【 ベタな薬 】
◆bhXaIQ6V5c




21 名前:No.05 ベタな薬 (1/1完) ◇bhXaIQ6V5c 投稿日:06/10/23 00:56:47 ID:UU24Fyn7
 「やったぞ! ついに完成だ」
博士がなにやら怪しげな液体の入ったフラスコを振り回しながら歓声をあげた。
「おめでとうございます博士。で、なにが出来たんですか?」
と若い研究員が博士に訊いた。すると博士は事も無げに、
「透明人間になれる薬だよ」
との答え。研究員はさほど驚かず、
「うわぁ、なんともベタな薬を作りましたね博士」
淡白な反応。その言葉にカチンときた博士は、
「信じてないな? では私自ら飲んでやろう!」
言うなり博士は一息で薬を飲み干した。そして全裸になる。
「博士! 汚いもん見せないで下さい! 訴えますよ!?」
研究員の心ない一言に博士が傷ついていると、すうっと体が消え始めた。
「マジだったんですか博士。スゴイじゃないですか」
「キミはなかなかに酷いこと言うよね」
そんな会話をしている間にも体はどんどん消えてゆく。
そして遂に全身が消え去った。きれいさっぱり。
「ふふん。どうかね?」自身たっぷりに博士が言う。それを見た研究員は言った。
「スゴイです博士。でもなんで頭は消えてないんですか?」
体は完全な透明になっているが、頭はそのままだった。はっきりいってブキミである。
すると博士は、キッパリと言った。
「だって全部消えたら気付いて貰えないじゃん」
「意味ないじゃないですか博士」
と、研究員は深いため息をついたのだった。




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