【 冒険への扉 】
◆2glaAo60g2




83 名前: ◆2glaAo60g2 投稿日:2006/10/01(日) 23:33:04.32 ID:Lau78gpw0
 僕はさっそうと歩いているんだ。どこを歩いているんだろう。
 あいたっ! 体をぶつけちゃった。壁? これ壁だったんだ。気が付かなかったよ。
でも大丈夫、こうやって壁づたいに歩いていけばいいんだ。この角を曲がって……また壁
か。おや? ノブがある。ドアがあるんだ! よし、開けよう。うんしょ、うんしょ。う
ーん、開かない。このやろー開け、開け、開け! おっとっと。なんだ、押す方のドアだ
ったのか。
 
――日が暮れようという時刻、一人の男は迷宮を彷徨っていた。


 見渡す限り何の変哲も無いな。…………。……やばい! 壁が動いて来る! 罠? 前
後左右全部! 迫ってくる! どうしよう、どうしよう。天井もだ! 落ちてくる! 潰
される! ちくしょう! くっそー! くっそー! 
 低い体勢になりながらも前の壁を必死で押し続けた。壁は抜けて、すぐにそこからくぐ
り出た。どうやら壁の一部分だけは別の材質でできていて、そこが抜けたみたいだ。屈ん
でて、良かった。

――柔軟な者だけが探索を続けられる。それは扉を開く者だ。


 はあ、危なかった。この中は罠だらけじゃないか。いったいどうなっているんだ? あ
れ?箱! 箱だ! 宝箱かな? 開けてみようかな? でもまた罠かも。トントン……
……。叩いてもわかんない。持った感じでは何かが入っているようだけど……。……開
けようかな? でももし罠だったら………怖いな。いや、やっぱり開けよう! 開ける
ぞ! せっかくここまで来たんだ! それ!
………すごい! 宝石に金貨もある! やったー!!

――つくる者がいれば、開くものもいる。扉を開くことは困難でもあり、また容易だ。


84 名前:品評会作品冒険への扉2/2 ◆2glaAo60g2 投稿日:2006/10/01(日) 23:35:04.54 ID:Lau78gpw0
 後は戻るだけだな。と言ってもさっきの道はもう通れない。それに、ほかに出口も見当
たらない。たぶん、ここまでなんだろうな。……普通の人ならね。でも、僕は違う。ここ
に柱があるから、もしかしたら……。この柱にしっかりとロープを結んで、そのロープを
体にもきつく巻いて……。よし、引っ張るだけだ……! 倒れろ! 倒れてくれ! 馬鹿
な考えかもしれない。でもきっと、うまくいく気がするんだ!
 ズドーン。柱は倒れ、迷宮は崩壊しだした。眩しい光が差しそこはステージになり、大
勢の民衆の歓声が聞こえる………


 我に返ると、観客が拍手をしていた。道端ではさっきまでパントマイムをしていた大道
芸人が丁寧にお辞儀をしていた。
 さて「僕」の冒険は成功し、自分の居場所に帰れたのだろう。私も帰るとしよう。
 夫と子供たちの夕飯、つくらなくちゃね。今日は何をつくろうかな?



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