【 HERO 】
◆qwEN5QNa5M




762 名前:HERO ◆qwEN5QNa5M :2006/08/20(日) 23:58:00.93 ID:+R6uxVEE0
「ういいんおおおかー!」
意味不明な事を言っているようだが、これは「クリリンのことかー!」である。
特に理由もなくドラゴンボールを母音だけで音読していると後ろから足の音がした。
「誰だ私を呼んだのは」
声が聞こえたので後ろを振り向くと、そこには誰かがいた。
白衣を着ている。
「誰お前?入ってきてんじゃねーよ」
「呼んだのはお前か?」
「何の話だよ」
「私は願い事の神だ。「ういいんおおおかー!」で呼び出されるのだ」
「○○学会ならお断りだが」
「違う。夢を叶えてやろう。ただしそれが使えるのは3回だけだ」
「聞いてないけどそんなこと」
「とにかく呼んだからには何か叶えないと私の気がすまない」
「代償とかねーの?よくあるじゃん、お金持ってかれたり寿命が半分になったり」
「無い」
「ふーん、じゃあやろうかな」
「君の夢とやらを言ってみたまえ」
「夢?」
辺りを見回すと自分の手には漫画があった。さっきのドラゴンボールである。
昔から色々な漫画で俺は何度も感動させられた。
他人を感動させたいという気持ちは基本的に誰にでもある。
「じゃあよ、俺を漫画家にしてくれよ」
「じゃあ、2ヶ月以内に漫画を描いて△△社に出してみろ」
「分かった」
そして漫画を△△社を出すと、俺は賞を受賞し、やがて連載をする事になった。

763 名前:HERO 2/3 ◆qwEN5QNa5M :2006/08/20(日) 23:58:47.07 ID:+R6uxVEE0
しかし、その連載はあまり上手くいかず、
打ち切りスレスレの状態で俺は心も体もボロボロになっていった。
「こうなったら…あいつを呼ぶしかない……」
『ういいんおおおかー!』
今度は目の前に奴は現れた。
「どうだ、漫画家になった感想は」
「なったってだけで、人気は出ないし担当は原稿まだかとうるせーし、これで給料安かったらやってられねーよ」
「で、何だ、お前の夢、いや希望かな?」
「………連載を……やめたい……」
「それでいいのか?」
「…………………………いいよ……………………」
「そうか」
「あ、ちょっとま……」
俺の声を聞くことなく、そのまま願いの神は消えていった。

そして、月日が経ったある日電話が掛かってきた。
「あ、佐藤君ね、アニメ化が決定したから」
「ほ、本当ですか!?」
有頂天になりつつ、電話を切る。
『ういいんおおおかー!』
後ろから物音がする。
俺は後ろを振り返らずにこう言った。

「なんで俺の連載は続いているんだ?」

764 名前:HERO 3/3 ◆qwEN5QNa5M :2006/08/20(日) 23:59:22.08 ID:+R6uxVEE0
「本心がそう思ってなかった。後悔の念が感じられたからだ」

「………確かに………」
あの時の俺は狂っていたのかもしれない。


「で、最後の願いは?」
「え…?」
(考えて無かった・・・)

「じゃあさ、金でもくれよ」
「本心がそう思ってないからやだ」
「…………………………」



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