【 天使・悪魔・VS自分 】
◆G98.AIULu.




2 名前:天使・悪魔・VS自分(1/3) ◇G98.AIULu. 投稿日:06/10/28 16:46:41 ID:dp/kz48B
 彼女は今、人生における非常に重要な場面に立たされている。
 彼女が迫られているのは、ある決断。
 一歩前に出て、目の前にいる男の人に、その手に持つものを渡すべきかどうか、彼女は
 その決断を迫られてる。
 どうすべきか。果たして、ここで渡してしまっていいのだろうか。
『駄目だ。そんなことしたら、君は絶対に後悔することになるぞ』
 声が聞こえた。
『今のままを、このままの状態を続けるほうがいいに決まってるだろ? それを自分から
崩すようなことしてどうするんだ』
 確かに。彼女は、後悔するかもしれない。なぜなら、きっとこれは間違った行為だろう
 から。
『そんなことないわよ。むしろここで止めちゃったら、そっちの方がきっと後悔するわよ。
やると決めたらすぐ行動するのよ!』
 新たな声が聞こえた。
 確かに、その考えも正しいかもしれない。
 よく、やらずに後悔するよりは、やって後悔したほうが良いと言う。
 やはり勇気を出して一歩前に踏み出すべきなのか。そう心が片方の意見に傾きかけてい
 たところで、再び頭の中で声が響いた。
『騙されたら駄目だぞ。目の前の彼の顔を良くみてみろ。困った顔をしてるじゃないか。
いつまでも考え込んでいたら彼に迷惑になる。そもそも、こんなところまで来たのに迷っ
ているということは、止めておいたほうが良いということなんだよ』
 言われた通りに目の前の男を見てみた。
 確かに声が言うように、長い間彼女が悩んでいたせいで、彼はちょっと困った顔をして
 いた。
 これ以上悩んでいたら、確実に迷惑になってしまう。
 早く判断しなければならない。

3 名前:天使・悪魔・VS自分(2/3) ◇G98.AIULu. 投稿日:06/10/28 16:47:22 ID:dp/kz48B
 だというのに、彼女は決断をなかなか下せずにいた。
 一歩前に出れば、一時的には幸せな気分になれるかもしれない。けれど、きっといつか
 は後悔するだろう。
 けれど、後悔するのが分かっていても、幸せが一時的なものだとしても、その幸せを感
 じていたいという気持ちもあった。
 なかなか結論を出せないのは、この二つの考えが拮抗し、ぶつかり合うせいであった。
『いいかい? こんなことをして、君になんの得があるんだ? 良く考えてみろ。悪い方
へ向かうのは目に見えてるじゃないか』
 悪魔が言う。
『やってもないのに、そんなこと分からないでしょ!』
 天使が言う
『いいや、分かりきってる。思い込みで自分の意見を押し付けないでくれ』
『勝手な思い込みをしているのはアンタの方でしょ』
 悪魔の言葉に、天使が言い返す。
『いいかい? 幸せは一時的なものだが、後悔はその後ずっと続く。そんなもの、わざわ
ざ天秤にかけるまでもなく結論は出るだろ』
『たとえ後に後悔がやってきたとしても、その前に得た幸せは確かなもの。かけがえのな
い素晴らしいものよ。それがあるのなら、たとえ後悔してでも幸せを得る価値はあるわ』
『そんなものはまやかしだ』
『まやかしなんかじゃないわよ!』
 双方共に引き下がるつもりはなさそうだ。
 もともと相反する意思の表れ。どちらかが妥協するなどという結末はあり得なかった。
『もう、埒が明かないな。僕たちじゃ結論は出せれない』
『そうね。結局はあなたが、好きなのかどうかってことになるわ』
 そうして、悪魔と天使が戦いをやめて、彼女に問いかけた。
『好きなの? 嫌いなの? どっちなの?』

4 名前:天使・悪魔・VS自分(3/3) ◇G98.AIULu. 投稿日:06/10/28 16:47:54 ID:dp/kz48B
 その問いかけが、最後の後押しとなった。
(えっと、好き……かな……)
 そう、彼女は心の中で返事をした。
『だったら、もう迷うことなんてないじゃない! さぁ! 好きなんでしょ! 欲しいん
でしょ!』
 悪魔の囁き。
 ダメ押しの一言だった。軍配はあげられた。
 彼女は、ゆっくりと男の人に手に持っていたものを差し出した。
「これ下さい」
「105円になります」
 差し出したチョコレート菓子を見ながら、彼女はつかの間の幸せを手に入れ、そして後
 悔することとなる。

「アンタ、最近ちょっと太った?」
「え゜?」

おわり



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