【 一発の弾丸 】
◆O/2oCreS5s




738 名前:一発の弾丸 ◆O/2oCreS5s 投稿日:2006/07/30(日) 22:29:53.83 ID:+3EeM9280
俺が目を覚したのは、いつもの寝なれたベッドではなく、ひんやりと冷たいコンクリートの上だった。
昨日の夜は確かサークルの飲み会から帰ってきて・・・そこからの記憶がない。
靄がかった意識をはっきりさせようと、頭を左右ぶんぶん振ってみるが、どうも冴えない。
「ここはどこだ・・・」
明かりが無く、視界が利かない。
ゆっくりと体を起こそうとすると、どうも腰の部分に違和感がある。
腰に手をやると、ごつごつとした何かが指先に触れた。どうもズボンのベルトに挟まれているらしい。
なんだこれはと俺が思った瞬間、ぱっと明かりが点いた。
暗闇に慣れた目を、その眩い光が刺激する。
うっすらと目をあけると、そこはわずか八畳ほどの小部屋だった。
同時に視界に入ってきたのは、二人の男だった。
一人はいかにも理系という感じの眼鏡をかけた痩せ男。
もう一人は、肩幅が広くがっちりとした体系の筋肉男だった。
年は自分とそう変わらないだろう。
部屋を見回すと、天井の隅に監視カメラとスピーカーがひとつずつ。
三人の間になんともいえない気まずい空気が流れるなか、スピーカーから音が発せられた。
「おはよう、諸君」
この狭い部屋には五月蝿すぎる程の音量に、三人は顔を顰める。
そんな事にはおかまいなしで、スピーカーからの言葉は続く。
「簡単にルールを説明しよう。まずは、君達のベルトに挟まっているものを取ってくれ」
そういえば何かあったな、と腰の物体に手をやると、勢いよくベルトから引き抜く。
目の前に現れたのは、黒塗りの不気味な光を放つ金属。

拳銃だった。

739 名前:一発の弾丸 ◆O/2oCreS5s 投稿日:2006/07/30(日) 22:30:53.62 ID:+3EeM9280
「その部屋から出られるのは一人だけ。制限時間は五分」
三人は目をまん丸にして顔を見合わせた。理系は、口をぱくぱくさせている。
「ただし・・・それぞれの拳銃には弾が一発しか入っていない」
それを言い終えると、「以上だ」とだけ告げ、スピーカーからは音が発せられなくなった。
皆、あまりの出来事に唖然としている。
が、三人の視線が交錯した瞬間、一斉に立ち上がると、銃口を上げた。
しかし、皆が気づいていた。

最初に動いた奴が負けだ。

弾が一発しかないのに敵は二人。
例え、先手必勝で一人を撃ち殺しても、残る一人に撃ち殺される。かといって、ただ待っているだけでは駄目だ。
思考能力を限界まで引き上げると同時に、滝のような汗が流れる。
時間がない・・・しかし動くわけにはいかない。
緊迫した空気が流れ、二人の恐ろしいまでの殺気に背筋が凍る。
挑発してみるか・・・いや、それで俺が撃たれたら元も子もない。
終わることの無い堂々巡り。
あれからどれくらいの時間が経っただろうか・・・
額から流れる汗を、服の袖口で拭ったその瞬間だった。
鼓膜が破れそうな程の音を発し、弾が俺の頬をかすめた。
がたがたと震えながら発砲したのは、理系だった。

740 名前:一発の弾丸 ◆O/2oCreS5s 投稿日:2006/07/30(日) 22:31:36.20 ID:+3EeM9280
「貴様ぁ!」

それに反応し、俺と筋肉男は銃口を理系に向けた。
こいつだけは許さない。絶対に殺してやる。
感情に任せ、冷静な判断ができなくなった俺は、理系に銃口を突きつけた。
そして、今まさに引き金を引こうとした瞬間、わずかに理性が勝った。
ここで感情に任せて理系を撃ったら駄目だ。
気持ちを落ち着かせるようにひとつ息を吐く。
俺は、未だに銃口を理系に向けたままの筋肉男のほうにゆっくりと向き直る。
そして、銃口をあげ、引き金を引いた。
筋肉男は倒れ、理系はその場に座り込み発狂した。
俺は、筋肉男の拳銃を拾い上げると、理系に向けて引き金を引いた。

いつの間にか俺は気を失っていた。
俺はようやく目を覚ますと、ゆっくりと体を起こした。

「おはよう、諸君」






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