【 幸福 】
◆AA6iVABQXY




966 名前:幸福 ◆AA6iVABQXY 投稿日:2006/09/24(日) 23:59:13.55 ID:Mr9yUBdu0
 疎ましい時間を刻んでいるメトロノームの音に寝付けないでいる。どうやら明日はすぐに起きれない。
少し苛立ちながら寝返りを打つが眠れない。
目を閉じて闇を見ているとだんだん眠くなってきた。

いつの間にか辺りが草原になり、少し驚く。辺りを見回すと小さな丘の上に小屋を見つけた。
ドアの前に立ち、ノックする。すると綺麗な女の人が中から出てきた。
「はい? 何でしょうか?」
下心で僕の血の流れる速度が速くなった。
「・・・・・・いえ、始めてこの辺りに来たものですから・・・」
「とりあえずおあがりなさいな」
そう言うと、僕は少しばかりの感謝を口にして彼女の家に上がった。
「どうぞ」
そういって僕にお茶を出す。香りがとてもいい。不思議なことに急に喉が乾いてきたので飲んでみる。
美味い。今まで飲んだことが無いような味だ。
「あらあら、そんなに美味しいのですか?」
フフフ、と笑っている彼女を見てやっと僕は下品にがぶがぶ飲んでいることに気がつく。
少し顔を赤らめる。
「顔が赤いですよ」
こんな小恥ずかしい会話をしている僕は幸せだった。
とても、とても、とても幸せだった。

968 名前:幸福 ◆AA6iVABQXY 投稿日:2006/09/24(日) 23:59:43.57 ID:Mr9yUBdu0
「・・・・・・・・ん?」
目を開けるといつもの暗い部屋に戻った。まだあのうるさいメトロノームが動いている。
現実を憎むと下唇を噛んだ。もっとあそこに居させてくれてもいいじゃないか。
ふと急に思った。ここにいる僕は幸せなのだろうか。例え不幸であってもこれから
幸せになれるのだろうか。ずっと考えていても分からない。
例え1日使っても1年使っても一生をつぎ込んでも分からない話だろう。

  考え込むのをやめた僕はまるで魚のように、
彼女を探すために目を閉じて暗い闇のプールを泳いでいる。



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