【 告白 】
◆XS2XXxmxDI




615 名前: ◆XS2XXxmxDI :2006/08/20(日) 14:30:45.30 ID:JFpRH0F3O
夢を見た。

太陽が頂点から幾らか離れた位置にあった。
やけに白く、異様なまでの陽光が空を埋め尽くしていた。
そこには私がいて、目の前で沙季さんが微笑んでいた。
唸る様な、耳を支配する蝉の鳴き声でよくは聞き取れなかったが、「う」と「い」の音を出す口の動きを、沙季さんが私に見せた。
途端に顔を赤らめ、私から視線を逸らす。
呆然と立ち尽くす私を余所に、沙季さんは時折ちらちらと、私に視線を送るのだった。
じりじりと照り付ける太陽の下で、その時間は永遠に等しい長さに感じられた。

それからどうなったかは覚えていない。
ただ、起きた時の、気持ちが嫌な夢を見た時のそれとは、全く違う物だったのは確かだ。
そして、私が今日沙季さんに呼ばれた事も確かな事なのだ。

616 名前: ◆XS2XXxmxDI :2006/08/20(日) 14:31:28.95 ID:JFpRH0F3O
昼下がりの公園で待ち合わせをしていた。
私が十分も早く公園に向かうと、噴水の近くで沙季さんが立っていた。
白のワンピース姿を見た瞬間、心臓が止まりそうになって、立ち尽くしてしまう私がいた。
「一樹君どうしたの?」
沙季さんが私に気付いて話かけてきた。
私の心臓が、今度は激しく脈打つ。
今口を開けば、たちまち脈打つそれが、口から飛び出てしまいそうな程だった。
何も応えられない私に、沙季さんは不思議そうな顔をしていた。
それから少しして、ようやく私の口から漏れ出た言葉は、
「それで用って何ですか」
喉がカラカラに乾き、聞き取りづらい声だった。
それでも沙季さんに私の声はちゃんと聞こえていたらしい。
「それはね、えーっと……」
と、可愛らしく頬を紅潮させて俯いた。

と――唐突に沙季さんが顔を上げ、私に何かを叫んだ、様に見えた。
だが、その声は無情にも掠れていて、蝉の鳴き声に飲み込まれ、私の耳に届く事は無かった。
唯一、私に分かった事と言えば、沙季さんの口が「う」と「い」の音を出す時の動きをしていた事ぐらいか。
その瞬間、私の心臓が鼓動を止めた。
もしくは、止まったと思える程に、早く脈打っていた。
そのせいか、私の視界が徐々にぼやけていく。
沙季さんが霞み、空が霞み、太陽と沙季さんのワンピースの白が、全てを埋め尽くしていた。

それからどうなったかは覚えていない。
ただ、起きた時の、気持ちが嫌な夢を見た時のそれとは、全く違う物だったのは確かだ。
そして、私が今日沙季さんに呼ばれた事も確かな事なのだ。



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