【 500円に笑う者は、500円に泣く 】
◆QqJ8IevsyY




694 : 500円 ◆QqJ8IevsyY : 2006/03/33(日) 01:39:48.04 ID:VAoJNsv20
【500円に笑う者は、500円に泣く】
「パパー。おこづかい頂戴!遠足お菓子買いたいのー」
今年7歳になった女のコが、毎日接待で遅くに帰ってくる父に言った。
「んー?こづかいか、いいぞいいぞ。いくらほしいんだ?」
今日も接待で、アルコールをたっぷり飲んできた父親は上機嫌に笑いながらいった。
「んーー。500円頂戴!」
「500円?そんなのゴミみたいなもんだ。1万円あげるから好きにつかいなさい」
その声を聞いて、母親がやってきた。
「あなた!いけませんよっ、そんな大金子供にあげちゃ・・・」
そう怒った顔をして言う。
「いいじゃないか、いいじゃないか。500円ぽっちじゃ大した物買えんだろー。」
そう言いながら、娘に1万円札を差し出した。
彼は若くして会社を立ち上げ、成功を収めた社長なのだ。
だから家も豪邸で、裕福な生活をしているのだ。
毎日の接待も、社長ゆえの仕事だった。
彼は普段あまり娘に会えないので、金銭的に甘やかす傾向がある。
母親はその事をしっているので、できるだけ子供にお金をあげないようにしてるのだ。
「だ・め・で・す!大金なんだから!」
そう言うと、彼女は一万円札を取って、サイフから500円玉を取り出して
娘にあげた。
「わぁーー!ママありがとう!!」
そう言って娘は喜んだ。
「お前はちょっと厳しすぎるぞー?500円なんて・・・せめて札あげろよ」
父親は苦い顔をして、そう言うとソファー寝っころがりテレビを見始めた。
「コラー!そろそろ寝なさい」
と、母親が言いながら手をひいて、娘の部屋へつれてった。

695 : 500円 ◆QqJ8IevsyY : 2006/03/33(日) 01:40:52.10 ID:VAoJNsv20
―――5年後―――

せまいアパートのリビングで、父親はタバコを吸っていた。
1LDのせまいアパートに仏壇がある。
母親の仏壇だ。
父親は、2年前に会社の舵をあやまって倒産させてしまったのだ。
あの豪邸も人手にわたり、今はこのせまいアパートで娘と二人で借金暮らしだ。
母親は、パートやバイトをいくつも掛け持ちし、無理をして体をこわし
半年前に過労死してしまった。
彼はタバコを吸いながら考えた。
今までは、なんとか日雇いの肉体労働で食いつないでこれたが、三日前に
クビを切られたのだ。
中年と呼ばれる年になり、体力の衰えはどうしようもなかった。
それから三日。
彼は死ぬコトばかりを考えていた。
タバコが灰になり、2本目を取り出そうとするとタバコがきれていることに
気づいた。
アパートのすぐ傍の自販機にいくと、学校帰りの娘にあった。
「パパー。こんなとこでなにしてるの?」
「タバコ買いにきたんだ。一緒に帰ろう」
サイフを取り出し、金を取り出しながら言った。
しかし、サイフの中にはタバコが買えるだけの金すら残っていなかった。
「どうしたの?」
無邪気な顔で問いかける娘に、父親は答えた。
「お金が・・・ないんだ。ハハハ・・・」
娘は、それを聞くと「ちょっとまってて!」と言い残し走って家のほうに
行った。
(やはり・・・もう死ぬしかないのか?)
三日考え続けた問いかけが、心の中で響く。

696 : 500円 ◆QqJ8IevsyY : 2006/03/33(日) 01:41:45.28 ID:VAoJNsv20

しばらくすると、娘が走って帰ってきた。
貯金箱を持って。
「おまたせー!これつかって!」
そう言うと、娘は貯金箱を開けた。
中には500円玉が一枚。
うれしそうに、その500円玉を差し出す娘を見て、死ぬ考えが
吹き飛んだ。
父親は一筋の涙を流し笑っているんだか、泣いているんだかわからない顔で
それを受け取った。

                         ―――END―――



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