【 真夏の空 】
◆bvudrb.vA2




446 名前:戦闘シーン タイトル:真夏の空(1/3) ◆bvudrb.vA2 投稿日:2006/07/30(日) 01:15:20.87 ID:CCKOavQ4O
真夏の空を切る鋭い音が耳をつんざく音速の世界で、
体を操縦席に押しつけるGがその速さを物語っている。
風となった青年は広大な青と白の世界を駆け巡り、計器類に目を通し前方を見て迫り来る相手の位置を確かめる。
米粒程度の大きさと確認した次の瞬間、相手は瞬時にソニックウェーブを残して青年とすれ違う。
青年はすぐに機体を傾け旋回して、獲物を探す、しかし
「消えた!?」
辺りを見回せど広がるのは雲海のみ、人工物は何も存在しない。
刹那、アラームが鳴り響き、隣接する死の存在を知らせる。
「・・上!」

447 名前:戦闘シーン タイトル:真夏の空(2/3) ◆bvudrb.vA2 投稿日:2006/07/30(日) 01:16:12.54 ID:CCKOavQ4O
見上げた青年を待っていたかの様に、ミサイルが俺の目前に居た。
「ローリング!」
青と白が逆転した。
青年は明確な殺意を以って飛来するミサイルを機体をきりもみ回転させてヒラリといなした。
急降下しながらミサイルを撃った相手はそのまま下へ落ちて行き、機体の首を持ち上げ水平に戻した。
青年は機体の出力を上げて戦線から脱出を試みる。
ビリビリと音を立てる衝撃に屈せず、音の数倍の速さで飛ぶ。
残りの燃料は少ない。青年は相手から遠ざかり、空母へ向かう事にした。

448 名前:戦闘シーン タイトル:真夏の空(3/3) ◆bvudrb.vA2 投稿日:2006/07/30(日) 01:17:27.42 ID:CCKOavQ4O
燃料は底を尽きかけてるが想定内だ、行こう。
青年は静かな真夏の空を急降下する。いつもより近い太陽に別れを告げて、厚い雲をくぐる。
しばらく何も見え無かったが、すぐに視界は開けた。
船が一隻、大きい空母だ。一応確かめたが、終着点はここらしい、間違いない。
高度は三百米を切った。青年は機体を更に加速させる、どうやら燃料はもってくれたらしい。
空母が間近に迫る。青年はふと思い出してみた。

色々あったけど、短い人生だったな。お母様よ、帝国の為に死ぬ俺をお許しください。
「大日本帝国万歳!」 爆弾を積んだ機体が、米軍の空母に突っ込んだ。
一拍置いて空気が膨張し、爆風と轟音が真夏の太平洋に張り裂けた。

神風となった青年の精神と肉体の一部とは、深い海の腕に絡まれて、沈んで行った。 終戦の年の、七月の事である



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