【 しすたぁ☆どりぃむ 】
◆VXDElOORQI




756 名前:しすたぁ☆どりぃむ ◆VXDElOORQI :2006/08/20(日) 23:54:29.64 ID:jIZbeXtw0
「お兄ちゃんのために焼いたクッキー焦げちゃった……」
 妹が泣きそうな顔で持ってきたクッキーは本当に真っ黒だった。俺はそれをひとつ摘んで口に運ぶ。
「あっ」
「うん。とってもおいしいよ」
「嘘。あんなに焦げてたのにおいしいわけないよ……」
「バカだな……」
 俺は妹の頭を軽く小突く。
「お前が作ったものなら、なんでもおいしいに決まってるじゃないか」
「お兄ちゃん……大好き!」
 俺の胸に飛び込んでくる妹を受け止める。
「俺もさ……」


「……という夢を見た」
「なるほど。つまり兄貴はそういう妹が欲しいってわけか」
 気のせいか妹は怒っているように見える。
「まあそうだな。俺のために料理作ってくれる妹なんかいいよなぁ」
「そ、そうなんだ」 
 妹は体をフルフルと震えてるように見えるが気のせいだろう。風邪を引いてるようには見えないしな。
「お前も少しはおしとやかにしたほうがいいぜ。今みたいにおてんばじゃ彼氏も出来ないだろ」
 そう言った瞬間、妹の鉄拳が俺の鳩尾に、
「ぐふぅ」
 クリーンヒットした。

759 名前:しすたぁ☆どりぃむ ◆VXDElOORQI :2006/08/20(日) 23:55:08.06 ID:jIZbeXtw0
「兄貴のバカ! どうせ私は女の子らしくないわよ!」
 そう言って蹲る俺に容赦ない攻撃を加える妹。ものすごく痛い。だが、俺を罵倒する妹に声はなぜか涙ぐんでいるのに俺は気付いた。俺への攻撃を終えた妹はその場に座り込んで泣き出してしまった。俺は痛みを我慢して妹に声をかける。
「泣くなよ。俺が悪かった。謝るから泣き止んでくれよ。な?」
「あ、兄貴は私のこと嫌いなんでしょ?」
 妹はいきなり俺にそう言った。
「嫌いなわけないだろ」
「嘘。だって兄貴は女の子らしい子が好きなんでしょ。さっき言ってたじゃない。だから女の子らしくない私のことなんて嫌いなんでしょ」
 妹がそんなにそのことを気にしてたなんて、思ってもみなかった。俺は妹を知らないうちに傷つけていたのか……。
 俺は妹を抱きしめた。なぜ抱きしめようと思ったのかわからない。体が勝手に動いたのだ。
「あ、兄貴?」
「ごめん。本当にごめん」
「あっ……」
「お前がそんなに気にしてるなんて知らなかったんだ。俺は今のままのお前が好きだから、もう泣かないで」
「うん。私こそ急に叩いたり泣いたりしてごめんね。私も兄貴のこと大好きだよ」


「……という夢を見た。夢の中で夢オチだぜ。HAHAHA!」
「…………」
 友人は何も言ってくれなった。



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