【 TWO 】
◆qwEN5QNa5M




195 名前:TWO1/3 ◆qwEN5QNa5M 投稿日:2006/07/29(土) 13:56:23.59 ID:u/Mwu+O+0
酒を飲むと人格が変わるなんて言う人がいる。
まさに俺の事だ。

みっともない話をするが、
俺は酒を飲むと別の誰かに体を支配されてしまう。
やっと解放されたかと思い、辺りを見回すと、酷く荒らされている。
どうもそれは俺がやったみたいだ。だけど俺はやってない。
勿論それをやったと言う記憶は無い。
俺が他のそうなる人とちょっと違うのは、
ちょっと飲んだだけでもそうなってしまうと言う事。
ある日無理矢理飲まされた時に警察に捕まり、症状を知らされた。
それ以降は禁酒している。
でも酒の事は毎日頭から離れない。

俺は何となくテレビを付けた。
すると欲求に関する番組がやっていた。
「欲求に勝つ。こんなに大変な事もそうそう無いですよ、
 途中から意識が飛びかけるんです、食事を取ろうとしようと。
 私はその欲の悪魔、すなわち「欲魔」と戦ったんです、何度も……」
食欲を抑える大会の優勝者のコメントだったらしい。
目の前にどんどん出される食べ物を食べずに、どれだけ長い時間耐えられるかというものだ。

「欲魔」、か……
俺はこいつに勝てるのかな。
そう考えながら風呂に入ったり食事を取る内にどんどん時間が経って行き、寝る時間になった。
「試しに欲魔と戦ってみるか……」
俺はベッドに入り電気を消すと、大きく目を開けた。
「徹夜してやる、成功したら酒を飲む」

196 名前:TWO2/3 ◆qwEN5QNa5M 投稿日:2006/07/29(土) 13:56:42.29 ID:u/Mwu+O+0
考え事をしたりしていく内に段々眠気が襲ってくる。
「ううダメだダメだ! 寝るな俺!」
そうして行く内に夜も明けて、朝になりかけた頃であった。

(ん・・・なんだなんだ・・・?)
俺は黒い世界に包まれた。
瞼もどんどん重くなっていく。
(まさかこれが「欲魔」……、でもこの場合は「睡魔」か……?)
欲魔との戦闘の幕開けである。
(そんな事を考える力も段々衰えて……………ってダメだ! 起きなきゃ!!)
俺は体を上に上げる事くらい………………………
………俺は立ち上がった。 そして時計を見る。5時である。
「俺は欲魔に勝ったんだ!!」
早速祝いの酒を飲もうと思った。しかし。
「なんか、気が進まないな……」
もう一度ベッドに戻ると数秒経たない内に深い眠りに入った。
眠いと、したかった事もする気が無くなる。不思議なものだ。
起きると夜の7時になっていた。
俺はグラスに大量の酒を注ぎ、一気飲みした。
ジョッキの一気飲みは怖くて出来ない。チキンと呼ぼうが否定はしない。
グラス一杯を飲み干すとすぐにあの時の黒い世界に包まれた。
人間には、抑圧や暴力や自由を得ようとする欲も積まれている。
何かと抑えがちな俺に不満を持った「俺の中の俺」が「裏の俺」として出てくるのだろうか。
そんな事を考えている時であった。
「ガン!!」
後頭部から殴られたような痛みが走る。
痛い…………意識が……だ、誰だ……
薄れゆく意識の中で必死に後ろを向いた。
あ……れ が……俺の…………

197 名前:TWO3/3 ◆qwEN5QNa5M 投稿日:2006/07/29(土) 13:57:01.50 ID:u/Mwu+O+0
俺は「はっ」となった。
寝たくない時にいつの間にか寝てて、朝になった時はこんな感じだろうか。
頭が痛い。2日酔いだろうか?まだ意識がもうろうとする。
辺りを見回す。
「やられた……」
部屋はグチャグチャになっていた。元々そんなに綺麗じゃなかったが。
そして何故か、犯人が目の前にいる。
俺の目の前に、俺がいるのだ。
俺の目に映る俺は物凄く目付きが悪い。
あれが……俺やその周りに沢山の被害を負わせた「裏の俺」なのか……!?
俺は立ち上がる。
同時に向こうも立ち上がる。
「お前を倒す……もう二度と好きにはさせないからな……」
裏の俺に向かって俺は叫んだ。
向こうも同時に何か口を動かしているが、その声はこちらには届いていない。
「言葉で言っても分からないようだな…………俺の制裁が必要みたいだ」
するとまた相手も、俺がしゃべるのと同時に何か言っているようだ。
しかし相変わらず何を言ってるのかは分からない。
これ以上話の割り込みをやられるのは嫌なので、俺は「裏の俺」に思い切り殴りかかった。

「死ね、俺の『欲魔』!!!」
バキ!!! ガッシャーーーーン!!!

「はは、俺は、俺は勝ったんだ…………ははははは………………バタッ……」

思い切りぶち込んだその拳で、鏡の向こうの俺は掻き消えていった。血と言う置き土産を残して。

End



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