【 弱さ 】
◆JUNm3.49.6




318 名前:タイトル「弱さ」 ◆JUNm3.49.6 投稿日:2006/07/23(日) 03:44:05.40 ID:sjZ0v3j8O
また通り魔事件が発生した。この一週間で5件。
犯人は逮捕されたものの、捕まった5人に接点は無く、次なる事件への不安は消えることが無かった。

「またか……」
そう他人事のように呟いたが、明日は我が身かという不安は彼の心の隅に巣くっていた。
守ってくれる家があるならまだしも、彼はホームレス。夜出歩かなければひとまずは安心の一般人とは違うのだ。
しかし心配したところで境遇が変わるわけでもない。彼はできるだけ事件のことを忘れるように努めながら、眠りについた。

その夜、彼は妙な夢を見た。夢といっても映像は無く、ただ声だけが頭の中に響いてくる。

319 名前: ◆JUNm3.49.6 投稿日:2006/07/23(日) 03:45:26.84 ID:sjZ0v3j8O
その声は、こんなことを言った。
「貧しさに耐えながら暮らしている人間がいることも忘れ、のうのうと日々を送っている人間など殺してしまえ」
声は続ける。
「今は生き長らえているが、お前もいずれ狙われる。最早安全な人間などいない。死にたくなかったら刑務所へ逃げることだ」

翌朝彼は、息苦しさに耐えかねて目を覚ました。そして夢の中で聞いた声を思い出した。
「いずれ狙われる、か。」
彼は考えた。
確かに最近のことを考えれば、単なる夢では済まないかも知れない。だか夢で聞いた言葉に従って人を殺すなんて馬鹿げている。

320 名前: ◆JUNm3.49.6 投稿日:2006/07/23(日) 03:50:01.54 ID:sjZ0v3j8O
彼はそう考え、いつも通り顔を洗い、朝食の支度を始めた。

2日後、彼は買い物の帰りに通り魔に刺され死んだ。犯人はいたって普通の会社員だった。


(弱者をつつけば一人くらいは堕ちる。そうなれば後はこの通り恐怖が犯罪も起こさせる。
人間なんて皆死ねばいい。知能の発達に心が付いていってないんだよ……)





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