。
すぐに会議を開き約三時間後、
三役は蜘蛛男討伐を村一番の強者、権兵衛に託した。
権兵衛はすぐに山にある蜘蛛男の屋敷に向かう。
「願おう」
権兵衛が声を張り上げる。
「はい、何でしょう」
小柄な男がせかせかとやって来た
「我は山根村の権兵衛である。蜘蛛男とお手合わせ願いたくて馳せ参じた」
「蜘蛛男なら当方の主人が倒しましたよ」
「いや、そんなはずは……」
「何だね、お客かい?」
奥から恰幅の良い中年男が現れる


198 名前:蜘蛛男(2/2) ◆hqr855lGDg 投稿日:2006/11/19(日) 09:54:49.34 ID:/HErLoQmO
「はい、山根村の権兵衛さんです」
「そなたが主人か?」
「そうですよ、蜘蛛男を倒したのも私です」
「そうでしたか、失礼しました」
権兵衛は村に帰ると自分が蜘蛛男を倒したと嘘を触れ回り褒美を得た。
その三日後、前と同じま札がまた立った。
権兵衛は追放され、次なる刺客が蜘蛛男のもとに送り込まれた。
しかし、すぐに帰ってきて三日後にまた立て札が……
――それから数ヶ月、村には人がいなくなった。
遣わされた者はことごとく帰ってきては結局追放され、人がいなくなると三役も逃げ出した。

誰もいないはずの村で話し声が聞こえる。
「親分やりましたね。村まるごといただきですよ」
「馬鹿な村だよなぁ」
「人が二人と大きな布さえあれば誰でも蜘蛛男ですからねぇ」
「ふふふ」

そこに立っていたのは蜘蛛男の屋敷にいた二人だった。






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