【 想いでは突然に 】
ID:UzGmmudz0




8 名前:No.3 想いでは突然に 1/5 □UzGmmudz0 投稿日:06/09/16 00:34:34 ID:LbjpQKTV

 「お前ちゃんと飲んでるかぁ?」

 地元の友達と数人で集まって、酒を飲むことになった。
 前に集まったのが同窓会をかねた花見だったから、二ヶ月ぶりになるのか。
 でもまさかこんな形で集まるなんて思ってもいなかったよ。
 もうバーに入って二時間。みんないい感じにできあがっている。

 「ちょっと外に風に当たってくるわ」

 「ちゃんと帰ってこいよ(笑)」

 「うるせ〜。まだそんなに酔ってねーよ(笑)

 とうとう明日になったんだな。
 いろいろ準備してるときは、まだ先のことだなんて思ってたけど、
 実際に過ぎた時間を思い返してみると、あっという間だったって事に気づいた。

9 名前:No.3 想いでは突然に 2/5 □UzGmmudz0 投稿日:06/09/16 00:34:49 ID:LbjpQKTV
「明日晴れるといいなぁ」

 わざわざ梅雨まっさかりの六月を選ばなくても良かっただけど、
 やっぱ June bride って言うし、ゆきの誕生日があるからね。
 今のとこ夜空には雲ひとつなくて、いくつかの星がきらめいている。
 タバコを一つとりだして火をつけた。
 はきだした煙が夜のとばりの中へ溶けていく。
 突然携帯が鳴り出し、あわててタバコの火を消した。
 電話にでるとゆきからだった。

 「とうとう明日だね。ゆうは今何してるの?」

 「オレは地元の友達と飲み会(笑)
  外に出て休憩しながらタバコ吸ってた。ゆきはお父さんとお母さんと一緒?」

 「ううん。さっきまでは一緒にいたけど今は自分の部屋。明日の準備してるんだ」

 「準備? だって昼間のうちにやり終えたでしょ? おれも手伝ってさ」

 「えっと、その準備じゃなくて心の準備のほう。
  だって、今からもう緊張してきたんだもん・・・」

 「それはおれも一緒(笑) だから酒でごまかしてるんだよ」

 「なんだ、ゆうもなんだ(笑)なら、ちょっとだけ安心した。
  でもお酒の飲みすぎはだめだよ。酔っ払いで式に出ないでね(笑)」

 「ほどほどにしとくよ。飲んでもあんま酔えないしさ」 

10 名前:No.3 想いでは突然に 3/5 □UzGmmudz0 投稿日:06/09/16 00:35:02 ID:LbjpQKTV
 他愛のない会話。
 いつか、いま過ごしている時間も思い出となって、
 君と懐かしがりながら、話せるようになりたいと思う。
 特別な記念日だけを思い出すのじゃなくて、
 毎日の小さな記念日を思い出せるよるように。
 今を大切にしたい。 

 「ゆき、ちょっと外に出れる?」

 「出れるよ。ちょっと待ってね」

 電話越しにゆきの息づかいが聞こえる。
 遠くはなれているはずなのに、
 すぐ隣にいるような錯覚に陥ってしまいそうになる。

11 名前:No.3 想いでは突然に 4/5 □UzGmmudz0 投稿日:06/09/16 00:35:14 ID:LbjpQKTV
 「ふぅ・・・ 外出たけど、なんかあるん?
  もしかして、近くにいるの?!」

 「いやいや。そんなわけないでしょ(笑)
  空見てみて? 月が綺麗だからさ」

 「月? あ、ホントだぁ。すごい綺麗だねぇ」

 「見た? 見たよね?
  今、ゆきとオレ同じ空みてるんだよ。
  なんかロマンティックでしょ(笑)」

 「うわぁ。キザだねぇ。ゆう(笑)
  でも、なんか嬉しいな。
  実は昔から好きだったんだぁ。
  こういうロマンティックな事してくれるの」

 「そうなん? もっと早く言ってくれれば良かったのに(笑)」

 「だって・・・・・・恥ずかしいでしょ・・・・・・(笑)」

12 名前:No.3 想いでは突然に 5/5完 □UzGmmudz0 投稿日:06/09/16 00:35:28 ID:LbjpQKTV
ゆきの笑顔が思い浮かぶ。
 そして、また好きなんだと再確認してしまう。
 絶対に幸せにするから・・・
 心の中でもう一度つぶやいた。

 「あっ・・・」

 「あっ」

 「流れ星だ!」

 「流れ星!」


 想い出は突然やってくる・・・






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