【 夢を見ているのはどっち? 】
◆smdP.hcQc2




238 名前:夢を見ているのはどっち?(1/2) ◆smdP.hcQc2 :2006/08/19(土) 04:30:12.01 ID:Qn7fz+iy0
 この物語は、結局のところ夢オチだ。だから、この物語を真面目に、真剣に読むこと
は馬鹿げてると言えるだろう。
 じゃあ、その真面目に読むのは馬鹿げているという物語とは一体どういうものなのか
というと、何てことはない、ある男のどうでもいいようなお話だ。

239 名前:夢を見ているのはどっち?(2/2) ◆smdP.hcQc2 :2006/08/19(土) 04:30:44.43 ID:Qn7fz+iy0
 その男は一見したところ、どこにでもいるような平凡な男だ。年齢は二十過ぎくらい。
毎日大学に通い、週三日あるアルバイトは真面目にこなし、土日の夜には友人と酒を
酌み交わす。そんなどこにでもいそうな平凡な男だ。
 だが、彼には他の誰にも言っていない秘密がある。まぁ、他人には言わない秘密とい
うものは、世の中の人間誰しもが持っているものなわけだが、彼の持っていた“それ”は
他とはちょっと違った内容だった。
 彼はこの世界とは違う「他の世界」を見ることができた。
 彼はこの「他の世界」のことをかつて一度だけ、中学生の時に親友に話したことがあ
った。しかし、その親友の反応はいいものではなく、いや、むしろそれは非常に悪いもの
であった。そのため、彼はそれ以降この「他の世界」のことは口にせず、自分だけの秘
密としていくことにした。
 この中学校の時の親友は、後に彼のことをこう知り合いに話した。
「あいつ妄想癖があったんだよ。中学の時変な話してたから……」
 さて、そんな彼が一体どうなるのかというと、それは非常に簡単なことで、彼はある日
突然死ぬのだ。
 ある日の朝、なかなか起きてこない彼を起こそうと部屋に入った彼の母親が異変に一
番最初に気づいた人物だ。
 彼は、本当に寝ているかのようにして死んでいたそうだ。
 遺書などはなく、外傷もなし。検死解剖をしても死因は判らず、彼の死因は謎のまま
葬儀は行われた。
 後に警察の調査でわかったことだが、彼は突然死をした前日に大学の友達と酒を飲
んでいて、その時こんなことを話してたそうだ。
「そろそろ起きようかな……」
 彼が酔いながらボソっと言ったその言葉の意味なんて、その時その場にいた大学の
友人達に分かるわけもなく、それを口走った当の本人はすでに骨になって壷に納まっ
ていた。
 結局この話は、ある妄想癖のある男の意味不明な死のお話でしかないというわけだ。



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