【 ちぢまらないきょり 】
◆VXDElOORQI




353 名前:ちぢまらないきょり ◆VXDElOORQI 投稿日:2006/09/18(月) 00:00:38.53 ID:++YQr9JL0
「ねえ、お兄ちゃん。今日はそっち行ってもいい?」
 またか。毎日毎日よく懲りずに聞いてくるな。
「ダメ」
「えー! どうして!」
 妹は頬をプーっと膨らませる。
 いつもと同じ回答なのに、よくもまあ毎回毎回、同じリアクションを返してこれるもんだ。
「お前がこっち来るとロクなことにならないからな」
「そんなことないもん!」
 そんなことあるから言ってるんだよ。お前が俺のとこに来たらお互い怪我だけじゃすまないぞ。
「ねぇホントにダメ?」
 可愛い声出してもダメなものはダメだ。これは俺達だけの問題じゃないからな。
 まぁ、そう言っても妹が聞く耳を持つはずはないわけだが。ここは無視が一番手っ取り早い。
「無視しないでよ。なんでお兄ちゃん、そんな冷たくなっちゃったの?」
 俺は妹の話を無視する。返答すると面倒なことになるだけだ。
「昔はもっとやさしくて温かかったよ。それに私とずっと一緒に居てくれたのに……」
 無視されても話を続ける妹。 
 それ以上、俺の消し去りたい記憶を蘇らせるのはやめてくれ。
「私……。お兄ちゃんのことが……」
「黙れ」
 俺の言葉に妹はビクッと体を痙攣させる。そして妹の瞳に徐々に涙が溜まっていく。
「……お兄ちゃんのバカ!」
 そう言うと妹はそっぽを向いてしまった。
 本当はどこかに行ってしまいたいのだろうが、俺達の距離は変わることは許されていない。
「文句があるなら、俺にぶつかってきた隕石野郎に言えよ……」
 俺は妹に聞こえないように、小さな声でそう呟いた。





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