【 音=ダイエット 】
◆dakG1rGQ.2




740 名前:音=ダイエット1/3 ◆dakG1rGQ.2 :2006/07/16(日) 03:21:35.85 ID:3tWomVlt0
買ったばかりの水着を着た恵は、鏡の前に立つと
そこに映った自分の姿を見て驚いた。
『うわっっ、、太ったかな』
お腹の肉をつまんだ恵は、『カルくヤバい?』と、どこかで聞いた事のある台詞を
つぶやいた。一人暮らしの女は、独り言が多いものである。
テーブルに置いてあった雑誌を手に取り、ソファーにゴロリと横になる彼女。
ペラペラとページを捲る恵の頭の中で、一つのダイエット計画が浮かんで来た。

早速ダイニング脇にある風呂場へ向かうと、バスタブにお湯を張りだした。
半身入浴で汗をかき、丸くなった下半身を引き締めてやろうじゃないかと考えた訳だ。

15分後〜バスタブにはられたお湯に足を入れたとたん、彼女はすっとんきょうな声を上げた。
『ひゃぁ〜っつ、、やだ冷たいじゃんっ』
バスタブにはっていたはずのお湯は水だったのだから、何ともおっちょこちょいな恵である。
彼女は、ガスのスイッチを入れ忘れていたのだ。
『あぁ〜っもう信じらんないっっ』
信じられないも何も、これは現実である。


741 名前:音=ダイエット2/3 ◆dakG1rGQ.2 :2006/07/16(日) 03:22:21.25 ID:3tWomVlt0
恵のアパートは古く、風呂には今時珍しい釜があり
温度調節やタイマー機能こそ無いが、手動での追い炊きは可能であった。
種火を付け、温めと書いてあるつまみをひねると、『ブオォォオオ〜』という音と共に青い火が上がる。
恵はコットンバスローブを羽織りながら『はぁっっ』っとだけいい放つと、
セミダブルのベットにダイブした。
『何時に入れるのかなぁ〜』ぼそりと言いながら、気の抜けた体を仰向けにすると
手足を広げて大の字になり、天井を見ながら彼女の得意とする想像を膨らませていた。


シェイプされたボディーの恵が砂浜で寝そべると、入れ替わ立ち代わりイケメンが声を掛けてくる〜
そんなおめでたい恵の想像はいつしか、極端に蒸し暑い浜辺の夢へと変わっていた。



742 名前:音=ダイエット3/3 ◆dakG1rGQ.2 :2006/07/16(日) 03:23:14.19 ID:3tWomVlt0
『ドンドコドンドコ〜ドドドン』
夢現の彼女の耳に、太鼓の音が聞こえてくる。その音は、何だか調子も不揃いで、
強烈に蒸し暑くなった室内に響き渡っていた。
『夏祭りの練習?』
恵が目を開けると、霧の様なモヤのかかった自分の部屋を見て驚いた!
『火事だ!』
慌ててベットから転がり落ち、彼女はリビングへ走る!!

部屋で見た霧の様なモヤは、リビングで高温の蒸気となり
夢現で聞いていた太鼓の音は、ドンドコドンドコと大きな音を上げながら
風呂場で鳴り響いている!!
『あぁっっ!!』
恵は慌てて風呂場のドアを開けると、たちまち熱い蒸気が彼女を襲い
太鼓音発生器とかした風呂釜が大きな音を立てながら待ち構えていた。

彼女は肩で息をしながら追い炊きのつまみを元に戻す。
熱く真っ白な湯気が立ちこめる風呂場の中で、額に大粒の汗を流す恵。

彼女の心臓は、さっき迄ドンドコと鳴り響いていた風呂釜の様に大きな音をたてていた。



   ー終ー



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