【 ほかほか帝国の陰謀 】
◆8vvmZ1F6dQ




628 名前:ほかほか帝国の陰謀 ◆8vvmZ1F6dQ 投稿日:2006/09/24(日) 11:08:00.94 ID:4UW7bRGK0
これは、ほかほか帝国でのお話……

ある朝、ほかほか城に住むほかほか姫は、いつもより遅く起きました。
目を擦りながらあたりを見回すと、家来が置いたのでしょうか、コップに入った水が置いてありました。
ほかほか姫は喉が渇いていたので、その水を一気に飲み干しました。
するとどうでしょう、途端に眠気が姫様を襲います。瞼は重くなり、
目の前がぐるぐると揺れました。そして姫様は眠りに就きました。起きることはありません。
昼になっても夜になっても眠り続けます。
最初の内は誰もが、「姫様はお疲れになっているのだろう」と心配しなかったのですが、
次の日になっても眠り続ける姫様に、王様やお后様、臣下の者、皆が不安に思いました。
何より、この次の日は姫様の結婚式だったのです。姫様が起きなければ、結婚式は延期しなければなりません。
すぐに結婚相手の隣国の王子に、伝書鳩が飛ばされました。ほかほか帝国の国民に対しては、
城下町に看板を立てて知らせました。
国民のことを第一に考えていたほかほか姫です、国民に愛されていました。
なので看板に集まった国民は、皆、悲しんだり心配したり憤死したりしました。
そんな中、たった一人だけ看板を見て笑っている娘がいました。そう、姫様を眠らせた張本人です。
娘はある目的があって、城に潜り込み、姫様の枕元に睡眠薬入りの水を置いたのでした。
水に入れた睡眠薬は、一度飲めば三十日は目覚めない超強力なものです。
娘の目的とは、玉の輿に乗ること。そう、娘は隣国の王子と結婚する計画を立てていたのです。
なのでほかほか姫と王子の結婚式を邪魔するために、あんなことをしたのでした。
看板を見て、作戦が成功したことを知った娘は、嬉しくてたまりません。
「ほかほか姫が目覚めるまでに、王子を私に振り向かせてやるわ!」

629 名前:ほかほか帝国の陰謀 ◆8vvmZ1F6dQ 投稿日:2006/09/24(日) 11:09:03.32 ID:4UW7bRGK0

さて、実は看板に集まった群衆の中に、隣国の王子がいました。
王子に向けて飛ばされた伝書鳩は、途中で手紙を落としてしまい、鳩だけが王子に届いたのです。
伝書鳩が飛ばされてきたということは、何か重大なことが起きたということ。
それを知るために、王子はわざわざほかほか帝国へやってきたのです。しかし誰も王子のことに気付きません。
何故なら、彼はとてもみすぼらしい格好をしていたからです。
王子の国は、隠していましたが、実はとっても貧乏なのです。ほかほか姫と結婚することにしたのも、
逆玉の輿に乗って自分の国の経済を豊かにするため。
王子は、結婚式が延期されることを知って、ぶるぶると震えました。
王子には明日結婚しなければならない理由があったのです。
彼は婚約してすぐ、ぼろぼろだった城を大借金をして建て直しました。その借金の返済日が、なんと明日なのです。
国が経済破綻してしまうことを悟った王子は、汗をだらだらと流し唇を噛み締めました。
そして憤死してしまいました。

630 名前:ほかほか帝国の陰謀 ◆8vvmZ1F6dQ 投稿日:2006/09/24(日) 11:09:35.81 ID:4UW7bRGK0

それから十五日後、ほかほか姫を眠らせた娘は、王子が死んでしまったことを知りました。
王子を振り向かせるために買ったドレスや靴のせいで、娘は借金塗れです。
借金取りがドンドンと扉を叩いています。娘は思わず憤死しました。

631 名前:ほかほか帝国の陰謀 ◆8vvmZ1F6dQ 投稿日:2006/09/24(日) 11:10:05.65 ID:4UW7bRGK0

さらに十五日経って、ほかほか姫は目覚めました。まだ姫様は今が三十日前だと思い込んでいます。
部屋のどこかから声がします。誰か侵入者でもいるのかしら、と心配して辺りを見回すと、
なんと自分の父と母が内職をしているではありませんか。姫様はびっくりしました。
「お父様、お母様。私たちもうすぐお金持ちになるのに、何をしているの」
姫様がそう訊くと、王様とお后様は
「お前は長い間眠っていたんだよ。その間に、王子様が死んでしまってね」
と言いました。それを聞いた姫様は更にびっくりしました。
実はほかほか帝国はとても貧乏な国だったのです。国民のことを第一に考える姫様は、隣国の王子と結婚し
玉の輿に乗ることで経済を楽にしようと考えていたのです。
それが自分が眠っていた三十日の間に台無しになったことを知り、ほかほか姫は悔し泣きをしました。
そして憤死しました。

そう、これはほかほか帝国での眠りのお話……

おわり



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