【 ひかりへ 】
◆dx10HbTEQg




423 名前:品評会作品「ひかりへ」 ◆dx10HbTEQg :2006/08/06(日) 15:46:17.89 ID:PbTAMyj/0
ねえ、ぼくの居場所はどこ?

くらやみは泣いていた。
「ねえ、どうしてぼくはひとりなの?」
ひかりはぴかぴかと笑っていた。
「皆、暗闇が怖いんだよ。冷たくて、寂しくて、苦しいから」
くらやみは哀しんでいた。
「ぼくはひとりがこわいよ。つめたいし、さみしいし、くるしいから」
ひかりはちかちかと瞬いていた。
「君自身がそう思っているなら、暗闇が怖くて、冷たくて、寂しくて、苦しいのは当然だね」
くらやみは悩んでいた。
「でもね、ぼくはくらやみで迷子になった子をなぐめてあげられる。やさしくつつんであげるんだ」
ひかりはくるくると踊っていた。
「違うよ、子が欲しいのは光。私のような、道を照らす灯火」
くらやみは嘆いていた。
「でもね、ぼくはくらやみにおびえる人をなぐさめてあげられる。ここちよい風で、あたまをなでてあげるよ」
ひかりはきらきらと微笑んでいた。
「違うよ、人が欲しいのは光。私のような、暖かな手のひら」
くらやみは俯いていた。
「じゃあ、ぼくはどうすればいいの?」
くらやみは苦しんでいた。
「じゃあ、ぼくはどうすればひとりじゃなくなるの?」
ひかりは哂って、くらやみに手を差し伸べた。
「こちらに来ればいい。ここは、怖くも、冷たくも、寂しくも、苦しくもない。私が君を照らしてあげる」
くらやみは、ひかりを見上げた。
そこには、たくさんの人がいた。たくさんの笑顔があった。たくさんの喜びがあった。
「あたたかいね。きれいだね。ひかりは、ぼくみたいなくらやみにも、やさしいんだね」
くらやみはひかりにすがりつき、嗚呼、すがりついた先から消えて――。

ねえ、ぼくは、どこ?



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