【 決戦! 】
◆bhXaIQ6V5c




25 名前:NO.6 さよなら (1/3) ◇hqr855lGDg 投稿日:06/10/29 22:38:47 ID:nOeZ2hNy
携帯の着信音が鳴る。最近流行の軽快なポップスだ。私は、寝ぼけ眼をこすりながら画面を見る。健介からだ。
「もしもしぃ健介?」
「…………」
「お〜い? どしたの?」
「…さよなら」
「えっ?」
「ツーツーツーツー」
突然かかってきた電話。覚悟は出来ていた。あとは、次の電話を待つだけだ。
それから三時間程たっただろうか。彼との思い出に漬かっている私に電話がかかってきた。
「はい、山岡です。どちら様ですか?」
「防衛庁兵器室室長の田上です」
来た。緊張が高まる
「吉村健介の上司の方でしたよね?」
「はい、まあ。それで誠に残念なんですがその…、吉村健介が亡くなりました」
「はっ? 冗談はよして下さい」
我ながら白々しく思いながらもそう言う。
「残念ながら本当です…」
「なんで、なんで健介が?」
「こちらも状況が分からないんです。だから、出来れば今すぐあなたにお会いしたいんです。市ヶ谷の防衛庁に来てもらえないですか?」
「分かりました。いますぐ行きます」


26 名前:NO.6 さよなら (2/3) ◇hqr855lGDg 投稿日:06/10/29 22:39:03 ID:nOeZ2hNy
私は電話を切ると化粧もせず急いで市ヶ谷に向かった。電車に揺られながらひたすら健介の事を考えていた。
市ヶ谷の防衛庁に着くとそこ立っていた中年の男が私に近付いてくる。
「私が田上です。行きましょう」
門をくぐると全景が見えてくる。ここが健介の職場だったのか。私は想像以上の広さに戸惑いながらも田上の後を付いて行く。しばらくするとどこかの建物に入り、応接室のような所に通された。
座るなり田上が話始める。
「実は吉村君は過激派に誘拐、殺害されたんです。彼は新兵器を開発している最中でした。どんな兵器かは言えませんが画期的なものでした。おそらくそれで…」
「そんな…」
「ところであなた健介君から電話がかかってきましたね」
「はい、そうですがなんでそれを?」
「そんなことはいいんです。彼は何か言っていました?」
「さよならとだけ」


27 名前:NO.6 さよなら (3/3完) ◇hqr855lGDg 投稿日:06/10/29 22:39:21 ID:nOeZ2hNy
すみません、田上はそう言い席を立ち今はどこかに電話している。きっと健介を殺した仲間にだろう。
電話から帰ってきた田上は突然発狂したかのように笑う。
「はははははっ、馬鹿め。こんな女にパスワードを教えるとはな。おおっ小娘いいこと教えてやろう。俺は生憎スパイなんだわ。そして今お前が言った言葉は世界を滅ぼす程の新兵器の設計図を見るためのパスワードなんだよ」
田上は話終わると胸ポケットからナイフをおもむろに取り出す。
そこに強烈なサイレンが響き人が流れ込む。田上は見事に罠に嵌まった。私のポケットには盗聴器が入っていた。

すみません、田上はそう言い席を立ち今はどこかに電話している。きっと健介を殺した仲間にだろう。
電話から帰ってきた田上は突然発狂したかのように笑う。
「はははははっ、馬鹿め。こんな女にパスワードを教えるとはな。おおっ小娘いいこと教えてやろう。俺は生憎スパイなんだわ。そして今お前が言った言葉は世界を滅ぼす程の新兵器の設計図を見るためのパスワードなんだよ」
田上は話終わると胸ポケットからナイフをおもむろに取り出す。
そこに強烈なサイレンが響き人が流れ込む。田上は見事に罠に嵌まった。私のポケットには盗聴器が入っていた。

事の顛末はこうだ。健介は確証は無いが田上がスパイだとと薄々気付いていた。だから健介は自分が死ねば私がきっと田上に呼ばれると予想し、盗聴器を渡した。一世一代の大勝負、私達は見事に勝利した。さよならはフェイクのパスワードだった。

狂った田上が突進してくる。私はよけなかった。薄れゆく意識のなか
『さよならは別れの言葉じゃなくて再び逢うまでの遠い約束』
健介が好きだった歌の一節が聞こえた気がした。
今はただ早く健介に逢いたい

5 名前:NO.2 「決戦!」 (1/6) ◇bhXaIQ6V5c 投稿日:06/10/29 18:46:47 ID:6Wo42FwO
 絶海の孤島の砂浜で、対峙する影が二つ。
 一人は長い棒を持った少女。活発そうな顔つきで、腰まである髪を後ろで纏めている。
年のころは十四〜五歳で、可愛らしくも動きやすい、そんな格好をしている。そしてその
少しあどけなさの残る顔は、少々怒りで歪んでいる。
 もう一人は二挺の拳銃を持った少年である。理知的な顔つきで、サラサラの短い髪を風
になびかせている。年のころは同じく十四〜五歳で、動きやすさを重視した格好をしてい
る。少年の顔は、少女とは対照的に涼しげなものだ。

 静寂。波と風の音以外は何も聞こえない。
 その静寂を破るように、少女が言った。
「今日こそ、決着をつけさせて貰うわ! 悠助!」
 手にした棒をひゅひゅんっと旋回させ、棒を脇に挟み、構える。堂に入った構え。その
構えを見ただけで、少女が只者でないことが窺える。
 少女は俗に言う『魔法少女』であった。手にした棒『アメイジングロッド』により、様
々な奇跡を起こし、数々の妖魔を打ち滅ぼしてきた歴戦の勇士である。

 そんな少女に対し、悠助と呼ばれた少年も動いた。
「そうだね、麻美ちゃん。いい加減僕も、君と遊ぶのは飽きてきたんだ」
 少年が静かに言って、手にした銃を手の中でくるくるっと回し、構える。こちらも只者
でない雰囲気を漂わせる、隙のない構え。
 少年は魔法云々ではなく、『退魔師』である。手にした二挺の拳銃『レイザー&フォー
チュン』で、強大な妖魔を数多く祓ってきた、こちらも歴戦の勇士である。


6 名前:NO.2 「決戦!」 (2/6) ◇bhXaIQ6V5c 投稿日:06/10/29 18:47:12 ID:6Wo42FwO
 またも静寂。しかし前とは違う。あたりの空気が重くなった。
 二人が出方を窺っている。どちらが先に仕掛けるかで、戦術は大きく変わってくる。そ
うしてしばらく対峙していると――動いた。
 だんっ!!
 砂浜が軽く抉られる。猛烈な加速。先に動いたのは麻美であった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
 気合とともに悠助に向かって突進する。そのスピードは尋常ではない。まさに一陣の風
となって必殺の一撃を繰り出す。が、
「甘いね」
 がががががががががんっ!!
 悠助の左右の銃から猛烈な勢いで弾丸が吐き出される。いくら人間には殺傷力の低い退
魔弾とはいえ、当たれば相当なダメージが来る。そんな弾丸の雨を、麻美はなんとかロッ
ドで防ぐ。
「くぅっ!」
「へぇ。今のを防ぐなんてなかなかやるね。でも、まだまだだよ」
 そう言い放つと、悠助は間合いを取りつつ、またも連射。
 唸りをあげて迫りくる弾丸の嵐を、麻美はとっさに転がり回避する。さっきまで麻美が
いた地点の砂浜に、無数の弾痕が穿たれる。それを見た麻美がゾッとしながら抗議する。
「ちょっと! あんなのに当たったら死んじゃうじゃない!」
「大丈夫。死にはしないさ。ちょっと骨が砕けるかもしれないけどね」
 笑顔でしれっと言ってのける。こいつもいい性格をしているようだ。


7 名前:NO.2 「決戦!」 (3/6) ◇bhXaIQ6V5c 投稿日:06/10/29 18:47:35 ID:6Wo42FwO
 かっと頭に血が上る麻美。こいつと相手をしていると、なぜか必要以上に熱くなってし
まうのはなぜだろうか。こればっかりは、よくわからない。
 しかし、冷静にならなければ。先代魔法少女の言葉が浮かぶ。――熱くなるな。熱くな
ると攻撃が一直線になる。そうなると、負けは確実だ――。
 (わかってるよ。おばあちゃん)
 麻美は集中し、頭に上った血を静めた。しかし、相手との差は歴然としている。仕方が
ない。アレを――使おう。大丈夫だ。彼ならば死ぬことはないだろう。
 そう決心すると、麻美は静かに、ロッドを構えた。

「悠助!」
 不意に呼ばれたので、悠助は少し驚いたがすぐにもとの笑顔に戻る。
「なんだい? 麻美ちゃん」
「認めるわ。あなたは強い」
「へぇ。それはどうも。で、どうする? 降参するかい?」
「いいえ。だから私も、本気でいかせてもらうから。はっ!」
 ロッドに力を注ぎ込む。あたりに砂塵が巻き起こり、あわてて悠助は距離をとった。
 (あれはなんだ? 魔法を使うつもりか? しかし俺には魔法は通じないぞ?)
 悠助は対妖魔用に、魔法による攻撃は障壁を瞬時に張って回避できるよう訓練されてい
るのだ。だからよほど巨大な魔法か知覚する前に着弾する魔法以外は一切彼に通用しない。


8 名前:NO.2 「決戦!」 (4/6) ◇bhXaIQ6V5c 投稿日:06/10/29 18:47:52 ID:6Wo42FwO
 その疑問に答えるように、麻美が口を開く。
「悠助! あなたにアメイジングロッドの真の力、見せてあげるわ!」
 一瞬の閃光。そして砂塵も収まる。そして麻美の手にしたロッドは、その姿を変えてい
た。長い柄はそのままに、先端部に厳かな装飾の刃が付いている。それはまごうことなき
槍そのものであった。
「これぞアメイジングロッドの真の姿! 魔法少女には大変似つかわしくないと封印され
てきた、その名も! アメイジングランサーよ!」
 裂帛の気合とともに、麻美がその名を呼ぶ。そしてそのまま、麻美は悠助に向かって駆
け出した。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 速い。今までとは比べ物にならないほどの速さ。あっという間に間合いに入り込むと、
烈風の如き突きを繰り出した。
「くぅっ!」
 悠助は咄嗟に、右手の銃、エビルレイザーで受ける。その衝撃は凄まじく、とても一本
の腕では支えきれなかった。体勢が崩れる。その隙を逃さぬように、槍を回転させて更な
る追い打ちをかける。穂先で突き、払い、薙ぎ、柄尻でも同様に突き、払い、薙ぐ。嵐の
ような連撃に、反撃する余裕もない。そして――
「はあっ!」
 気合とともに振り抜かれた柄尻が、悠助の顎にヒットする。
「がッッ!!」
 悠助はきれいな放物線を描きながら飛んでいき、頭から砂浜に着地した。そしてそのま
ま動かなくなる。
「はぁ……はぁ……」
 麻美は悠助の元へ向かう。奇襲を受けないように警戒しながら、ゆっくりと顔を覗く。
悠助は息を切らせながら笑っていた。今までの笑顔ではなく、心からの笑み。その表情に、
思わずどきりとする。


9 名前:NO.2 「決戦!」 (5/6) ◇bhXaIQ6V5c 投稿日:06/10/29 18:48:11 ID:6Wo42FwO
「ははっ……ついに……負けちゃったか……」
「そ……そうね。私の……勝ちみたいね。」
 麻美は顔を赤くしながら、そう答える。その様子に気付いているのか気付いていないの
か、悠助は笑顔のままで、続けた。
「もう……君の仕事の邪魔は……しないよ……。存分に、暴れてくれ」
 その最後の言葉に麻美はムッとしながらも、悠助に向いて恥ずかしそうにこう言った。
「そういう約束だったんだけど……今度からは……その……」
「?」
「い、一緒に……やらない?」
 その突然の申し入れに、少し驚きの表情を見せたが、悠すぐに助は更なる笑顔を見せ、
苦笑しながら、答えた。
「……喜んでやらせていただきますよ。魔法暴君様」
 その言葉に麻美は、悠助の顔面に正拳を叩き込んだ。


10 名前:NO.2 「決戦!」 (6/6完) ◇bhXaIQ6V5c 投稿日:06/10/29 18:48:32 ID:6Wo42FwO
 数日後――
 今宵も妖魔が暴れ狂う。民家を破壊し、作物を荒らす。
 そんな妖魔を追う、二つの影。
「ちょっと! あんた遅れてるわよ! 陣形を崩さない!」
「はいはい。まったく横暴な魔法少女だ」
「なんか言った!?」
「いえいえ。なにも?」
「……なにか引っかかるけど、まぁいいわ。悠助は向こうから行って! 私はこのまま追
い詰めるから!」
「了解!」

 この先どんな強大な敵が現れても、二人なら、やっていける。
 そう、この二人なら――


END



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