【 無題/暗闇 】
ID:Gp77StR00




466 名前:品評会用 :2006/08/06(日) 20:37:37.70 ID:Gp77StR00
「おじいちゃんはなんで目が見えないの?」
少女は目の前の老人を真っ直ぐに見ながら言う。
「そうだねぇ。目を開けるのが辛くなったからだよ」
老人の小枝のような手は少女に触れようと動き、やがて小さな頭の上に止まった。
少女は少し照れくさそうに笑い、それを感じた老人も穏やかに笑う。

「じいちゃんはなんで怒らないの?」
目を赤くして震えている少年は俯きがちに言う。
「そうだねぇ。怒ってくれる人がいなくなったからだよ」
老人の玩具のような腕は少年を探し、やがて小さな体に巻きついた。
少年は目を擦り、それを感じた老人も小さく頷いた。

「あなたは何故横になっているの?」
ほんの少し先も見えない暗闇から声がする。
「疲れたからだよ」
老人は動かないで言う。
「探したんだ。でもみつけられなかったんだ。もういいんだ」
「あなたならできる。もう見つけているし、まだ溢れている」
暗闇が遠ざかる。
老人は椅子の上で目を覚ました。
いつもと違う朝。
今日なら見つけられる気がした。
机の上には、見たことのない赤ちゃんの人形が置かれていた。



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