【 beautiful reverse 】
◆RgNNTjYHj2
117 名前:beautiful reverse ◆RgNNTjYHj2 :2006/08/05(土) 15:44:44.68 ID:6XjCTI+80
私は愛されて育ってきたと思う。
父、母、私で親子三人。平均的で平凡な家庭だったが、父や母は私にたくさんの愛情を注いでくれた。
学校での友達は優しいし、近所の人たちも面倒見が良くて、文句がない環境だったといえる。
なのに、どうしてだろう。こんなにも苦しいのは。私に与えられる愛や友情、思いやりといった清らかなものが、なんでこんなにも黒く思えるんだろうか。
幼かった私は、そういった白いモノがとても怖いモノに思えた。
成長するにつれて、小さいときに怖いと思えていたものは何なのか、というのを理解できるようになった。怖いと思っていたソレは、苦痛や圧迫といったモノに他ならなかったのだ。
――つまるところ、私はそういった慈愛満ちたものに嫌悪感を抱いているのだった。
そんな自分の中に潜む感情を知った時、私は畏怖した。
自分だけヒトと違う。
それはとてつもない恐怖だった。
周りは白を白と受け止められるのに、自分だけが白を黒としか捉えられない。
自分だけがヒトとは違うココロを持っている。私というモノを司る大事なトコロが、他のヒトと違うように出来ている。
それを恐怖と呼ばずして、何を恐怖と呼ぶのだろうか。
世界はこうであれ、と動く歯車から一人ハズレタマイノリティ。
私は、人間だ。ヒトと関わりあわなければ生きていけない弱い生き物だ。なのに、根源では愛されることを忌避している。それは……苦しい人生だった。
だが、とある出来事から私の人生観はくるりと反転する。
自分はそういうものだ、と認識してから数年経った中学三年生の夏。
私は犯された。
簡単に言えば、不運な事故のようなものだ。たまたま夜にお使いにいった帰り道の公園で、複数の男に襲われたのだ。
最初は泣き叫び、助けを求めたが、ダレも私を助けに来てくれなかった。
――ダレも。その時、私の中の世界が逆転した。――ダレも助けに。突如として、世界に光が満ちたような気がしたのだ。――ダレも助けに来てくれなかった。ソレは、クライ暗い昏い黒い光だった。
やっと自分と世界が繋がった、というのを自覚した時、私に纏わりついているケモノどもは、私が愛すべき存在なのだ、という事を同時に理解した。
愛するっていうのはとても良いモノ。こうして、お使いの袋に入っていたジュースのビンで殴ってあげると、驚いたような悲鳴をあげてケモノは倒れていく。
辺りを見渡して、大きな石があったのでそれを使ってさらに殴る。すると、とっても綺麗な赭い花が咲いた。
なんて綺麗なんだろう。黒い世界に赭い色がとても美しく映えるのだ。それは、痛みしかなかった白い世界とは別物だった。
――ああ、これが愛情なんだ。
そうして、ケモノを残らずチューリップのように飾ってあげた後、私は決心した。
もっともっと、沢山のヒト――ヒト?――ケモノを愛してあげよう。私に愛情を注いでくれた皆――ミンナ?――世界を私が、これから愛してあげよう。
これが愛、友情、慈しみ。やっぱり白いよりも黒い方が似合う。私は、間違っていなかった。私は間違っていない。私は間違っていなかったのだ。
私は――――間違っていないよね?