【 覇道 】
◆VXDElOORQI




165 名前:覇道 ◆VXDElOORQI :2006/08/13(日) 23:57:54.93 ID:w8kDYPUj0
「お兄様、本当に戦争に行かれるのですか」
「そんな心配そうな顔をするなよ。今までだって無事帰って来たんだ。今度も大丈夫だよ」
「今まではお父様が一緒だったから……。でも今は……」
「この国のためには戦うのはこの家に生まれた僕の使命であり、運命なんだ。だからわがままを言わないで」
「……はい」
この国を勝利に導く。それが将軍の家に生まれた僕の使命であり、運命。
周りには使命感溢れる好青年に見えることだろう。そう思わせておく必要がある。
この国の王となり、世界の全てをこの手に掴むために。
まずは戦果を上げ、王の信頼を勝ち取る。
この国の将軍である俺の親父は王に忠誠を誓っている。そして、王も親父のことを信頼している。
親父は今病気だ。他の無能な軍人共より、俺のほうが優れてるのはこれまでの戦果から考えれば明白。
そしてこの戦争で戦果を上げれば、王は俺を信頼していくだろう。
俺は親父の後を継いで将軍になる。そしてこの国の王となる。
王に一番近い位置、将軍になることが出来ればあとは毒を盛るなり、刺客を差し向けるなり手段はいくらでもある。
「それより、父上の看病をしっかり頼むよ」
そう、すでに親父に毒を盛っているように。
「……わかりました、お兄様。お父様のことは心配しないで、存分にお勤めを果たしてきてください」
「ありがとう」
「あっ」
俺は妹を抱き寄せる。この笑みを妹に見られるわけにはいかない。
「父上のことよろしく頼む」
「……はい、お兄様」
「それじゃ行って来る」
妹の頭をひと撫でして馬に跨ろうとしたとき、妹が服の裾を掴む。
「お兄様、……どうか、どうか死なないで」
「当たり前じゃないか」
頭をもうひと撫でして、今度こそ馬に跨り手綱を振るう。
『死なないで』か、当たり前だ。俺は死なないさ。この世の全てこの手に掴むまでは。
いつもの道も今日は金色に輝いて見える。
この道が俺がこれから歩む覇道の始まりだ。



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