【 語られざる歴史 】
◆aDTWOZfD3M




706 名前:語られざる歴史1/4 ◆aDTWOZfD3M 投稿日:2006/09/24(日) 16:05:09.64 ID:DVkKIFGZ0
 むかしむかし、あるところに一人の王さまがいました。王さまには、三人の
王子さまがいました。そして王さまは、そのうちだれをつぎの王さまにしよう
か、ずっとなやんでいたのです。
 そこで王さまは、だいじんとそうだんして、三人の王子に「王さまがめをさ
まさなくなってしまった」といううそをついて、王さまをおこすもっともうま
いほうほうをかんがえついたものをつぎの王さまにするときめました。
 (世界むかしばなしシリーズ『かしこい王子』より)

 《史実》 
 とある王国の王宮で、王が秘密の相談事のため、重臣である右大臣を王の私
室に呼び出していた。
 「右大臣はもう来ておるか?」
 「はっ! 陛下、ただ今参上いたしました。して、一体何の御用でござい
ますか?」
 「うむ、実は跡継ぎの問題で相談したい事があるのだ。なにせ儂の三人の息
子は、どいつもこいつもバカ息子ぞろい。一体どいつを世継ぎにして良いか、
全く見当がつかんほどじゃ」
 「確かに……」
 「第一王子は思慮に欠け、第二王子は性格が傲慢で、第三王子に至っては遊
び暮らすしか能の無いとんでもない放蕩息子。このうち一体誰を世継ぎにすれ
ば良いのだろうか……」
 「それでは陛下、三人の殿下を試してみて、最も優秀な者をお世継ぎとなさ
れればよろしいのでは?」
 「それは良いが、一体どう試すのだ?」
 「それはこうです……」
 そして右大臣は、王子たちに「王が原因不明の病により目を覚まさなくなっ
てしまった」と嘘をつく、という提案をした。王はその間寝たふりをして王子
を観察し、最も良い対策をなした者を跡継ぎにすれば良い。王もそれに賛成し
て、二人は細部を詰めるため、作戦を練った。
 そのころ、怪しい影が隣の部屋からそっと抜け出していた……

707 名前:語られざる歴史2/4 ◆aDTWOZfD3M 投稿日:2006/09/24(日) 16:05:54.25 ID:DVkKIFGZ0
《史実》
 王宮を出た人影は都の裏町にあるいかがわしい酒場に入っていった。
 「殿下、陛下と右大臣様がこれこれこういう話を……」
 「ほほうなるほどな……よし、これで俺が次の王になるのは決まったような
ものだな! ……それにしても昨日の夜の君はとても可愛かったよ、マリー」
 「んもうっ……殿下ったらぁ! イヤですわぁ、そんなこと人前で言われる
のって、とっても恥ずかしいんですよぉ!」
 「ごめんごめん。でも、おかげで助かったよ。これからもよろしくね」
 「はぁいわかりましたっ! それでは失礼いたします」
 マリーが下がると、彼らの様子を見ていた一人の男がつぶやいた。
 「さすが都一のプレイボーイ第三王子殿下、陛下付きの侍女までも虜にして
おられるとは……」

まずいちばんとしうえの王子がためされることになりました。だいじんが王
子に、「王さまがめをさまさない」とうそをつきました。王子はおしろのまほ
うつかいをよんで、王さまがめをさますようにまほうをかけさせました。しか
し、王さまがめをさますことはありません。王子はおこってまほうつかいをし
ばりくびにしてしまいました。
          (世界むかしばなしシリーズ『かしこい王子』より) 
  
 翌朝、さっそく右大臣が王子を試すために嘘をついた。
 まずは第一王子は……
 「なにっ! 父上が目を覚まさない病に?」
 「左様でございます殿下。いかがいたしましょう?」
 「ううむ……宮廷魔術師を呼べ! 父上が起きるよう魔法をかけるのだ!」
 宮廷魔術師は必死に呪文を唱えたが、当然王は目を覚まさない。第一王子
は烈火のごとく怒った。
 「役立たずめっ! 貴様なんぞクビだ!」
 「ひえぇ! お許し下さい! 家に帰れば十を頭に四人の子どもが……」
「うるさいっ! クビだっ! クビだー!」

708 名前:語られざる歴史3/4 ◆aDTWOZfD3M 投稿日:2006/09/24(日) 16:07:07.73 ID:DVkKIFGZ0
  つぎに、にばんめにとしうえの王子がためされることになりました。だい
じんが王子に、「王さまがめをさまさない」とうそをつきました。王子はおし
ろのおんがくかに、王さまがめをさますような、とても大きなおとをださせま
した。しかし、やっぱり王さまがめをさますことはありません。王子はおこっ
ておんがくかをしばりくびにしてしまいました。
           (世界むかしばなしシリーズ『かしこい王子』より)
 
 《史実》
 次に第二王子は……
 「なにっ! 父上が目を覚まさないと言うのか?」
 「左様でございます殿下。いかがいたしましょう?」
 「なあに、この俺様に任せておけ……おいっ、宮廷音楽家を呼べっ!でかい
音を立てさせれば、父上もお目覚めになられるだろうよ……オレってあったま
良いー!!」
 宮廷音楽家は城中の楽器を鳴らし、さらに都の鐘という鐘を鳴らしたが、王
が目を覚ますはずなど、ありはしなかった。
 「さっぱり目を覚まさんではないか! この無能者めが!」
 「もうこれ以上大きな音は出せませんよ。大体、殿下がこうしろと……」
 「うるさいっ! 俺が間違ったことを言うはずがないだろ! こうなったのも
全てお前の責任だ! この城を出て行け!」
 「ひえぇ! お許し下さい! 家に帰れば十五を頭に五人の子どもが……」
「うるさいっ! クビだっ! クビだー!」

 さいごに、すえっ子の王子がためされることになりました。だいじんが王子
に、「王さまがめをさまさない」とうそをつきました。するとすえっ子の王子
は、「これは王さまがわたしをためしているにちがいない」とみぬきました。
 王子は、けらいに大きなオノをもってこさせました。そして大きなこえで、
「王さまがねむったままでは、くにじゅうのひとにめいわくがかかる。いっそ
のこと、王さまのくびをきってだれかべつのひとを王さまにしよう。」
           (世界むかしばなしシリーズ『かしこい王子』より)

709 名前:語られざる歴史4/4 ◆aDTWOZfD3M 投稿日:2006/09/24(日) 16:08:32.39 ID:DVkKIFGZ0
 《史実》
 第三王子は昼過ぎになって、やっと行きつけの娼館から帰ってきた。右大臣
が王子に、「陛下が原因不明の病により目を覚まさなくなってしまいました!
一体いかがいたしましょう?」と言った。しかし昨日の夜、愛人の一人である
国王付きの侍女から情報を得ていたこの王子は、すでにどうするか決めていた
のである。
 王子は全く慌てず騒がず王の寝室に行くと、王の耳元で昨夜の娼館での自分
のお楽しみについて、実に克明に語り始めた。曰く、「昨日買った娘の×××
を××するとその娘は……」とか、あるいは、「三人目の娘の××××が今ま
で体験した中でも最高で、私は思わず……」等々、とてもここでは書けないよ
うな破廉恥な話である。
 耳元でそんな話を囁かれた王は、思わず股間のモノが反応してしまった。王
の寝間着の股間が、傍目から見ても分かるぐらい持ち上がってしまう。それを
見た王子は、「おや父上、朝立ちですか? お元気なことで」と言った。
 それを聞いた王は、怒りと恥ずかしさの余り思わず起き出して怒鳴った。
 「ばっかもぉーん! 貴様があのような事を囁くからこうなったのではない
か!!」
 すると王子は右大臣の方を向いて、「ほら、起きましたよ」と言った。

 王さまはしんでしまってはたいへんと、おもわず「やめてくれ!」といって
おきてしまいました。王子はにっこりほほえんで、「おはようございます」と
いいました。
 こうして王さまをおこすことができたかしこい王子は、王さまのあとをつい
で、とてもかしこくてりっぱな王さまになり、そのおかげでくにはますますさ
かえました。めでたしめでたし。
           (世界むかしばなしシリーズ『かしこい王子』より) 
 《史実》
 「これで俺が次の王に……」
 「ええぃ! そんなワケあるか! 試験はやり直しじゃあっ!!」
                        (終わり)



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