【 努力の結果 】
◆4kNJblDpUo




132 名前:努力の結果 1 ◆4kNJblDpUo 投稿日:2006/10/14(土) 17:34:45.92 ID:syttlF/T0
「酒を避ける。ガッハッハ!」
 宴会中。みんな酒を飲み続け泥酔状態だ。
「一番! 平社員ながら歌います」
 みんなのテンションは上がっていく。やっぱし騒ぐことは楽しい。
「酒が似合う男の人って格好良いよねぇ。結婚したいね、そんな人と」
 その瞬間俺の目つき、いや男性社員全員の目つきが変わった。
 その声の発信元は、この会社一の美人で、男性社員のマドンナ、山本さんであった。
 さっきまでの馬鹿騒ぎが突然終わり、自分の席に戻って酒を飲みだす社員達。
 当然視線は山本さんだ。俺も懸命に視線を送りつつ、少しジョッキを上下させて飲んでみる。
 山本さんは何食わぬ顔で、女性社員と話していた。
 
――あの衝撃の宴会から数週間。会社内は空前の酒ブームと化していた。
「お前、どのくらい飲めるようになった?」
 同僚に声をかけられる。こいつはライバルだな。こういう奴には……
「いや、まだ全然飲めなくてさ。いま修行の身だよ」
「全然飲めないのか。それじゃ山本さんは無理だな。アッハッハ」
 馬鹿め。俺は家で鍛錬を積み続け、ドラム缶一本まるまる飲むことに成功したのだ。
 俺は周りの奴を油断させて虎視眈々と狙っていくのさ。
「今日飲みにいかないか? でも飲めないのか。アッハッハ」
 やってろやってろ。俺なんか家で地獄のようなトレーニングを積んだんだ。
 今となっても、あれは苦い思い出だ。


133 名前:努力の結果 1 ◆4kNJblDpUo 投稿日:2006/10/14(土) 17:35:27.88 ID:syttlF/T0
――そう、あのトレーニングは辛かった。
 まず、胃袋を鍛えなくてはいけない。だから俺は水だけで腹を満たす訓練をまず行った。
 水を飲むと、腹は膨れる、しかし脳は空腹信号を出している。しかも吐きそう。
 とんでもない悪循環が生まれだす。
 そして、山本さんに飲みっぷりを披露しているとき、トイレに行くのもまずい。
 俺はトイレに行くことも自制した。二時間も経たないうちに俺は気を失いかけていた。
 しかしこれも山本さんを、俺の手中に入れるため。俺はこのトレーニングに耐えた。
 次は、実践を想定して水を酒に変えてみた。
 あの悪循環に酒の頭痛が。胃痛がぁぁぁ!!
 俺はのた打ち回り、遂には病院に行った。そこで医師からの一言。
「栄養失調。水分過剰摂取。二日酔い。便詰まり。一体何やってたんですか?」
 俺の体にそんなに問題がでてるとは。彼女ゲットを目指してたらなりましたとは医師には言えない。
「サバイバルを少々……」
 その瞬間、医師に汚らわしいものを見る眼で見られてしまった。
 この医師の嘲笑具合……もしやこの医師も山本さんを……?
「帰らせていただきます!」
「君! まだ診察終ってないし、何処行くんだね?」
「敵の敵は敵だ。語ることはない」
 そう呟くと俺は病院を去っていった。やはり精進は必要だ。
 山本さんに社員はおろか、住民まで狙ってると分かると、俺はトレーニングに一層励んだのであった。

134 名前:努力の結果 3 ◆4kNJblDpUo 投稿日:2006/10/14(土) 17:36:03.63 ID:syttlF/T0
――「今日社員全員で飲み会だってよ」
「マジ? 俺の飲みっぷり山本さんの前で発揮しちゃうよ」
 社員達の話し声が聞こえる。キタ! 俺の地獄のトレーニングの成果を見せるときが。
 そして宴会場。いや、決戦場と言ったほうが正しいか。
 ついに、最後まで倒れなった一人が山本さんを……
 男性社員の間に緊張感が流れる。山本さんは普通に笑い、女性社員と話していた。
 そして、お店のオバサンが酒を運んできた途端、勝負は始まった。
 続々と投入されてくる酒。男達は次々と胃の中に消化していく。
 一時間も経つと、残ってる社員は数人になった。
 山本さんが、羨望の眼で見つめている……ここでケリをつける!
「ウォォォォォォ!!!!」
 俺はそう叫ぶと一気に酒を、口に流し込んだ。
 残ってた社員も俺に続いて口に流しこむ。頼む、倒れてくれ。
 そして、この前俺に話しかけてきた社員が残っていた。
 もうお互い酒は飲まない。倒れたほうが負けだ。
「お前、この前飲めないって……」
「能ある鷹は爪隠すのさ」
「フッ……やってくれる……」
 遂に俺以外の社員全員が倒れた。俺は、この瞬間山本さんを手に入れた!!
 頭の痛みや、胃痛はもう気にならず、千鳥足で山本さんに近づく。
「わぁーすごい飲みっぷりでしたね」
「山本さん。この前、酒が似合う男が良いといってましたね」
「えぇ。男らしくて格好良いですものね」
「俺みたいな酒豪は、酒が似合うというんじゃないんですか?」
「え? 私が格好言いと思うのは鮭が似合う男ですよ」
 その瞬間目の前が真っ暗になった。次は漁師の訓練か……
 終



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